研究概要 |
薬物の評価にはラットやマウスなどの小動物が汎用されるが,特に薬物動態においてヒトとの種差が大きく,ヒトのモデルになるとは言い難い。そこで我々は,ヒトに近いアカゲザルを用いて本研究に着手した。 アカゲザルにオキシブチニン(過活動膀胱治療薬)を0.1および0.3mg/kg経口投与したところ,オキシブチニンおよび活性代謝物の最高血漿中濃度が臨床におけるヒトの値と類似した。これより、アカゲザルの薬物動態はヒトの場合と類似することが確認され,アカゲザルが本研究においてヒトの有用なモデルになることが示唆された。さらにアカゲザルにオキシブチニン(0.1 or 0.3 mg/kg)を経口投与後にムスカリン性受容体を標識する(+)N-[^<11>C]Methyl-3-piperidyl benzilate([^<11>C](+)3-MPB)を静脈内投与し,覚醒下にてPETスキャンを行い,得られた画像をLogan plotで解析し受容体占有率を算出した。その結果、オキシブチニン0.1mg/kgおよび0.3mg/kg経口投与によるサル脳内における受容体占有率は,それぞれ約40%,60%であった。オキシブチニンは末梢臓器である膀胱を標的臓器としており,中枢領域における作用機序を初めて明らかにした知見である。認知機能の低下した患者には,現在アセチルコリンエステラーゼ阻害剤が投与されることが多いが,抗コリン薬に起因すると思われている認知機能の低下にも投与されている可能性が指摘されており,本研究はメカニズムの観点からこのような誤った薬の使用を差し控えること重要性を支持する報告であり,臨床上大変重要な知見と考えられる。 現在、ムスカリン性受容体に結合活性があるといわれているメディカルハーブのノコギリヤシを用いてこれらの脳や唾液腺への結合を検討している。
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