研究分担者 |
KORAL Hayret イスタンブール大学, 土木地質学部, 助教授
BARGU Simav イスタンブール大学, 土木地質学部, 助教授
TANSEL Izver イスタンブール大学, 土木地質学部, 教授
MERIC Engin イスタンブール大学, 土木地質学部, 教授
荒川 洋二 埼玉大学, 教育学部, 助教授 (00192469)
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研究概要 |
トルコ共和国黒海沿岸の地域には、上部白亜系から暁親統の石灰岩、苦灰岩、頁岩、砂岩が広く発達し、地質構造上からはポンチド帯(Pontides)と呼ばれるヨーロッパ大陸の前縁域に属している。プレート説では、ポンチド帯は、白亜紀初期(119Ma)までは、ユーラシアプレートの前縁コラージュ(collage)に位置し、アフリカプレートとのパレオテチス海(Palaeotethys)にはサカリア微大陸(Sakarya)、アナトリア微大陸(Anatoloa)などがアフリカプレート北縁から分離分割され北東に移動した。中生代・新生代境界(KT境界)から始新世中・後期(42Ma)までには、黒海の形成・拡大とポンチド帯南縁のサブダクションの活動、微大陸の接近、アフリカプレートの北上、アラビアプレートの逆時計回りの北上によってテチス海は極めて縮少された。 本研究はこうした従来の研究に基づく地球史の背景にあって、ポンチド帯に発達する上部白亜系から暁親統の分布域から全体を網羅的に、有効にカバーするため13地域を選定し、フィールド調査を実施した。イスタンブールの東、タブサンテペ(Tavsantepe)からカスタモヌ(Kastamonu)までの東西1300kmに8地域、43層準の岩石試料を採取した。カスタモヌの北、ジデ(Cide)から黒海沿いに西方のアグバ(Agva)までの1200km間に5地域、97層準の岩石試料を採取。総数140層準の岩石試料は薄片化、細泥化、化学分析のための実験試料とし、室内研究を実施した。薄片数381、泥質試料30、分析試料10を室内研究に用いた。光学顕微鏡観察と87Sr/86Sr同位体の分析はほぼ完了し、走査電子顕微鏡観察および岩石試料の元素濃度分析は研究中である。写真撮影と分析結果、フィールド資料をもとに産出化石種、生層序の決定、得られた元素・同位体比のデータを加え、時間変化と空間変化、それから推測される古環境の変化を古海洋の生物相と化学的環境変化の成因的関係を復元させ、それを学会誌で公表する。特にスロベニアで開催の1996・9・27-10・2のEuropean Science Foundation国際研究集会、「隕石衝突と惑星地球の進化(Impact Cratering and Evolution of Planer Earth)」で発表申請中。現在までの研究成果は以下の
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とおり。 トルコ国鉱物研究開発局(MAT Dept.of M.T.A)の地質図、研究報告書、イスタンブール大学研究報告、論文を基に選定した13地域は、タブサンテペ(上述)、クズデレベント(Kizderbent)、ヤゲハネ(Yaghane)、イェニセヒル(Yenisehir)、ギョイパザイ(Golpazai)、カヤボガシ(Kayabogazi)、シヤモ-ル(Siyamoglu)、デブレカニ(Devrekani)、ジデ(上述)、コカクス(Kokakusu)、サビルリ(Sabirli)、アブダル(Avdal)、アグバのイェシルチャイ(Yesilcay)である。タブサンテぺよりカスタモヌのデブレカニまでの上部白亜系マ-ストリヒト階はクズデレエベントで苦灰岩と頁岩互層、東方のデブレカニに向かうと砂岩から砂質石灰岩、KT境界層で頁岩発達域から東方でコケ虫石灰岩へと岩相変化が認められる。暁新統はクズデレベントで暗色石灰岩、ギョイバザイで褐色石灰岩、デブレカニで白色珊瑚石灰岩となる。黒海沿いのイェシルチャイから東方のジデ間はマ-ストリヒト階は浮遊性有孔虫苦灰岩、頁岩、ジデで大型有孔虫石灰岩を挟有する。KY境界相と暁新統下部ダニアン階はイェシルチャイから東方のコカクスまでラグーン(lagoon)よりは深い岩相、つまり洋域の苦灰岩、頁岩、両方の互層として認められ、ジデでラグーンの石灰岩となる。その後、暁新統はジデで再び外洋域の岩相、暁新統上部サネシアン階でラグーン域の石灰岩である。マ-ストリヒト期の有孔虫はSiderolites calcitrapoides,Hellenocyclina beotica,Orbitoides apiculatus,Ompbaloiyclus macroporusm,Cideina soererii,Globotruncana stuarti,G.stuarti formis,Gansserina gansseri,Abathomphalus mayaroensis,Rosita contusaなど、ダニアン-サネシアン期では、Planorbulina cretae,Valvulina sp.,Morojovella pseudobulloidesなど同定。他の化石は石灰藻類、コケ虫類、珊瑚類、軟体動物であり、有孔虫種と共に環境使用され、岩相と共に上述の堆積環境域が決定された。KT境界層の生物相の絶滅に関しては、デブレカニのKT境界層では境界下で87Sr/86Sr比がピークを迎え0.7078付近から0.7079へと上昇し、その上部で再び0.7078へ回復。ギョイパザリでKT境界層になると金属元素のCr,Co,Ni,Znの濃度は、ピークを迎え。隕石衝突は、境界層したで起こり、その後の濃度は選択的に起こった、と推定される。KT境界層の上下で堆積作用はラグーンから浅海の陸棚下で形成され、生物相の絶滅には本質的には大きな差異は生じなかったと推定された。 本研究は現在も続行し、より詳細にKT境界相の地球史の解析をしている。黒海沿岸域のポンチド帯とアフリカプレートのアナトリド帯(トルコ国アンカラの南部域)との関係を追跡することは、ネオテチス海の消滅と生物相の大変遷に関わる重要な研究課題である。そのため、今年度の計画は黒海域の補足材料の採取、アナトリド帯の予察調査、研究を行う予定。平成9年度には全域を通じアナトリド帯のKT境界層の上下の国際学術調査研究を実施したく、切に希望する次第です。 隠す
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