研究分担者 |
ブレーラー ディビド ジェームズクック大学, 理学部, 助教授
邸 東川 四川省寄生虫病研究所, 寄生虫部, 部長
ライ カレン マレーシア医学研究所, 寄生虫部, 部長
キティクーン ビロージ マヒドール大学, 熱帯医学部, 教授
ピナルディ ハジジャジャ ネンドネシア大学, 医学部, 教授
ウパタム スチャート マヒドール大学, 理学部, 教授
橋本 和子 高知医科大学, 医学部, 助教授 (70263978)
岡本 宗裕 大阪大学, 医学部, 助手 (70177096)
杉山 広 国立予防衛生研究所, 寄生動物部, 主任研究官 (00145822)
田口 尚弘 高知医科大学, 医学部, 助手 (80127943)
平井 啓久 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (10128308)
平田 瑞城 久留米大学, 医学部, 助教授 (70080629)
斉藤 康秀 麻布大学, 獣医学部, 助教授 (10063976)
波部 重久 福岡大学, 医学部, 講師 (70037430)
川中 正憲 国立予防衛生研究所, 寄生動物部, 室長 (50109964)
UPATHAM Suchart Mahidol University
HADIDJAJA Pinardi University of Indonesia
OJU Dongchuan Sichuan Institute of Parastic Disease
DAVID Blair James Cook University
VIROJ Kitikoon Mahidol University
邱 東川 四川省寄生虫病研究所, 寄生虫部, 部長
ピナルディ H. インドネシア大学, 医学部, 教授
羅 進宗 国立陽明大学, 医学部, 助教授
ティウ W.U. フィリピン大学, 医学部, 助教授
バラポルン K. ラムカムヘン大学. 理学部, 助教授
ウパタム S. マヒドール大学, 理学部, 教授
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研究概要 |
1)住血吸虫のDNA分析 a)シネンシウム住血吸虫(Schistosoma sinensium)の分子系統学的研究 シネンシウム住血吸虫は虫卵の形態や子宮における虫卵の数などにおいてマンソン住血吸虫に似ているが他の点ではむしろ日本住血吸虫に類似するなど極めて興味深い住血吸虫である。本年度は、タイ、チャンマイのファン地区と中国、四川省の丹稜地区で採集したシネンシウム住血吸虫のチトクロームCオキシダーゼサブユニットI(COI)の塩基配列を比較した。まずPCR法にて増幅させ、HPLCを用いて精製したのち、ダイデオキシ法により塩基配列を決定した。増幅した400ベースペアのうち、41ベースペア(約10%)のサイトで塩基置換が起こっていた。このちがいは、マレー住血吸虫とメコン住血吸虫のちがい、即ち近縁別種間の相違に相当する。一方、日本住血吸虫、マレー住血吸虫、メコン住血吸虫の3種と比較すると、それぞれにたいして約20%の塩基置換を起こしており、系統的にかなり離れていることが分かった。しかしながら、既に発表されているアフリカ産のマンソン住血吸虫やビルハルツ住血吸虫と比較するとアジア産日本住血吸虫グループの方にやや近縁のように思われた。この点を明らかにするために、コンピューター分析により分子系統樹の作成を試みた。ソフトはPHYLIPを用い、UPGMA法と近隣結合法(NJ法)の2法にもとずき解析し、次のような結果を得た。まず、1)マレー住血吸虫とメコン住血吸虫は、はじめにクラスターを作り非常に近縁である。2)マレー住血吸虫とメコン住血吸虫のクラスターは、つぎに日本住血吸虫と結びついた。3)シネンシウム住血吸虫はメコン住血吸虫、マレー住血吸虫、日本住血吸虫のクラスターと結合した。4)アフリカ産のマンソン住血吸虫とビルハルツ住血吸虫は互いに結び付き、アジア産の住血吸虫とは、離れたクラスターを形成した。これらの事実からシネンシウム住血吸虫は日本住血吸虫の起源の祖先種と深い関係があることを暗示している。 b)インコグニツム住血吸虫(Schistosoma incognitum)の分子系統学的研究 インコグニツム住血吸虫はインドネシアからマレーシア、タイなど東南アジアに分布する鼠類(Rattus属)寄生の住血吸虫であるが、中間宿主貝がLymnea属である点極めてユニークである。今回、インドネシアのジャ
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カルタで採集したインゴグニツム住血吸虫のクトクロームCオキシダーゼサブユニットI(COI)とリボソームRNA遺伝子のInternal Transcribed Spacer(ITS2)領域の増幅に成功した。その塩基配列を日本住血吸虫などのアジア産住血吸虫と比較したところ、極めて多くのサイトで塩基置換が認められたので、UPGMA法と近隣結合法(NJ法)の2法にもとずきコンピューター解析したところ、この住血吸虫は2つの解析法において、2つの領域とも、アジア産の、どの住血吸虫からも離れており、むしろアフリカ産(マンソン住血吸虫、ビルハルツ住血吸虫)のグラスターの中に入ることが明らかになった。この事実は、インコグニツム住血吸虫がもともとアフリカ大陸にいたが、極最近(おそらく10万年以内)になって、なんらかの方法でアフリカ大陸からアジア大陸に分布を広めたことを暗示している。 2)住血吸虫の染色体分析 シネンシウム住血吸虫のC-バンドは、総合的には、S.japonicumに似ているが、各染色体はシネンシウム住血吸虫の特異的パタンを示した。但し、第2染色体は、S.mansoniに酷似する。テロメアの局在部位はS.japonicumに酷似する。 3)中間宿主貝のDNA分析 日本住血吸虫の中間宿主Oncomelaniahupensis種内の3つの亜種(中国産、フィリピン産、日本産),8集団について12SRNA遺伝子領域の塩基配列を調べたところ、それぞれの亜種内で変異が比較的多く見られた。またフィリピン産が他の2亜種より系統上離れたところにあることが分かった。 4)中間宿主貝の染色体分析 これまで、アジア各地で採取した日本住血吸虫中間宿主貝の核型分析を行ない、以下の点について明らかにした。タイ産のNeotriculaα,β,γは♂が2n=33、♀が2n=34で性染色体がXOタイプであり、しかも,αとβ,γではX染色体の形態が異なっていること、また、Tricula bollingiでは♂,♀共に2n=32であり、性染色体未分化型であること、一方、マレーシア産のRobertsiella gismanniとRobertsiellasp.は♂、♀共に2n=34で性染色体は小さな点状のY染色体を有するXY型であこと、さらに、このRobertsiella gismanniにおけるY染色体の出現はNeotriculaからの種分化確立に重要な役割を果たした可能性があること、である。 現在、染色体特有のFISHプローブを利用して、各貝類の染色体の相同性を検討するために、まず、日本産のOncomelania(久留米)とマレーシア産のRobertsiellaの染色体顕微切断を試みている。これまで久留米産Oncomelaniaに反応するプローブを得ているが、顕微切断・PCRで増幅されたDNAには染色体特異的DNAと同時に反復配列DNAも多量に含まれているので、FISHを行うにあたり、その反復配列DNAのサブレッションFISHを行う必要があるが、RobertsiellaのY染色体の増幅はまだ成功していない。 隠す
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