研究概要 |
水素エネルギー社会の実現を目指して、燃料電池用の水素貯蔵物質の研究が急がれている。数ある貯蔵物質の候補のうち、現在最も有望視されている物質としてM-N-H系物質(M=Li, Na, Mg, Ca)がある。この物質群は、左記アルカリ金属およびアルカリ土類金属のアミドと水素化物の複合体により構成されており、金属原子(M)、窒素原子(N)および水素原子(H)にて系が特徴付けられるために、M-N-H系物質と総称されている。この系は、その水素吸放出反応機構が明らかにされていない。その水素吸放出反応機構を理解するために,触媒作用に関する調査を行った。前年度,高輝度放射光(@SPring8)のXAS(X線吸収分光)法でLi-N-H系水素貯蔵物質中の添加物の化学状態分析を行い,触媒作用を示すTiの電子状態が一意的であるということ(XANES:X線吸収端近傍構造)、その一意性が局所構造には見られないこと(EXAFS:広域X線吸収微細構造)、が知見として得られた。本年度,その一意的な電子状態が塩化チタンアンミン錯体(Ti(NH_3)_5Cl_3)のそれと非常によく一致することが明らかになった。Ti(NH_3)_5Cl_3はアンモニアを容易に吸放出する性質を有する。これは,この反応機構においてアンモニアが仲介的な役割として存在することを裏付ける。この知見は,触媒機構解明に繋がるだけでなく,本系の反応機構解明に向けた大きな成果である。
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