研究課題/領域番号 |
07041095
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
脇田 宏 東京大学, 理学部, 教授 (40011689)
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研究分担者 |
PERES N.M カナリア火山観測所, 研究員
中井 俊一 東京大学, 理学部, 助教授 (50188869)
N.M Perez IPNAC-CSIC,Canary Islands
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1995年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | カナリア諸島 / ヘリウム同位体比 / ホットスポット火成活動 / 下部マントル / 太洋島 |
研究概要 |
本研究は、アフリカ大陸の西、大西洋上のカナリア諸島の火成活動の起源を明らかにすることを目的としている。この諸島ではネオジムなどの同位体比を用いた火成岩の研究が比較的進んでおり、下部マントルからのホットプルームの寄与が示唆されているが、リフトと関連した火成活動を唱える説もあり、火成活動の起源の論争は完全に決着がついたとはいえない。本研究では、より有力なヘリウム同位体比を用いて、この問題の解決を図った。またカナリア諸島は他の大洋島には見られない広い火山分布と長い火成活動期間を持ち、マントルの化学的性質の地域的な異方性やマグマ供給源の時間変化を研究するのに好適な場所である。本研究ではヘリウム同位体比を中心的なトレーサとしてこれらの研究を行った。本国際学術研究では、1995年9月にカナリア諸島の各島からのガス、水試料を採取するとともに、現地の研究者と協力して火山岩試料の採取を行った。ガス・水試料の分析は順調に進んでおり、40個以上のヘリウム同位体比データを得た。岩石試料に関しては、現在岩石の破砕法を改良しているところである。以下に本研究で得られた成果を列挙する。 1.ホットスポット火成活動を示唆する高いヘリウム同位体比の検出 諸島の最西端に位置するラパルマ島のカニアスカルデラ内の自噴井から沸きだす二酸化炭素中に大気の9.6倍の同位体比(^3He/^4He)を持つヘリウムを検出した。上部マントル由来のマグマのヘリウム同位体比は一般に大気の8倍以下であり、この結果はカナリア諸島の火成活動が下部マントル起源であることを示唆する重要なデータである。この地域は古い基盤岩で構成されているため、この地域の調査はあまり行われてこなかった。カナリア諸島で大気の8倍より高いヘリウム同位体比が検出されたのは初めてである。 2.ヘリウム同位体比の地域分布の特徴 a.諸島全般の分布 本研究で一般に諸島の西側ほど高いヘリウム同位体比を持つ傾向が得られた。ハワイ諸島でも東西で岩石の同位体比の組成が変化することが報告されており、この原因は固定されたホットスポットに対する海洋地殻の運動により説明されている。本研究で得られたヘリウム同位体比の地域分布はカナリア諸島の火成活動が下部マントルを起源とするプルーム由来であるという説と調和的である。 b.Teide火山周囲の分布 Tenerife島ではTeide火山を中心に三方に単成火山の列が延びる。この島の全般の地点で噴気ガス地下水を採取し、ヘリウム同位体比の分析を行った。その結果は中央のTeide火山では大気の7.2倍の、他の地下水試料でも大気成分の影響を取り除くと大気の7倍程度のヘリウム同位体比を得た。一般に日本などの島孤地域では、火山の中心から10km程度離れると顕著なヘリウム同位体比の低下が見られる。これに対して、ハワイの火山やシチリア島のEtna山などプルーム起源の火山では比較的広い範囲にわたって一定のヘリウム同位体比が観察される。本調査で得られた結果は、カナリア諸島の起源がプルーム火山活動であることと調和的であり興味深い。 今後の問題点・岩石破砕法の改良 本調査では現地ラグ-ナ大学のRodriguez教授と協力して、溶岩中のオリビン結晶の採取を行った。採取された試料は、ほとんどの島をカバーし岩石を用いたヘリウム同位体比の空間分布の研究に十分である。またテネリフェ島では多くの歴史溶岩試料を採取しヘリウム同位体比の時間変化の研究も計画している。採取分離されたオリビン結晶は真空中で破砕され結晶内の流体包有物に含まれるヘリウム同位体を測定する。現地調査の後、真空中での岩石破砕の予備実験を始めたが、破砕が不十分で測定に十分のヘリウムが抽出できなかった。今回の実験では真空ボールミル法を用いた。現在ダイヤモンドを真空破砕している、研究者と協力してより強力な粉砕装置を開発中であり、完成後実験を再開する。
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