研究概要 |
今年度は,トラップサイトを複数有するアトムチップの加工とそれを用いたレーザー冷却原子のトラップ実証を目標として進めた.複数のトラップサイトを持つことで,隣同士の原子で量子エンタングルメントの可能性がある.この実証のためにトラップ電極間隔10μm,トラップサイト数を19とした. 実験手順は下記の通りである. (1)チップ上空でレーザー冷却,(2)レーザーピンセットでチップ上空1mmに輸送,(3)磁場チップを用いてシュタルク電極内へ輸送,(4)シュタルクトラップ,(5)チップ裏面から高NAで原子を観察する.この手順を満たすために要求機能を抽出した.FR1:シュタルク電極の裏を光学的にフリーにする,FR2:チップ上空20mmの位置にレーザー冷却可能なチップサイズであること,FR3:シュタルク電極に安定にプローブ光を照射できること,FR4:電極加工精度の4つである.この要求機能を満たすための高精度に加工するために,SOI(Silicon-on-insulator)を基板としたMEMSプロセスを用いた.裏面エッチングにより電極下をフリーにする(FR1),チップ幅は18mm(FR2),シュタルク電極の横に光ファイバを設置し先端から遷移波長のレーザーを照射する(FR3),EBリソグラフィとDeep-RIEを用いる(FR4).FR4については,FEMによる電場計算と粒子シミュレーションにより,加工精度2%未満にする必要があることが分かった. 以上の設計方法により実際に加工し,磁場チップと一緒に組み立て,真空チェックを行った.光ファイバからレーザーを照射し,電極の端で散乱したノイズをEB-CCDで検討した.
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