研究概要 |
本研究は,キラル分子配向構造を用いた新規な分子認識材の開発を目的としている。光重合性基を有する自己集合性分子の合成および高分子化(pLGN)について検討しており,pLGNをシリカ微粒子に固定化することでカラム充填剤(Sil-pLGN)を作製した。本年度は作製したSil-pLGNカラムの分子認識能を逆相HPLCにて評価を行ったので,それについて報告する。幾何異性体(o-,m-,p-ターフェニル)を用いたSil-pLGNの評価では,市販の疎水化シリカ(ODS)に比べ,約1.3倍の識別能を示した。pLGNはπ電子部位と相互作用し,また,疎水性分子を選択的に保持するが,幾何異性体において著しい効果を示すには至っていない。平面分子トリフェニレンと非平面分子o-ターフェニルでの評価では,トリフェニレンに対してODSよりも高い識別能を示した。さらに,Sil-pLGNの分子形状識別能を4員環分子(トリフェニレン,クリセン,ベンズアントラセン,ナフタセン)を用いて評価した。最も直線的なナフタセンに対して保持係数は高く,ディスク状のトリフェニレンは低い。同数のπ電子を有する4員環幾何異性体でも同様の傾向を示し,ターフェニル異性体のL/B比(長軸と短軸の比)が大きいほど保持係数は高い。多環芳香族分子(ベンゼン,ナフタレン,アントラセン,ピレン)の場合は,最もL/B比の小さなピレンの保持係数が高いことから,分子の大きさだけではなく,pLGNのポリマー鎖のスリット効果により,平面分子や細長い分子ほどより保持されると考えられる。また,Sil-pLGNのキラル分子やジアステレオマーの識別能については,(-),(+)-ヘキサヘリセンと(1S,2S)-(+)-ジアミノシクロヘキサン誘導体の分離および2-(2,3-アントラセンジカルボキシイミド)シクロヘキサン誘導体の分離に,ODSよりも高い効果が得られた。
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