研究概要 |
当該年度は研究課題解明のため,チモール島及びスマトラ島の地質調査と試料収集を行った。我々の室内作業は未だ継続中であるが,ここではこれまでの調査・研究及び大学での室内作業の成果の概略を述べることにする。 ◎チモール島 (1)SoeからKolbonoに至る林道沿いの地質調査と試料収集。この林道に沿うルートとはKolbono Lamplexの代表的構成岩類が露出する。今回,Kolbonoからマイルストーンに沿って,ほぼ1kmごとの試料採取を行った。露出する岩石は白色〜赤色を呈する石灰質泥岩で保存良好な前期白亜紀放蔽虫を多産する。この放蔽虫群集にはこれまで陸域からは全く報告のない寒冷環境を示すNon-Ietluysタイプの放蔽虫を含む。現在この放蔽虫について古生物学的な検討を進めている。このルートに沿って露出する堆積岩類はほとんど北方傾斜で.地層面に沿う衛上断層や層曲褶内が著しく,オーストラリア大陸とバンダ弧の衝突付加に伴う付加体断積物と考えられる。 (2)SoeからJonjunmenuに至る道路沿いの地質調査。このルートには白亜系のみならず三畳系の分布も研究代表者らの過去の調査で明らかになっている。今回,Jonjunmenu付近を中心に石灰質泥岩の試料採取を構造解析を中心に行った。その結果、Jonjunmenu付近には石灰質泥岩を中心とするほとんど白亜系のみからなるNakafunu層が分布し,三畳系(Aitutu層)との関係は前者が後者に衝上していることが明らかとなった。これもKollbonoルート同様に衝突時の付加作用に伴う構造作用により形成されたものと考えられる。Nashabcom層に含まれる白亜紀放蔽虫もほとんどがNon-Iethysタイプの放蔽虫である。 (3)Nihi NihiからBotiに至るルート沿いの地質調査と試料収集。このルートには赤色・黄色・緑色等雑色の石灰質泥岩が広く分布する。構造的特徴はKolbonoルートとほぼ同様である。微化石処理は十分に進んでいない。 (4)Kebamenarw周辺の中古生層の地質調査と試料収集。この付近では19世紀後半から保存良好な中古生代化石の産出が知られている。今回,Kebamcnasw東方約5km付近に露出する赤色石灰岩から,アンモナイト,サンゴ,胞足類,三葉虫およびフズリ化石を行ることができた。この石灰岩はペルム系Maubisse層に対比できる。地元住民の協力を得て30cmにもおよぶ大型のアンモナイト化石を得ることができた。この付近のフズリナ化石はこれまで十分な研究は行われていない。 (5)KebamenarwからSoeに至る道路の中間点付近に産する砂泥互層の採取。この付近にはチモール島ではめずらしい砂岩泥岩互層が分布する。今回この互層中に長径1mにおよぶ巨大二枚貝(おそらくイノセラムス)を得ることができた。泥岩部には石灰質ノデュールが含まれ、多量の放蔽虫化石を産する。岩石処理は十分に進展していないがIethysタイプの白亜紀放蔽虫を得ることができた。チモール島からIethys及びNon-Iethys両タイプの放蔽虫が得られたことは白亜紀古生物地理を検討する上できわめて重要な資料となると思われる。 ◎スマトラ島 (1)Bohithing付近の石灰紀石灰岩の採取。この付近には玄武岩質溶岩及びそれに挟まれる石灰岩が露出する。従来、この石灰岩はペルム系とされていたが、今回の研究により石英紀であることが明らかとなった。 (2)Paden dstanに露出する石灰岩の調査。この付近に露出する石灰岩からペルム紀中期〜後期の豊富なフズリナ化石とサンゴ化石を得ることができた。室内作業は十分に進んでいないが、フズリナ化石は典型的なIethysタイプであり,従来知られているNon-Iethysタイプのフズリナとの関係は古生代末のIethys域における古生物地理を解明する上できわめて重要な資料となる。 (3)hahe Ioba湖の三畳系石灰岩の試料採取。hahu Joba湖北縁部には灰色成層石灰岩が広く分布する。従来の研究ではやや火今性の堆積物と考えられていたが,今回我々の研究によりサンゴやストロマトライド,藻類からなる豊富な浅海性動物層を得ることができた。
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