研究課題/領域番号 |
07041044
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村山 良之 東北大学, 大学院・理学研究科, 講師 (10210072)
|
研究分担者 |
松本 秀明 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (30173909)
平野 信一 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10228801)
|
研究期間 (年度) |
1995 – 1996
|
研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
|
配分額 *注記 |
4,200千円 (直接経費: 4,200千円)
1996年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1995年度: 2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
|
キーワード | 1990年ルソン地震 / 地震災害 / 土地条件 / 液状化 / 活断層 / 移転 / 援助 |
研究概要 |
1.現地の関係機関での資料収集および聞き取り調査により、La Union州南部の沿岸部とNueva Ecija州北部の山間部を中心とする地域における被害を、町(municipality)単位または町(barangay)単位で把握し、併せて復旧過程の概要を把握した。前者には大規模な液状化に伴う地盤の沈下によって、後者には地震とその後の降雨による斜面崩壊と谷底部の埋積によって、全部または一部が移転を余儀なくされた集落が認められ、これを特定した。 2.La Union州南部における沿岸部の海岸低地については、空中写真判読および現地調査によって、詳細な地形分類を行った。その結果、沿岸部での被害分布が、地形とかなり対応することが確認された。しかし一部では、地形からは必ずしも予測されない場所で、きわめて大規模な液状化が発生したことも認められた。 3.Nueva Ecija州北部の山間部では、現地調査や先行研究をもとに、活断層の位置、および地震後の台風時を含む斜面崩壊の発生場所特定を行なった。これと被害データを検討した結果、集落の地形的位置が、被害の種類や軽重に強く影響したことが明らかなった。 4.Nueva Ecija州北部の山間部のうち、Talavara川の谷底部にある国道沿いの中心集落がほぼ全面的に埋積されたPiut村では、村としての組織をそのままに、隣村の国道沿いの空地に集団をなして移転した。しかし移転先の土地の使用権については現在係争中である。谷底部の水田耕作は放棄せざるを得ず、彼らの多くは、現在はSAWALI(竹の一種を割って編んだ壁材)作り、土木作業、出稼ぎなどを行い、不安定ながら多様な方法で生計を維持している。そして村内の他集落からの転移者や自然増加も含めて人口は増加している。 5.一方被災者のために、政府機関と赤十字によって、国道から州道を約5km入ったところに新しい集落(Red Cross Village)が建設された。Piut村の人々も入居を勧められたが、生計を立てる方法がないと断った。他にも一部が同じ理由で元の集落に戻るなどして入れ替わり、その後、農地の開発や他への就労によって定住者が多くなり、インフラの整備も進んでいる。しかし、そのあり方は当初の目的からは少しずれたとみることもできよう。 La Union州南部の海岸部で転移を余儀なくされた集落のうち、Alaska村とNarvacan村では、中心部分が液状化によって海中に没し、わずかに残った土地に新たに集落が形成されたが、二つの村とも約半数の家族は村外に移動して、近くの村にいくつかの新たな集落を作っている。転移したうちのほとんどは、移転先の村で選挙人登録を行った。Dulao村とRaois村では、村内のいくつかの集落で沈下が生じたが、赤十字や政府機関による援助を受けるなどして、それぞれ村内に新たな集落を作り、村外に移動した者は少ない。彼らの多くは、元々漁業で生計を維持しており、転移した者も含めて地震後も漁業を続けている。ただし養魚場の復旧は遅れている。 一方、Alaska村やNarvacan村をはじめとする被災者のために、政府機関による新しい集落(Relocation Site)がそれぞれの町内に建設された。しかしそれぞれの新集落において、Alaska村とNarvacan村からの移転者数は、現在のところ予定数を大幅に下回っている。被災者たちは、そこに移転しない理由として、その場所での漁業のしにくさ、交通の便、高波に対する危険性などをあげ、土地の選定への不満を持っている。 二つの州のいくつかの事例から、共通点を指摘できる。第一に、政府機関などの主導による新しい集落の建設は、もっともひどく被災した者が必ずしもそこに移転していないことから、災害援助としては成功とはいえない部分がある。その理由のうち共通するものとして、土地と家は保証されても、生計を立てる手段がないか、または(とともに)交通の便が悪いことがあげられる。第二に、これとは反対に、被災者自らが転移先として選定した場所は、当然ながら、生計または(とともに)交通の条件が考慮された場所である。ただしそれらのなかには、土地の使用権をめぐって係争中の場所や立ち退きを迫られている場所もある。しかし、概してこのやり方の方が重要な問題を抱えつつも成功しているようで、被災者自らが場所選択に関わったかが鍵であると考えられる。
|