研究課題/領域番号 |
07041121
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西平 守孝 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80004357)
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研究分担者 |
PAPHAVASIT N チュラロンコン大学, 海洋学部, 準教授
仲宗根 幸男 琉球大学, 教育学部, 教授 (60044913)
鹿野 秀一 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70154185)
鈴木 孝男 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10124588)
NITTHARATANA Paphavasit Chulalongkorn University
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
1995年度: 4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
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キーワード | マングローブ湿地 / 底生動物 / 生物多様性 / 生息場所 / 干潟 / タイ国 |
研究概要 |
1.タイ国、サムットソンクラン県クロング・コーンのマングローブ湿地で重点的に調査を行った(調査予定時期に調査予定地が未曾有の洪水にあったため、当初の実施計画を変更して対応した)。マングローブ林の水路沿いに林前面の干潟から林内に向けてライン・トランゼクトを設定し、マングローブ林の外の干潟、マングローブ林前面に苗木を植えて2年経過した干潟、マングローブ林の海側の緑、マングローブ林内に2地点、マングローブ林の陸側の縁辺部の計6地点で植生、気象・水象、底質の状況を調査した。マングローブ林内の相対照度は干潟の数パーセントで、気温、地温ともに干潟より低かった。底土中の地下茎や根などの植物体の乾燥重量は林内において陸側にいくに従って増加したが、枝や葉などのリター量は林の周辺部よりは林の中心部で多かった。底質の土壌の有機物含量と有機態炭素、有機態窒素濃度は干潟より林内で高かったが、C/N比は逆に林内から干潟に向かって増加した。間隙水の窒素およびリンの無機塩類は林内の間隙水中では干潟よりも低かった。このようにマングローブ林内は干潟と比べると底質の状況が大きく異なっていることが明らかになった。 データロッガ-を樹齢が十数年のマングローブ林内、植林後2年の場所とオープンな干潟の3ヵ所に設置して、温度の連続記録を再び開始した。平成8年の国際学術調査でデータロッガ-を回収し、1年間の温度変化を解析する。 また、クロング・コーンとはマングローブの優占種が異なるトランにおいても動物相の概要観察を行った。 2.主調査の結果、林外の干潟では、テッポウエビ科、シャコ科、スナガニ科の甲殻類、多毛類やフネガイ科の二枚貝も多く生息していた。マングローブ林の海側の外縁部の生物組成は干潟と似ていたが、陸側の縁辺部ではオカミミガイ科やアマオブネガイ科の巻き貝が木の幹や枯れた枝などのさまざまな所で見られた。スナガニ科とベンケイガニ亜科のカニ類もマングローブの林内に多く生息していた。マングローブ湿地における生息場所と動物相の対応が明らかになった。 3.また、ライン・トランゼクト上の6地点で、コドラート法により底生動物群集の定量的調査を行った。全部で63種の底生動物が採取され、1平方メートル当たりの平均密度は578個体であった。種数と個体数密度は干潟から林内に向けて減少する傾向がみられたが、多様性指数(均等度)は陸側の周辺部の林内で最も高く、海側に向けて低くなる傾向があった。群集組成についてCπを用いクラスター分析を行ったところ、干潟の2地点と林内の4地点がそれぞれのグループを形成し、更に林内では海側・陸側の周辺部と林の中心部の2つのグループに分かれ、それぞれのグループ内で群集組成が類似していたことから、群集構造と環境との対応が見出された。 4.養殖地の造成や農耕などによって撹乱されたマングローブ湿地に再植林した後の底生動物群集の再定着の過程について調査する予定でいたが、残念なことに適当な再植林地が得られなかった。しかしながら、2年前に苗木が植林された地点では、樹高が約3mに達しており、それらの樹冠の下では干潟と林内の中間の状態を示していたので、マングローブの成長に伴う環境の変化を解析する適当な地点として、平成8年度の国際学術調査で継続的に調査する予定である。 5.主要な動物資源の利用状況を調査したところ、放棄されたエビの養殖地や干潟でフネガイ科の二枚貝(Anadara)の放養が盛んであることが分かった。そこでAnadaraの生息地における生存率と成長の違いを比較するために、干潟からマングローブ林内までのいくつかの地点に、6ヵ月前に殻長の計測を行った稚貝を放し、実験個体群を設定していた。今回この実験区から貝を回収し、生存率と生長量を測定した結果、干潟では生存し成長していたが、林内ではほとんど死亡していた。 また、植林した苗木の生育を阻害する要因のひとつとしてフジツボの幹への定着が挙げられている。そこでフジツボの加入・定着および成長過程を調べるために、干潟からマングローブ林内の標高の異なった地点にプラスチック製のポールを1年前と6ヵ月前に設置してあった。今回ポールを回収したところ、フジツボの定着と成長は干潟で大きいことが分かった。
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