研究分担者 |
趙 洪よん 韓国高麗大学校, 自然科学大学, 副教授
成 文喜 韓国科学技術研究院, 生命工学研究所, 責任研究員
張 樹政 中国科学院, 微生物学研究所, 教授
SAMARKIN V.A ロシア科学アカデミー, 微生物生化学生理学研究所, 高等研究員
KELLER J.W. アラスカ大学, 化学部, 教授
栗原 達夫 京都大学, 化学研究所, 助手 (70243087)
吉村 徹 京都大学, 化学研究所, 助教授 (70182821)
左右田 健次 関西大学, 工学部, 教授 (30027023)
CHO Hong Yon Graduate School of Biotechnology Korea University, Associate Professor
SUNG Moon-Hee Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology, KIST,Principal Researc
ZHANG Shu Chen Institute of Microbiology, Academica Cinica, Professor
SAMARKIN Vladimir A Institute of Soil Science and Photosynthesis, Russion Academy of Sciences, Senio
KELLER John W Department of Chemistry University of Alaska Fairbanks, Professor
趙 洪衍 韓国高麗大学校, 自然科学大学, 副教授
GALCHENKO V. ロシア科学アカデミー, 微生物研究所, 高等研究員
江崎 信芳 京都大学, 化学研究所, 助教授 (50135597)
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研究概要 |
低温菌の酵素は、低温で高い活性を示し、低温での反応の触媒として有用である。例えば、洗剤にはプロテアーゼなどが添加されているが、この場合、低温で高い活性を示す酵素の使用が望ましい。また、食品に酵素処理を行う場合には、食品の品質維持のため、好冷酵素が有用である。この他、熱安定性の低い物質を酵素的に変換する場合や、温度制御が不可能な野外で環境浄化などのために酵素を利用する場合にも好冷酵素の開発は重要である。本研究は、このような局面で利用可能な低温菌酵素を単離し、それらの構造と機能の解明を目指すものである。具体的にはカナダ、スイス、中国、韓国、英国などの寒冷地および高地の土壌、水圏などから低温性酵素を生産する微生物を探索し、単離した好冷微生物の生産するリパーゼやプロテアーゼの遺伝子をクローン化するとともにクローン株から酵素を精製し、その酵素化学的諸性質、特に好冷酵素としての特性を詳しく調べ、常温菌あるいは好熱菌から単離された既存の酵素と比較した。 本研究では、まず低温環境より単離したPseudomonas sp.B11-1株およびAcinetobacter sp.No.6株の染色体遺伝子ライブラリーを作製し、Tributyrinあるいはオリーブ油を含む寒天培地でのハロ形成を指標としてリパーゼのスクリーニングを行った。Pseudomonas sp.B11-1株から得られたクローンのうち、トリアシルグリセロールリパーゼとの相同性が高いリパーゼ遺伝子をコードするプラスミド、pLHP111、および従前のリパーゼ類とは相同性のないリパーゼ遺伝子をコードするプラスミド、pB3を得た。pB3は、676残基からなる分子量約72,900のリパーゼをコードするものと推定された。これまで立体構造が解明されているリパーゼは全て活性部位にSer-His-Asp/Gul triadをもち、さらにこのSer残基はGxSyG(x,yは任意、xはHisであることが多い)の配列中に見いだされている。しかし、今回クローン化したリパーゼにはこのモチーフに相当する配列がなかった。データベースとのホモロジー検索では、本酵素遺伝子はPseudomonas putidaのtrpE-trpG領域にある役割不明の読みとり枠と高い相同性を示した。この読みとり枠のコードするhypothetical proteinとpB3のコードするリパーゼもともに、相同配列GDSLをもつ。ホモロジー検索では、この配列をもつタンパク質の大部分はリパーゼやチオエステラーゼなどの加水分解酵素であった。pB3のコードする精製リパーゼは、C4〜C6程度の比較的短鎖の脂肪酸のp-nitrophenyl esterに高い活性を示した。各種温度でp-nitrophenyl butyl esterに対する活性を測定し、Arrhenius plotしたところ、反応の活性化エネルギーは11.2kcal/molと計算された。この値は常温菌Pseudomonas aeruginosa由来のリパーゼのもの(25kcal/mol)より有意に低かった。 Acinetobacter sp.No.6株からはリパーゼ様の活性を持つ遺伝子を14種類単離した。これらを大腸菌を宿主としてクローン化したところ、A17株の粗抽出物はp-ニトロフェニルエステルに対して高い活性を示した。このクローン株のもつプラスミドは258個のアミノ酸残基よりなる分子量は約28,423のタンパク質をコードしていた。ホモロジー検索により、本酵素はAcinetobacter calcoaceticus由来のβ-ketoadipate代謝系の1酵素であるβ-ketoadipate enol lactone hydrolase(ELH)との高い相同性を示すことが明らかとなった。Acinetobacter sp.No.6株からクローン化したAci.17酵素は酢酸エステルに対する活性が最も高く、鎖長が長くなるに従い、活性が低下した。またp-nitrophenyl butyl esterを基質としたときの反応の活性化エネルギーは11.3kcal/molであり、既報の酵素の測定値に比べ低かった。
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