トルコをめぐる国際ツーリズムと都市発展との相互作用に関する社会地理学的研究

• 研究課題/領域番号: 07041063
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 学術調査
• 研究機関: 東京都立大学
• 研究代表者: 中林 一樹 東京都立大学, 都市研究所, 教授 (80094275)
• 研究分担者: 長尾 謙吉 日本学術振興会特別研究員, 大阪市立大, PD. ; CLAVAL Paul パリ第4大学, 教授 ; HEINRITZ Gun ミュンヘン工科大学, 地理学研究所, 教授 ; KELES Rusen アンカラ大学, 政治学部, 教授 ; 若林 芳樹 東京都立大学, 理学部, 助教授 (70191723) ; 水内 俊雄 大阪市立大学, 文学部, 助教授 (60181880) ; 山本 健兒 (山本 健児) 法政大学, 経済学部, 教授 (50136355) ; 礒部 啓三 (磯部 啓三 / 磯部 敬三) 成蹊大学, 経済学部, 教授 (90159814) ; 寺阪 昭信 (寺坂 昭信) 流通経済大学, 経済学部, 教授 (30008643) ; HEIURITZ Gun ミュンヘン工科大学, 地理学研究所, 教授 ; RUSRN Keles アンカラ大学, 政治学部, 教授
• 研究期間 (年度): 1995 – 1996
• 研究課題ステータス: 完了 (1996年度)
• 配分額: 16,400千円 (直接経費: 16,400千円); 1996年度: 7,400千円 (直接経費: 7,400千円); 1995年度: 9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
• キーワード: 国際ツーリズム / 観光産業 / 都市開発 / 観光 / 都市成長 / トルコ / 地中海 / アンタリヤ / アンタリア / 観光開発 / 観光行動 / パリ / ドイツ

研究概要

トルコへの外国からの訪問者は、1990年で539万人に急増し、その40%をドイツ、イギリス、フランスで占め、87%が観光目的である。しかも、1992年時点で外国人ツ-リストが世界で17番目に多い国であるにも拘らず、その増加率では、世界で最も高いのである。彼らの到着先ではイスタンブル、エディルネ、アンタリヤ、イズミル、ム-ラの西部・沿岸地域で約80%を占めているが、これらは、近年人口増加が顕著で、成長が著しく変容が激しい都市を含む地域である。このように、トルコへの外国人観光客の急増は、観光産業としての急成長とともに、トルコの都市開発と地域経済にも多大な影響を与えている。
本研究では、1980年代以降に顕在化した国際ツーリズムを基調とする内外の人口流動の状況と、それがトルコの都市発達と地域経済に与えた影響を明らかにすることを主目的に、その地中海地域における中心都市であるアンタリヤを主対象として調査した。具体的には(1)トルコの近年の観光政策の変遷を明らかにし、(2)外国からの観光客の意識と行動をアンケート調査で分析したうえで、(3)トルコ-ヨーロッパ間のツーリズムの仕組みと実態を、ドイツとフランスからのパッケージツアーを通して把握した。そして、(4)都市発展・都市開発と地域経済へのツーリズムへの影響をアンタリヤ市とその周辺地域で明らかにした。
トルコ政府は、1957年には報道・情報・ツーリズム省を設立したが、1970年代に入ってから国際ツーリズムに向けての計画を策定して世界銀行からの融資を目指し、アンタリヤ県でのインフラ整備を開始したのは1970年代中期からであった。しかし、急激なインフレの進行は、インフラ整備も充分には行き届かず、さらに、ホテルの整備は遅れた。1980年に文化・ツーリズム省を設立し、1983年以降の新政権は、エ-ゲ海から地中海にかけての諸地域で59万床の宿泊施設開発を計画し、内外の民間資本の観光開発への参加を積極的に展開した。ようやく1980年代半ばから宿泊施設の整備は急進展し、ベッド数の急増をもたらし、その結果として1994年にはこの地域には16万を超えるベット数が達成され、さらに増加傾向にある。
それにともなってトルコへの観光客も急増し、トルコの国際ツーリズム収入は、1990年代になると、国外のトルコ労働者からの送金額を上回り、輸出総額の20%を超えるようになった。いまや、トルコの国際ツーリズムは、国家経済上も重大な意味を持つに至った。
外国からの観光客の、観光地としてのトルコに対する評価は、決して低くはない。さらに、豊かな自然環境と相対的な価格の安さは、その大きな魅力となっている。こうした観光客は、各国での旅行業から送り出されてきたが、今日では、トルコへのパッケージツアーの過半はトルコ出身者が経営するオペレータによって取り扱われる状況となり、トルコを中心に諸外国をネットする国際ツーリズム産業の成長期にいたり、系列的な企業組織化の動きも著しい。
こうした、観光産業の成長とインフラ整備の状況がトルコ国内における観光地間の競争に大きな影響力を持つようになってきている。トルコの国際ツーリズムの急成長と期を一にして、エ-ゲ海・地中海地域の都市発展は著しいものがあるが、そこには、この莫大な観光投資とインフレ経済を背景にして、都市計画の枠を超えた都市成長が進行している。さらに、リゾート地での観光開発と既存都市を中心とする都市発展の進行は、環境への負荷を大きくし、インフラ整備における下水やゴミなどの処理系の整備の相対的な遅れとも重なって、最大の観光資源の一つでもある自然環境の保全問題も、現実的には大きな課題となりつつある。

