中国淮河流域における水循環の変動の実態に関する研究

• 研究課題/領域番号: 07041099
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 学術調査
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 加藤 内蔵進 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 助手 (90191981); 加藤 内藏進 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 助手
• 研究分担者: 劉 新仁 河海大学, 教授 ; 黄 姜元 中国科学院, 大気物理研究所, 教授 ; 王 相文 安徽省気象局, 副局長 ; 葛 文忠 南京大学, 大気科学系, 教授 ; 陽 民欽 水利部, 淮河水利委員会・教授級, 高級工程師 ; 劉 春蓁 水利部, 水文水利信息中心・教授級, 高級工程師 ; 趙 柏林 北京大学, 地球物理系, 教授 ; 丁 一氾 中国気象局, 国家気候中心・所長, 教授 ; 松本 淳 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (80165894) ; 高橋 日出男 広島大学, 総合科学部, 助手 (40202155) ; 中北 英一 京都大学, 防災研究所, 助教授 (70183506) ; 椎葉 充晴 京都大学, 防災研究所, 教授 (90026352) ; 池淵 周一 京都大学, 防災研究所, 教授 (20026181) ; 上田 博 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (80184935) ; 菊地 勝弘 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80000793) ; 玉川 一郎 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 助手 (40273198) ; 坪木 和久 東京大学, 海洋研究所, 助手 (90222140) ; 武田 喬男 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 教授 (60022604) ; GE Wenzhong Dept.Atmos.Sci., Nanjing Univ., Prof. ; HUANG Meiyuan Inst.Atmos.Phys., Chinese Academy of Sci., Prof. ; DING Yihui National Climate Center, China Meteor.Admin., Senior Engineer ; YANG Mingqin Huaihe River Com., Ministry of Water Resources in China, Senior Engineer ; LIU Chunzhen Information Center, Ministry of Water Resources in China Senior Engineer ; WANG Xiangwen Meteor.Bureau of Anhui Province, China, Prof. ; ZHAO Bolin Dept.Geophys., Peking Univ., Prof.
• 研究期間 (年度): 1995
• 研究課題ステータス: 完了 (1995年度)
• 配分額: 6,300千円 (直接経費: 6,300千円); 1995年度: 6,300千円 (直接経費: 6,300千円)
• キーワード: エネルギー水循環過程 / 亜熱帯前線 / メソスケール雲・降水システム / アジアモンスーン / 日中共同研究 / 中国淮河流域 / GAME / HUBEX

研究概要

本研究は、アジアモンスーンの顕著なサブシステムである亜熱帯前線帯の影響下で、また、中国の工業・産業の要塞の地でもある淮河流域とその周辺域を調査域とし、相互作用し合う大気と陸面を1つのシステムとした気象・水文の総合的な研究により、流域の水循環変動の実態を解明し、変動の機構と予測に関する今後の研究の基礎作りを行うことを目的として行われた。GAME(アジアモンスーンエネルギー水循環観測研究計画)のサブプロジェクトの1つであるHUBEX(亜熱帯・温帯モンスーン地域観測計画(淮河流域観測計画)が1996年度より実施されるので、本研究はパイロットスタディという位置づけも出来る。
HUBEXの研究目標は、A.流域スケールのマルチスケールエネルギー・水循環過程の解明と洪水予測の可能性の検討、B.モンスーン変動の実態と機構に関する大陸スケール観測計画への寄与、C.気候モデル、大気大循環モデルにおけるエネルギー・水循環過程のパラメタリゼーション、であり、淮河流域とその周辺におけるゾンデ強化観測とそれを用いた4次元データ同化、同年の日本側の3台のドップラーレーダ観測とレーダー雨量計合成データ作成、リトーリバルによるメソβシステムの非断熱加熱率鉛直分布の評価、境界層・水文過程特別観測とそのデータも利用したメソスケール大気水文結合モデルの開発、等が行われる。そこで本研究では日中の研究者が共同で、データ解析、日本での予備観測、95年晩秋の淮河での現地調査等を通して、上記のデータセット作成のためのデータ品質調査や作成手法の開発検討、モデルとパラメタリゼーションの開発検証を行うと共に、1991年淮河大洪水の事例を中心としたデータの収集・編集と解析により当該領域の水循環の特徴を調べた。また、1996年3月の名古屋において日中韓合同のHUBEXワークショップを開催し、これらの成果を取りまとめ、更に検討すべき科学的・技術的問題点を整理した。得られた主な知見は次の通りである。
1.1991年7月前半の 河流域大洪水時には、南からの多量の水蒸気フラックスが持続しただけでなく、それがあまり北側に抜けてしまわず、南北幅数100km足らずの前線帯での降水に効果的に使われた可能性が示唆された。また、大規模な収束のあるこの期間でも、降水量に対する地面からの蒸発の寄与を無視できないことが明らかになった。
2.例えば亜熱帯高気圧に覆われた盛夏期の長江・淮河流域、6月後半以降の華北・中国東北区では、日変化する積乱雲群が夕方出現しやすいが(1979年の事例)、地面加熱の役割は両地域ではかなり異なることがわかった。
3.1988年7月に九州付近で観測されたメソスケール降水系のドップラーレーダー観測、ルーチンデータの解析により、システムの振舞いを大陸側と比較すると共に、リトリ-バル法を適用し、メソβシステムの3次元的熱力学場の推定に成功した。
4.人工衛星データを用いた降水量評価の試みを行った。陸上では、赤外データや、高周波マイクロ波(85GHzの各偏波)の利用可能性を更に検討する必要があることがわかった。
5.メソスケール大気モデルで用いられている対流のパラメタリゼーションのインパクトの比較を行い、Arakawa-Schubertスキームが、3.の事例のメソシステムを最もよく再現していたことがわかった。
6.現在使われている分布型流出モデルの性能について再検討し、改良を行った。
7.複雑地表面での水文過程と地表面フラックスを予報モデル(SiBUCモデル)を開発し、琵琶湖域等に適用してモデルの検証やパラメーターのチューニングを行った。
8.中国のルーチン地上気象データを用いて地面での熱・水蒸気フラックスを日単位で算出する方法を考案した。

