研究概要 |
本研究は,地球物理現象を幾何学的に表現することを目的とする.個々の複雑な地球上の非線形現象を幾何学の立場から統一的に見直す.非線形的な地球物理現象を統一的に表現するために,地球磁場の逆転などに見られるカオス現象や地震波動伝播などに見られるソリトン波を幾何学的な観点から研究した. 地球上では,磁場の逆転をモデル化した力武系などに見出される非線形力学系のカオス的挙動は,抽象的な相空間内の軌道として表現される.そこで,相空間を幾何学的空間とみなし,一般化された道の幾何学(KCC理論)を用いて非線形力学系の研究を行った.その結果,相空間内における捩率テンソルにより.力学系の非周期的な挙動が表わされることを示し,曲率テンソルが系の安定性に関係してくることを示した.これらの幾何学量により,非線形力学系が統一して理解できることを明らかにした. 地震波や津波などの非線形波動の中には,ソリトンのように伝播していく波が存在することが指摘されている.これまでソリトンの研究に対しては,個別のソリトン系ごとに異なる運動方程式を用いて解析が行われてきている.これに対し,フィンスラー幾何学を一般化した河口空間論を用いてソリトン系の幾何学的研究を行った.その結果,ソリトン方程式のスケール不変性に注目することにより,河口空間上で定義される共形不変なラグランジアンから各種のソリトン方程式が導かれることを明らかにし,ソリトン系が統一的に理解できることを示した.以上の研究成果は国際学術雑誌(ISI登録誌)に報告されている.また,国際・国内学会における発表によって様々な議論を行うことができた.
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