研究概要 |
本年度はSU(2)ゲージ対称性を持つカイラルp波超伝導体Sr2RuO4に対して、T=0.1K以下の状況下においてc軸に平行に磁場を印加し、H>Hc2からH=0へ磁場クエンチ測定を行った。その結果は、量子相転移領域においてべき関数になることを明らかにした。SU(2)超伝導体はU(1)超伝導体では形成されないテクスチャー構造を持つトポロジカル欠陥が期待され初期宇宙の相転移の臨界指数を決定できる可能性がある。この結果を25th international conference on Low Temperature Physicsにて発表した。また一方で、ミリスケールのSr2RuO4はカイラルドメイン構造を持つと考えられるのでシングルドメインサイズの特性を知ることが重要となる。したがって我々はマイクロスケールのSr2RuO4を作成・分析を行い、このサンプルに対して電子ビームリソグラフィを用いて金電極を取り付けた。極低温(〜0.1K)にて電流-電圧特性を測定した。その結果は、バイアス電流に対して偶関数の新奇な電圧の発生を発見した(すなわちV(+I)=V(-I))。これは、パリティが破れている電流-電圧特性であることを意味する。この測定結果を論文にまとめSolid State Communicationsに投稿中であり、より発展したデータを掲載した論文を投稿準備中である。またサンプル電極作製に関する技術的な内容をJournal of Vacuum Science and Technology Bに投稿中である。2008年8月には、ウプサラ大学にてProf.A.J.Niemi,Prof.E.Babaevと、またヘルシンキ工科大学にてProf.G.E.Volovik,Prof.P.Hakonenとそれぞれ実験結果について議論を行った。
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