研究概要 |
神経の発火率は一次統計量であり,刺激や行動との相関がある場合には発火率による情報コードが行われているという.しかしCV2など時間的に局所的な発火の不規則性に関する指標を用いれば,時間相関をもつスパイク列の二次統計量と行動との関連を探る事が可能である.本研究では,Alexa Riehle博士とNicolas Brunel博士の協力の下,猿の前肢運動中の神経活動データを解析した.その結果,発火率の変動と比べてCV2など2次統計量がほぼ時間的に一定であること,発火タイミングの乱雑さの高い神経集団と低い神経集団が存在することがわかった.次なる疑問は,このような神経活動はどのような神経回路網によって作られるか,である.大脳皮質の局所回路の性質はほとんどわかっていないため,我々はまず,疎にランダム結合すると仮定し,そのようなネットワークのパラメータを神経活動から推定することにした.まず実験より単一神経のスパイク列から,発火率と発火タイミングの乱雑さをあらわす指標(ここではCVを用いた)を抽出する.これと漏れあり閾値発火神経モデル(Leaky Integrate-and-Fire Neuron)からなる疎なランダム結合ネットワークから解析的に計算された発火率とCV値の差を少なくするようなモデルを選択した.その結果,ボアソン発火と同程度に乱雑な神経は抑制性のフィードバックが興奮を上回る抑制性優位なネットワークに属し,ややレギュラーな発火を示す神経は,局所回路内のフィードバックが少ないと予測された.
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