研究成果

• [文献書誌] 田中賢治: "土地利用スケールと広域熱フラックスとの関係" 水工学論文集. 39. 159-164 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 近藤純生: "中国の乾燥・半乾燥域の裸地面熱収支の計算(1)気候と土壌パラメータと計算方法" 水文・水資源学会誌. 9(3月号に印刷予定). (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] G.W.Si.et al: "The early summer seasonal change of large scale circulation over East Asia and its relation to change of the frontal features and frontal rainfall environment during 1991 summer" Advances in Atmospheric Sciences. 12. 151-176 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] K.Kato: "Diurnal variation of Cb-clusters over China and its relation to large-scale conditions in the summer of 1979" J.Meteor.Soc.Japan. 73. 1219-1234 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] M.Kawashima: "Maintenance mechanism and thermodynamic structure of a Baiu frontal rainband retreved from dual Doppler Radar Obervation" J.Meteor.Soc.Japan. 73. 717-735 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] M.Ishihara: "Dual Doppler Radar analysis of anintense mesoscale rainband gererated along the Baiu front in 1988" J.Meteor.Soc.Japan. 73. 139-163 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] J.Matsumoto: "Rainfall climatology over Asian monsoon region" Toward global planning of sustainable use of the earth. 419-422 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Y.H.Ding: "Large-scale atmospheric circulation features during TOGA-COARE IOP." J.Meteor.Soc.Japan. 73. 339-351 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] H.Uyeda: "Doppler Radar Observations on thestructive and characteristics of tropical clouds during the TOGA-COARE IOP in Manus,Papua New Guinea -Outline of the Observation-" J.Meteor.Soc.Japan. 73. 415-426 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Y.Fujiyoshi: "Dual Doppler Radar observation ofa tropical rainband development from twoconvective clouds" J.Meteor.Soc.Japan. 73. 471-490 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] H.Ueda: "Abrupt seasonal change of large-scale convective activity over the WesternPacific in Northern summer." J.Meteor.Soc.Japan. 73. 795-809 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] A.Yatagai: "Interannual variation of summer precipitation in the arid-semiarid regions in China and Mongolia : Their regionality and relation to the Asian summer monsoon." J.Meteor.Soc.Japan. 73. 909-923 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] J.Matsumoto: "Rainfall climatology over Asian monsoon region." Toward global planning of sustainable use of the earth. 419-422 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Y.H.Ding: "Large-scale atmospheric circulation features during TOGA-COARE IOP." J.Meteor.Soc.Japan. 73. 339-351 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] H.Uyeda: "Doppler Radar observations on the structure and characteristics of tropical clouds during the TOGA-COARE IOP in Manus, Papua New Guinea - Outline of the Observation -" J.Meteor.Soc.Japan. 73. 415-426 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Y.Fujiyoshi: "Dual Doppler Radar observation of a tropical rainband development from two convective clouds." J.Meteor.Soc.Japan. 73. 471-490 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] H.Ueda: "Abrupt seasonal change of large-scale convective activity over the Western Pacific in the Northern summer." J.Meteor.Soc.Japan. 73. 795-809 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] A.Yatagai: "Interannual variation of summer precipitation in the arid-semiarid regions in China and Mongolia : Their regionality and relation to the Asian summer monsoon." J.Meteor.Soc.Japan. 73. 909-923 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K.Tanaka: "The effects of the land-use scale on spatial average of heat fluxes. (in Japanese)" Annual J.Hydrol.Engineering, JSCE.39. 159-164 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] J.Kondo: "An estimation of heat balance for arid and semi-arid regions in China. (1) Climatological conditions, soil parameters and calculation method. (in Japanese)" J.Japan Soc.Hydrol.& Water Resour.9 (in press). (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] G.W.Si et al.: "The early summer seasonal change of large-scale circulation over East Asia and its relation to change of the frontal features and frontal rainfall environment during 1991 summer." Advances in Atmospheric Sciences. 12. 151-176 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K.Kato: "Diurnal variation of Cb-clusters over China and its relation to large-scale conditions in the summer of 1979." J.Meteor.Soc.Japan. 73. 1219-1234 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] M.Kawashima: "Maintenance mechanism and thermodynamic structure of a Baiu frontal rainband retreved from dual Doppler Rader Observation." J.Meteor.Soc.Japan. 73. 717-735 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] M.Ishihara: "Dual Doppler Radar analysis of an intense mesoscale rainband generated along the Baiu front in 1988." J.Meteor.Soc.Japan. 73. 139-163 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より