研究成果

• [文献書誌] 水内俊雄・中林一樹: "トルコ・アンタリヤの都市開発の現状とその矛盾" 日本地理学会予稿集(1997春). 51(印刷中). (1997)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 山本健兒: "トルコへの国際ツーリズムの発展における政府とツアー・オペレータの役割" 日本地理学会予稿集(1997春). 51(印刷中). (1997)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 礒部啓三: "トルコへの国際ツーリズムの発展とフランス" 日本地理学会予稿集(1997春). 51(印刷中). (1997)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 水内俊雄: "国際ツーリズム下におけるトルコ・アンタリヤ市の都市発展と都市政策" 人文研究(大阪市立大・文). 48. 35-65 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 寺阪昭信: "アンタリヤにおける街並保存とツーリズム" 日本地理学会予稿集(1997春). 51(印刷中). (1997)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 寺阪昭信: "日本人のトルコへのイメージ" 流通経済大学論集. 31・3. 93-99 (1997)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 中林一樹・寺阪昭信・山本健兒・水内俊雄・礒部啓三・若林芳樹・長尾謙吉: "トルコをめぐる国際ツーリズムの進展と都市成長(仮題)" 自費出版の予定(予定), 100 (1997)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 中林一樹・寺阪昭信・山本健兒・礒部啓三・水内俊雄・若林芳樹・長尾謙吉: "Japanese Invent Turkey Tour,Perception and Media" 自費出版, 41 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Toshio MIZUUCHI,Itsuki NAKABAYASHI: "Dynamic Urban Development and its conflict within Metropolitan Antalya, Turkey (in Japanese)" Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers.51 (in printing). (1997)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Kenji YAMAMOTO: "The Role of Government and Tour Operators in the Development of International Tourism in Turkey" Proceedings of the General Meeting of AJG. 51 (in printing). (1997)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Keizo ISOBE: "France and the Development of International Tourism in Turkey" Proceedings of the General Meeting of AJG.51 (in printing). (1997)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Toshio MIZUUCHI: "Urbanization and Urban Policy under the Development of International Tourism, -in case of Antalya, Turkey-" Jimbun Kenkyu ; Studies in the Humanities, Bulliten of the Fuculty of Litterature, Osaka City University.48. 35-65 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Akinobu TERASAKA: "Historical Urban Landscape Conservation and Tourism Development in Antalya, Turkey." Proceedings of the General Meeting of AJG. 51 (in printing). (1997)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Akinobu TERASAKA: "Japanese Image to Turkey" Ryutsukeizai Daigaku Ronshu ; The Journal of Ryutsukeizai University.31-3. 93-99 (1997)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Itsuki NAKABAYASHI,Akinobu TERASAKA,Kenji YAMAMOTO,Keizo ISOBE,Yoshiki WAKABAYASHI,Toshio MIZUUCHI,Kenkichi NAGAO: Self-publication(as planned). Progress of International Tourism and Urban Growths in Turkey, about 100 pages. (1997)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Itsuki NAKABAYASHI,Akinobu TERASAKA,Kenji YAMAMOTO,Keizo ISOBE,Yoshiki WAKABAYASHI,Toshio MIZUUCHI and Kenkichi NAGAO: Japanese Invent Turkey -Tuor, Perception and Media-, 41 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] 水内俊雄・中林一樹: "トルコ・アンタリヤの都市開発の現状とその矛盾" 日本地理学会予稿集(1997春). 51(印刷中). 未 (1997)
• [文献書誌] 山本 健兒: "トルコへの国際ツーリズムの発展における政府とツアー・オペレータの役割" 日本地理学会予稿集(1997春). 51(印刷中). 未 (1997)
• [文献書誌] 磯部 敬三: "トルコへの国際ツーリズムの発展とフランス" 日本地理学会予稿集(1997春). 51(印刷中). 未 (1997)
• [文献書誌] 水内 俊雄: "国際ツーリズム下におけるトルコ・アンタリヤ市の都市発展と都市政策" 人文研究(大阪市立大・文). 48. 35-65 (1996)
• [文献書誌] 寺阪 昭信: "アンタリヤにおける街並保存とツーリズム" 日本地理学会予稿集(1997春). 51(印刷中). 未 (1997)
• [文献書誌] 寺阪 昭信: "日本人のトルコへのイメージ" 流通経済大学論集. 31・3. 93-99 (1997)
• [文献書誌] 中林一樹・寺阪昭信・山本健兒・磯部敬三・若林芳樹・長尾謙吉・水内俊雄: "トルコをめぐる国際ツーリズムの進展と都市成長(仮題)" 自費出版の予定, 100 (1997)
• [文献書誌] 中林一樹・寺阪昭信・山本健兒・磯部敬三・水内俊雄・若林芳樹・長尾謙吉: "Japanese Invent Turkey Tour, Perception and Media" 自費出版, 41 (1996)
• [文献書誌] 寺坂昭信・中林一樹: "トルコをめぐる国際ツーリズムの展開" 日本地理学会予稿集(1996春). 49(印刷中). (1996)
• [文献書誌] 水内俊雄・長尾謙吉: "トルコ・アンタリヤの観光開発と都市発展" 日本地理学会予稿集(1996春). 49(印刷中). (1996)
• [文献書誌] 若林芳樹・磯部啓三・山本健児・長尾謙吉: "トルコにおける外国人観光客の意識と行動-地中海地方を中心として-" 日本地理学会予稿集(1996春). 49. (1996)
• [文献書誌] Toshio Mizuuchi & Kenkichi Nagao: "International Tourism and Urban Development in Antalya,Turkey" IGC国際地理学会アブストラクト集. (印刷中). (1996)
• [文献書誌] 山本健児: "ツーリズムと都市開発-ミュンヘンの事例-" 経済志林. (予定).