研究課題/領域番号 |
07041030
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 園田学園女子大学 |
研究代表者 |
河合 利光 園田学園女子大学, 国際文化学部, 教授 (90161265)
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研究分担者 |
小池 誠 桃山学院大学, 文学部, 助教授 (00221953)
石井 眞夫 三重大学, 人文学部, 教授 (20136576)
大谷 裕文 西南学院大学, 文学部, 教授 (20112279)
中山 和芳 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (50044730)
小川 正恭 武蔵大学, 人文学部, 教授 (90086926)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
13,000千円 (直接経費: 13,000千円)
1996年度: 6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
1995年度: 6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
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キーワード | オセアニア / 首長制 / 持続 / 変容 / 文化的認識 / リーダーシップ / 理解体系 / 生命観 / comparative study |
研究概要 |
本研究は、メラネシア、ポリネシアといった地理的区分の枠を捨象し、オセアニア南部諸島の調査と比較研究を通して、この地域の首長制の持続と変容に関する理解を推進することを目的として計画された。その際、世界観、隠喩表現、生命観、身体観、空間認識など、従来論じられることの少なかった文化的側面からの理解を共通の視点としている。 平成7年度と8年度の2回にわたる調査は、予定どおり順調に実施された。その調査研究の成果は、以下のように要約できる。 1.基礎資料の収集 各調査者は、それぞれの担当地域において野外調査を行い、首長制の持続と変容の研究のために、親族関係、首長権の継承システム、村落構成のような社会的地位と役割に関するデータの他、世界観、生命観、身体観等の文化的側面に関するデータを収集した。各調査地域における基礎資料に関しては、すでにかなりの蓄積がある。 2.首長制の持続と変容に関する問題 当初の予想どおり、各地域の伝統的システムと近代的政治制度の共存を、持続と変容の視点から研究することは有益である。主な成果を挙げれば、以下の通りである。 1)クック諸島-伝統的首長位継承をめぐる訴訟事例と土地相続の価値観の持続と変容 2)トンガ諸島-トンガ・ダンスにみられる三元的身体カテゴリー分類と三元的政治構造の対応関係 3)西サモア-近代化と選挙制度改変による社会状況の変化における伝統的首長制の持続と変容過程の分析 4)フィジ-西部-近代的政治制度の整備された村落社会における首長の霊的権威の持続性の問題 5)フィジ-中部諸島-篭(容器)や人体の隠喩で理解されていた伝統的首長制の認識枠組の持続と変容の問題 6)フィジ-東部諸島-人類学者の文字記録を根拠に固定化されてきた「伝統的」首長の系譜を揺るがすような新たな系譜記録の発見と混乱の問題。伝統的首長制の意義をそこに考察できる。 以上は一部にすぎないが、一見したところ大きく変容した政治システムが、伝統文化の枠組の中で再構築されている各調査地域の実態が、かなりの程度明確になった。 3.首長制の文化認識論的研究 調査期間の制約もあり、この側面に関してはまだ充分とは言えないが、空間構成、方位観、身体観、生命観等に関する興味深い資料が収集されつつある。例えば、トンガでは伝統的ダンスの世界観に観察される身体イメージが現代の政治構造の基礎にもあり、またフィジ-中部諸島では伝統的首長制を支えていた篭や身体の隠喩的理解が、近代的政治制度の基本的認識枠組ともなっている等の、興味深い事実が明らかになった。 2度にわたる調査を通して、特に基礎資料収集と各調査地域の実態を明らかにする面で大きな成果があった。この成果は、現地への成果還元の意味もあり、日本オセアニア交流協会の資金的助成を得て、平成9年度内に英文報告書として刊行される予定である。 また、5月に開催される日本民族学会では、シンポジュウム形式のグループ発表を行い、メンバーの6人全員が「首長制の持続と変容」に関する報告を行う予定である。 これらは中間発表として行うものであり、都市化された地域を含む持続と変容過程の研究、オセアニア南部地域全体を視野に収めた比較研究、首長制の文化認識論的側面の研究の充実など、首長制の持続と変容過程に関する多くの課題が、今後の問題として残されている。
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