研究課題/領域番号 |
07041046
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
岩崎 美紀子 筑波大学, 社会科学系, 助教授 (30183015)
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研究分担者 |
クラインシュミット ハラ (ハラルド クラインシュミ) 筑波大学, 歴史人類学系, 助教授 (60225240)
山田 直志 筑波大学, 社会工学系, 助教授 (10210460)
河野 真理子 筑波大学, 社会科学系, 講師 (90234096)
岡本 美穂 (大島 美穂) 筑波大学, 社会科学系, 講師 (20203771)
秋野 豊 筑波大学, 社会科学系, 助教授 (70142677)
KLEINSCHMIDT Harald Institute of History and Anthropology, University of Tsukuba
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
1996年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1995年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | 国籍 / 条約 / 国境 / 民族 / 少数派 / 地域協力 / ナショナリズム / 重層アイデンティティ / 国民 / 国家 / 移民 / 保護 / 入国管理 / 地域統合 |
研究概要 |
人・モノ・資金が国境を越えて動くようになると、従来の国家の役割や機能に基づいて解決できない問題が出現してきた。本研究は、ナショナル・アイデンティフィケーションの角度からのアプローチを行い、「国民国家」は虚構であるか否かの検証を試みた。 国家分断にともない生ずるナショナル・アイデンティフィケーションの問題は、体制移行が進む旧社会主義圏における新興独立国家を対象に研究された。新国境線をめぐる係争、国境確定過程、国境管理の主体などの調査を行うと同時に、新憲法のなかで、ナショナル・アイデンティティをいかに規定していったかを検討した。その結果、国家と民族に関する旧来のパターンがみられるものの、ポスト社会主義における国民国家のあり方やジレンマという新しい側面が観察された。 地域統合の進展にともない浮上したナショナル・アイデンティフィケーションの問題は、北欧を対象に研究された。1993年にスェ-デンとフィンランドがEU加盟を果たし、以前からの加盟国であるデンマークを含めた3カ国と、非加盟国(ノルウェー、アイスランド)に北欧地域は分裂した。研究は、加盟が議論されながら国民投票によって非加盟を決めたノルウェーにとくに焦点をあてた。ノルウェーのナショナリズムの強さ、地域統合ではなく地域協力に積極的である理由が分析され、バレンツ地域協力や環バルト海協力への傾斜は、現在のナショナル・アイデンティフィケーションの延命策ととらえられることがわかった。 既存の国家のなかでのナショナル・アイデンティフィケーションの問題としては、カナダ、ドイツ、マレーシアを研究対象とした。 カナダのフランス系は、少数派というより「建国の民族」としての自負があり、言語も公用語化され、州政府も掌握しており、「恵まれた」状況にあるが、それでも分離・独立への試みは止まらない。しかし新国家についての具体的デザインは示されておらず、軍隊、通貨、国籍といった基本的な点はつめられていない。 マレーシアにおいては、建国前から中国系とインド系が非マレー系として冷遇されてきた。市民権、統治機構への登用など、マレー系こそが「土地の子」であるという政策である。シンガポールの分離・独立後も、マレーシアに残った中国系は、マレーシア国籍を保持するが、国家は明示的なマレー優遇政策をとってきた。それでも連立・与党により政権の共有をするなど、マレー系と非マレー系は、人種の違いをあえて越えようとせずに、多元性を前提に国家を維持する選択をしている。 ドイツは、非ドイツ民族であれば長くドイツの居住しても国籍がとりにくい一方で、国境を越えてもドイツ民族であれば国籍が付与される属人主義をとっている。ドイツ国内での非ドイツ系に対するこのような扱いは、民族の階層性を生むと同時に、文化的同質性こそが国家の前提であるとの考えを強化することになり、「ドイツ問題」の遠因であることがわかった。 ナショナル・アイデンティフィケーションは、個人と国家の間だけでなく、法人と国家の間でも重要な問題であることを指摘する研究も行った。従来国家は、国籍を絆として自国法人の保護・管理を行ってきたが、これは本国と法人の間に実質的関係があることを前提としたものであった。しかし企業活動の国際化の結果、会社の設立地がその実質的な活動の場所と必ずしも一致しなくなり、法人の国籍決定の問題が浮上してきた。国家は、経済活動の国際化に対して、GATTやWTO、世界銀行、OECDなど多数国間条約による国際経済体制の確立や、二国間条約による私人の経済活動の保護・促進を試みるようになり、国内法だけでなく、国際条約によっても対応するようになってきた。
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