ロナルド・レーガン大統領は、アメリカ政治の流れをリベラルから保守へと切り替えたと言われている。従来、レーガン政権が社会保障政策、租税政策、外交政策において、それまでの政権とは政策目標を変更したことについては、様々に論じられてきた。政策の内容が革新されたと同時に、政策をどのように作り上げるかという政策過程もまた、レーガン政権期には変化していたのである。 私の研究の目的は、レーガン政権期の政策過程に生じた変化を突き止めることであり、そのケースとして1986年税制改革法を調べることから、本研究にとりかかり、研究1年目と2年目に詳しく調べることができた。その中で、大統領が立法過程において、奇妙な行動をしていることを発見した。 3年目となる本年は、レーガン政権期より見られる、立法過程における大統領の新たな議会戦略についての研究を行った。従来、大統領は議会を通過した法案にたいして、署名するか、拒否権を行使するかという受け身のアクターとして理解されてきた。しかし、レーガン大統領は、議会の提出した法案の細部を、議会との交渉無しに変更しようという試みを始めていた。この行動を大統領署名見解(Signing Statement)の付与と呼ぶこととし、大統領がどのような法案に対して、内容変更を試みるのかを整理し、どのような条件において大統領はそのような権限を行使するのかを統計的手法によって明らかにした。本研究によって、アメリカの三権分立の、新たな側面を照らし出すことができた。
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