研究課題
特別研究員奨励費
本年度は、社会関係資本の構成要素として重要である社会的ネットワークの実体性の判断、すなわち人々の集まりの「集団らしさ」が知覚されるプロセスを、ネットワークのサイズとネットワーク内の成員の相互作用の観点から、個人のマイクロ・レベルにおいて検討した。集団成員間の相互作用のパターンは、集団サイズによって異なることが知られている。特に、集団サイズが5の場合は成員間の直接的なコミュニケーションが主となるのに対して、サイズが10以上の場合は、成員同士の直接的な相互作用が減少し、集団の分化が起こる。また、集団のサイズが大きくなると、集団内で相互に結合したペアの数は急速に増加する。そこで、こうした相互作用パターンの違いが社会的ネットワークの実体性の知覚に影響を与えるかどうかを検討するために、コンピュータを用いた評定実験を行った。実験では、集団サイズと構造(紐帯数)を統制し、ランダムグラフとして生成された社会的ネットワークの図が刺激として提示され、その実体性が評定された。分析の結果、集団サイズが5の場合、平均紐帯数が小さいと、社会的ネットワークの実体性は低く知覚されていた。一方、集団サイズが10以上の場合、平均紐帯数が小さくても、社会的ネットワークの実体性は高く知覚されていた。これらの違いは、集団サイズによる相互作用パターンの違いと対応しており、社会的ネットワークの「集団らしさ」が、人々の持つ典型的な集団のイメージによって決定されていることを示すと同時に、Web上のコミュニティサイトなどで示される社会的ネットワークの構造に関する情報が、社会関係資本としての社会的ネットワークの機能を高める「集団らしさ」を規定する要因として認識されている可能性を示唆するものである。
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Computers in Human Behavior (in press)
Asian Journal of Social Psychology (in press)