研究課題
特別研究員奨励費
本研究は神経変性疾患の治療薬開発を目指して行った。神経変性疾患の発症原因の一つとして、細胞内で起こる小胞体ストレスが起源となることが報告されている。これは、小胞体ストレスが起こらなければ神経変性疾患の発症を防げる可能性を示唆している。本研究では前年度までに、小胞体ストレスを軽減させる小胞体分子シャペロン・BiPを特異的に発現誘導させる化合物(以下、 BIXと呼ぶ)の同定に成功した。前年度の研究成果から、BIXはBiPプロモーター領域中に存在するERSE配列を介してBiPの発現を誘導していることが分かった。そこで、ERSEを介して転写を調節する転写因子ATF6の機能不全細胞株を用いてBiPの誘導効果を検討した。ATF6ノックダウン細胞に対してBIXを処理したところ、BiP mRNAの発現誘導はなかった。一方、ATF6以外の小胞体ストレスセンサーであるPERKあるいはIRE1ノックアウト細胞ではBIX処理によってBiP mRNAの発現が誘導された。これらの結果から、BIXによるBiPの発現誘導はATF6を介することが示唆された。さらに、in vivoでのBIXの作用効果を検討した。BIXをマウスの脳室内に直接投与すると、vehicle投与群に比べて脳組織におけるBiPの発現量が増加した。続いて、中大脳動脈を永久閉塞させた脳虚血モデルマウスを用いてBIXの薬効を解析した。BIXを予め脳室内に投与しておくと、脳虚血処置後の障害領域が有意に減少した。TUNEL染色やCaspase3の免疫組織化学、CHOPのin situ hybridization解析を行ったところ、BIX投与群マウスの脳では脳虚血後の神経細胞死が有意に減少した。これらの結果から、BIXがin vivoにおいても神経細胞保護効果を持つことが分かった。本研究成果はCell Death and Differentiation誌に掲載された。
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Human Molecular Genetics 16
ページ: 2834-2843
Cell Death and Differentiation In press
Molecular and Cellular Biology (In press)