研究概要 |
本年度は,視聴覚を用いた人間同士のリズム生成の特徴を行動実験によってさらに詳細に観察し,また,それを支える内的メカニズムについてのモデル化を進めた.モデル化に際して,これまで心理学で提案されてきた環境の時間情報に追従するためにタイミング修正メカニズムに加えて,自己の基準とする内的なテンポとそれに基づくタイミング修正機構を新たに提案した,その結果,人間同士の協調的なリズム生成には,他者へと追従するメカニズムに加えて,自己のテンポを維持し,時には,他者に合わせないようにするメカニズムが必要であることが明らかとなった.また,二者間の協調的なリズム生成には,自己と他者とで作りだす時間間隔の時系列に,複数のパターンが観察されるが,それらは,お互いの基準とするテンポが異なるために生じている可能性を示した. また,モデルの妥当性とヒューマン・インタフェースへの応用可能性を検討するために,モデルを実装したシステムと人間の間のリズム生成を観察した.その結果,人間同士のリズム生成と同様に,複数の協調パターンが観察された.また,時系列解析の結果も,人間同士のリズム生成と同様の特徴がみられた. 以上の結果は,人間と人工物の間で,人間同士のような時間的協調を達成するためには,人工物が人間に追従するだけでなく,人工物も基準とするテンポを内的に保持し,時には合えて人間に合わせないようにすることが重要であることを示している.
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