研究課題/領域番号 |
07041062
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
今永 正明 静岡大学, 農学部, 教授 (50007085)
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研究分担者 |
TELLO J.R. 国立ペルーアマゾニア大学, 農学部, 教授
逢坂 興宏 静岡大学, 農学部, 助手 (20252166)
養父 志乃夫 和歌山大学, システム工学部, 助教授 (00200569)
松下 幸司 京都大学, 農学部, 助教授 (90199787)
吉田 茂二郎 九州大学, 農学部, 助教授 (80128462)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
10,700千円 (直接経費: 10,700千円)
1996年度: 4,400千円 (直接経費: 4,400千円)
1995年度: 6,300千円 (直接経費: 6,300千円)
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キーワード | イキトス市 / クスコ市 / リマ市 / アンケート調査 / 森林意識 / ペル-人 / ブラジル人 / 森林景観 / 森林環境 / マナウス市 / イキトス / リマ / クスコ / アンケート / 樹種 |
研究概要 |
1.調査の概要 1995年11月にイキトス市、リマ市、クスコ市において高校生、大学生、一般市民を対象に森林観に関するアンケート調査を実施した。調査は高校及び大学においては授業中に調査趣旨を説明した後にアンケート調査を行い、その場で調査用紙を回収した。また、一般市民については、イキトス市とクスコ市においては大学生が面接調査により実施し、リマ市においては民間企業の協力を得て実施した。その結果、3207人より回答を得た。回答者の男女比は、男性が52.0%とやや多かった。回答者の年齢層は10代が50.5%、20代が35.9%と、若い層の比率が高いものとなった。 1996年8月には、イキトス市、リマ市において市民を対象に追加のアンケート調査を行った。得られた回答数はそれぞれ213、382である。また同年ブラジルのマナウス市においても市民を対象にアンケート調査を実施した。得られた回答数は453である。 森林環境については樹木を中心にイキトス市、リマ市、クスコ市で調査し、主要樹木については写真におさめた。 森林・林業に関する諸資料の収集はペル-国内だけでなく、アメリカ、カリフォルニアで英文のものを主に収集した。ペル-農林省においては、森林の基本計画に関する最新の資料を収集した。その他のペル-の諸図面を入手した。 2.調査結果 主として1995年に得たデータにもとづき、ペル-人の森林意識の概要を示すと以下のようになる。 (1)日常生活の中の森林 ペル-人の好む旅行先は「見晴らしのよい山」と「静かな湖」で、ともに3割前後である。「深い森」と「広い砂浜」がこれに次ぐ旅行先である。ところで、ブラジルの場合は、「広い砂浜」がもっとも高かった。同じラテンアメリカでも好みに違いがあることがわかった。また、「深い森」を好む人の比率は、一般市民がもっとも高く、大学生、高校生とつづく。森の中の散歩については、75%の人が好きと答えている。この比率は、ブラジル、日本とあまり変わらない。 (2)樹木や森林に対する神秘性 大きな古い木を見たり、深い森に入ったときに神秘的な気持ちになる人の比率は約9割である。なお、大きな古い木を見たときに神秘性を感ずる人の比率をみると、イキトス市とクスコ市では9割を越え、リマ市でも8割を越える。全体的にみて、この比率は高校生でやや低い。特に、リマ市の高校生の場合は、大きな古い木に神秘性を感じる比率が7割となっている。一部に違いはあるようだが、ブラジル国民と比較してやや低いものの、全体的に樹木や森林に対して神秘性を感じる国民が多いことがわかった。 (3)森林経営 森林を美しく維持するためには人手が必要かどうかという質問に対しては、6、7割の人が、人手を加える必要があると答えている。多くの場合、森林を適切に管理するためには、森林を単に放置すればよいというものではない。おおむね3分の2の人が、森林管理の重要性を認識している点が興味深い。なお、人口的に多数を占める都市部住民と、山岳部及び内陸部住民とでは、森林及び森林経営に対する考え方が異なっている可能性がある。 (4)森林景観 シラカンバ天然林よりスギ・ヒバ混交の人工林が、ブナ天然林よりはスギ人工林が好まれている。スギ人工林の中ではより人手がかかる京都北山の人工林が好まれている。また、アカマツ天然林については、より下層植生の少ない単層林のほうが好まれている。全体に天然林より人工林に、また、より人手のかかっているすっきりした林相が好まれる傾向にある。なお、これらの結果は、基本的には日本とブラジルでも同様である。 つぎに以上の結果について若干の考察を行ってみよう。 まず同じく発展途上国であり隣国に位置するブラジルとの比較では、「日常生活の中の森林」で好む旅行先として、ブラジル人が「広い砂浜」を多くあげるのに対して、ペル-人は「見晴らしのよい山」を多くあげる傾向にある。この理由は、ぺル-では山岳地に住む人が多く、海岸レジャー地にはプライベート地も多く、また海岸でのレジャーもブラジルほど発達してないことによると思われる。 先進国日本との比較で興味深い点は、森林を美しく維持するためには人手が必要と答えている人がペル-で多い点である。特に若者もそうした考えを多くの人が持っているが、日本の若者ではそうした考えを持つ人は少ない。これは最近の日本における自然保護思想の影響と考えられるが、森林を美しく維持するためには人手が必要であるので、ペル-人の考えのほうがより健全であるといえよう。
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