研究概要 |
平成19年度は,主に離散選択モデルにおけるサンプリング効率の改善に取り組んだ.以下では,その具体的な内容について説明する. 離散選択モデルのマルコフ連鎖モンテカルロ法を用いたベイズ推定を行う際,切断正規分布もしくは切断多変量正規分布からの乱数発生が必要となることが多い.そして,これらの分布の切断領域が狭い場合,素朴なマルコフ連鎖モンテカルロ法で得られる標本は自己相関が商くなり,事後分布からの標本を得るためには非常に多くの乱数発生を行う必要がある.このような状況に対して,従来は一般化ギブスサンプリングと呼ばれる手法が用いられてきた.私の平成18年度の研究では,この一般化ギブスサンプリングを離散選択モデルの推定に適用することで,サンプリング効率の改善を行った.一般化ギブスサンプリングを用いた場合,そうでない場合と比べてサンプリング効率を表す指標の改善が見られたため,一定の効果は得られたと考えられる.しかし,一般化ギブスサンプリングは汎用的な方法であるため,その効率化の程度には限界があることも分かった. そのため,より離散選択モデルに特化したサンプリング効率の改善方法の研究を行った.離散選択モデルにおいて,サンプリング効率を低下させている原因の一つは,先に述べた通り,切断多変量正規分布からの乱数発生である.従来,切断多変量正規分布に従う乱数は,条件付き切断正規分布の組として発生されてきたが,本年度の私の研究では,同時分布から乱数発生を行う方法を提案した.今回提案した方法の特徴としては以下の2点があげられる. (1)同時分布からの乱数発生である. (2)離散選択モデルだけでなく,他のマルコフ連鎖モンテカルロ法にも用いることができる. この方法を数値例及び実証例を用いて検証した結果,従来の方法より優れていること及び一般化ギブスサンプリングよりも効率化の程度が大きい場合があることが分かった.
|