研究課題/領域番号 |
07041098
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高野 穆一郎 東京大学, 教養学部, 教授 (90012426)
|
研究分担者 |
SALISTIYO Yu インドネシア火山調査所, メラピ観測所, 研究員
BERNARD Alai ブラッセル自由大学, 地球科学科, 教授
鈴木 勝彦 東京大学, 教養学部, 助手 (70251329)
ALAIN Bernard Dept. Earth Sci., Universite Libre de Bruxelles, Researcher
|
研究期間 (年度) |
1995
|
研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
|
配分額 *注記 |
1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
1995年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
|
キーワード | インドネシア / 火口湖 / イジェン火口湖 / ケルート火口湖 / 音響測深 |
研究概要 |
この研究は単年度計画であり、次年度以降の同一テーマによる研究の準備的性格を有するものである。インドネシアの火山は熱帯雨林地域にあるため、火口湖を持つものが多い。それらの火口湖へのアプローチは長く、交通の便は悪いので、それらの学術調査を実りあるものにするには周到な準備と、調査地域の国状の把握が重要である。この研究では次年度以降の本格調査のため、次の二つの研究を行った。 1.インドネシアのカワ-イジェン、ケルート火口湖の予備調査 イジェン火口湖は世界でもっとも酸性の強い湖である。オランダ統治時代に湖盆形態の調査と部分的湖水分析が行なわれたが、以来この総合調査は無く、最近ベルギーの研究者による化学的研究が行われたのみである。我々はこのベルギー人研究者であるアラン・ベルナルド教授を共同研究者に迎え、彼の共同研究者であるピェ-ル・デルメル博士の協力を得て上記両火口湖の現地調査を実施した。研究代表者とデルメル博士は2週間にわたり、まブバリ島経由でジャワ島に上陸し、登山基地であるバニュワンギに至り現地におけるキャンプ資材の入手の可能性を検討した。この結果、食料、水、燃料は現地で安価に充分用意できることが判明した。問題点はこれらの機材、食料、水の調査地域への運搬である。イジェン火口湖への最終アプローチは徒歩約2時間であり、人力による運搬に頼る他ないが、幸い火口湖畔にある硫黄鉱山の労働者がこのルートを鉱石の運搬ルートとしており、彼等に協力を頼むことができることが分った。人力による運搬の基地までは車輛によることが出来るが、私営プランテーションの道路を利用しなければならない。この際にはインドネシア火山調査所の正式書類が必要であることが判明した。調査には約2週間の滞在が必要であるが、この地域では飲料水の調達が極めて困難である。調査は乾期に行われるため、利用できる泉は一ヵ所のみであるが、それも浄水化か必要であることが分った。湖水はpHが0.27と極めて低く、湖水調査の際にはゴム手袋、ゴム引きの上下一体防水着が必要であることが感じられた。 ケルート火口湖はイジェン火口湖から西約200kmに位置する。アプローチは全ルート車輛の利用が可能である。この火山は1992年2月にも噴火しラパールを発生する危険な火山として、麓に火山観測所が設置されており、観測員が常駐している。従って調査時に必要な火山情報を得ることができる。また現在湖水の排水トンネルの工事中でもあり、道路事情が良いので、全体としてキャンプの設営や火口湖の調査活動はイジェン火口湖に比較して格段に容易であろうと推察された。この火口湖は極めて活動的で、しばしば大災害を引き起こす噴火を伴っているが、不思議なことに湖水のpHは高く殆んど中性である。湖水周辺の噴気孔の温度は390°Cであった。これらインドネシアの火口湖の予備調査はデルメル博士の協力のもとに行われたが、同氏のインドネシア語力と現地調査の経験なしには充分な成果をあげることが不可能であった。 2.本邦火口湖における機材の性能点検と国際学術調査の打ち合わせ 共同研究者であるベルギー、ブラッセル自由大学のベルナルド教授を招き、群馬県草津白根火山湯釜火口湖および北海道登別温泉大湯沼火口湖の調査を行った。草津湯釜火口湖においてはベルナルド教授とともに超音波測深器を用いた火口湖の断面図を作る仕事を行った。この結果湖の水深が現在平均15mであり、中心部に1段と深度のある部分があり、そこから活発な発泡が行われていることが鮮明に示され、使用した機器が正常に作動することが明らかとなった。この火口湖において超音波測深が実施されたのは本研究が最初である。活動的火口湖は殆んど例外なく湖底に溶融した硫黄の溜りをもつ。登別温泉大湯沼はこの溶融硫黄を観察する良いフィールドである。溶融硫黄のもつ諸性質を研究することによって湖底の化学環境を推定できるため、同教授とともに大湯沼の調査を行った。調査結果は進行中のため現時点では明らかにし得ないが予報的結果として、この硫黄が微量ながらレアメタルを含むことが示唆されている。 ベルナルド教授の滞日中に次年度以降のインドネシア火口湖の調査のための打ち合わせが密に行われたのも成果の重要な一部である。
|