研究課題/領域番号 |
07041123
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
日向 康吉 東北大学, 農学部, 教授 (00005589)
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研究分担者 |
渡辺 正夫 東北大学, 農学部, 助手 (90240522)
鳥山 欽哉 東北大学, 農学部, 助教授 (20183882)
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1995年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | BRASSICA / CAMPESTRIS / OLERACEA / NAPUS / NIGRA / 自家不和合性 / S遺伝子 / ドイツ |
研究概要 |
本研究はアブラナ科植物Brassica campestrisやB.oleraceaの野性種を生育地で観察し、それらから個体毎に種子を採集して、自己・非自己の認識に係わS遺伝子のる分布とその多様性を分析することを目的としている。 8月6日〜10日:最も情報が多いドイツ(旧東独)のガタ-スレ-ベンにある植物遺伝・作物研究所を訪問した。B.campestrisに関していえば、ハ-ツベルグの近郊にそれが自生するとの記載があることを確認し、同研究所の好意によって自動車をチャータ-して、同研究所のThomas Gladis博士と同道した。午前中をその探索に費やしたが、残念ながらこの野性集団があるべきところはすべて家畜の放牧地となっており、目的の植物を見いだすことは出来なかった。 その後、ゲッチンゲン大学のG.Robbelen名誉教授を訪れ、このあたりの事情を聴取したところ、数年前までは目的とする植物が栽培ムギの雑草として広く分布していたので、ドイツ外の研究者がここに生育していると考えるのはあながち無理ではないこと。しかし、ドイツの農業情勢の変化に伴い、麦畑が牧草地に急速に転用されてしまい、B.campestrisは牧草地の中では生育不可能のために殆ど姿を消してしまったということであった。そして現在では、本種はロシヤの黒海沿岸地域あるいはスロバキヤの一部にしか残っていないこと、ドイツでは近年、本種が消滅が危惧される植物種の一つとなったことが判明した。 以上の理由によってドイツにおいて、本種は採集できなかった。なお、植物育種・作物研究所においてロシアから収集したB.campestrisの種子の分譲を受けた。ここに記して、謝意を表したい。 8月10日〜12日:オランダのアムステルダムからユトレヒト間をタクシーをチャータ-して精査した。8カ所において、川端か道路路肩に自生しているアブラナ科植物を採集した。しかし、植物の形態および植生の状態から考えて、B.napusではないかと考えられた。この集団にはB.nigraが混入しているものもあった。 8月12日〜16日:まず、イギリスのドーバー海峡の近く、フォルクストンにおいて、海岸に面した崖に生えている、野性 B.oleraceaの集団の調査および採集を行った。海岸に面した崖は約5メートルの高さであり、その崖の斜面および、崖の下の通路周辺にこの植物は生育していた。そして、海岸に面して200〜300メートルにわたって、ほぼ直線的に分布しており、S遺伝子の分布を調査するには極めて好適な集団であった。路肩にはまだ開花していない若い植物も多数見られた。採集においては、その集団の植生に影響を与えないために、各個体から数十粒程度づつを個体別に採集した。従って、この植物の採集には成功したと思っている。また、この地域にはDiplotaxis tenuifolia もあった。 その後、バ-ミンガム大学およびジョンインネス研究所を訪問し植生の状況を伝聞によって調査した。B.campestrisに関しては、詳細は明らかでないが、イギリス北部にはナタネが広範囲に栽培されており、これらナタネ栽培地に雑草として生育している可能性があること、デンマークにおいても、ナタネの雑草として生育している可能性があることが明らかとなった。 これらの調査を終えて、8月17日に帰国した。 今後本採集によって得た種子を保存・維持している。来年度にはこれらを材料として、PCR法などを利用しながらS遺伝子を抽出・同定して、その分布と多様性について検討する予定である。また、いずれかの機会に、植物育種・作物研究所との共同研究を実施して、ロシヤの黒海沿岸あるいはスロバキヤ地方のB.campestrisの調査を行い、更に豊富な情報を得たいと考えている。
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