研究課題/領域番号 |
07041129
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
矢原 徹一 九州大学, 理学部, 教授 (90158048)
|
研究分担者 |
OYAMA Ken メキシコ国立自治大学, 生態学センター, 準教授
副島 顕子 大阪府立大学, 総合科学部, 助手 (00244674)
渡辺 邦秋 神戸大学, 理学部, 教授 (80031376)
|
研究期間 (年度) |
1995 – 1996
|
研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
|
配分額 *注記 |
8,900千円 (直接経費: 8,900千円)
1996年度: 4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
1995年度: 4,400千円 (直接経費: 4,400千円)
|
キーワード | ステビア属 / 分子系統 / matK / ITS / 染色体数 / 有性生殖 / 無性生殖 / 種間比較 / ステビア / メキシコ / 生活史 |
研究概要 |
本研究の目的は、ヒヨドリバナ連に属するメキシコ産ステビア属、およびその近縁属の系統関係を分子系統学的アプローチによって推定し、ステビア属において世代時間、生殖システム、花の形態、染色体数がどのような関連をもって進化したかを明らかにすることである。メキシコ産ステビア属、およびその近縁属の種には、大木、多年層、1年草があり、木本性が祖先的であると考えられる。また、自家受粉や無性生殖が多くの種でみられる、花の形態が多様である。染色体基本数にn=11、12、13という多型がある、などの点で多様性に富んでいる。本学術調査は、メキシコ産ステビア属約100種のほぼ全種、およびステビア属近縁植物を採集し、DNAおよび染色体研究用の資料を得るために実施した。 平成7年度には、オアハカ州、ベラクルス州、グアダラハラ州などで調査を実施し、ステビア属植物の生材料とDNA抽出用乾燥材料を採集した。調査の成果はきわめて満足のいくもので、19世紀後半以後採集されたことがなかったStevia phlebophyla,S.Karwinskyana、約50年前に採集されたタイプ標本のみが知られていたS.seemanioidesを再発見したほか、いくつかの新種も採集した。 平成8年度には7月にチアパス州など、10月にはチワワ州-・デュランゴ州などでの現地調査を実施した。この調査によって得られた資料をこれまでに得た資料に加え、メキシコ産ステビア属約100種のほぼ8割が入手できた。これらについての染色体数の調査から、木本性の種ではn=12だが、多年草の種ではn=11とn=12があり、S.origanoidesなど幾つかの種ではn=11とn=12の種内多型があることがわかった。さらに1年草の種では、n=11に加え、n=4(S.ephemera)が発見された。この事実は、1年草では染色体の減数が起きやすいという仮説を裏付けるものである。 生殖システムに関する調査の結果、木と1年草では2倍体有性生殖のみが見い出された。一方、多年草では3倍体などの倍数体が広く見い出され、無性生殖が繰り返し進化していることを示唆した。有性生殖を行う1年草では自家受粉による種子繁殖が行われている。 matKを用いた系統推定では、ステビア属内の系統関係に関する十分な情報は得られなかったが、Carphocaete属(n=12)がステビア属の外群であり、n=12が祖先的染色体数であることが示された。またこれまでステビア属に近縁と考えられてきたAgeratum属(n=10)は、n=10を持つ他の多くの属と同じクレードに属し、ステビア属との類似は並行進化の結果であることが示された。またn=13を持つMcvaugiellaはステビア属のクレードには属さず、n=17を持つ属から派生したことが明らかになった。Carphocaete属とステビア属を含むクレード、n=10のクレード、n=17のクレードは、フジバカマ連の系統発生の初期に放散的に分化したことが示唆された。 ステビア属内種間の系統推定を行うために、ITSの配列決定を行った。その結果、木本性の群(n=12)が最初に分岐し、続いて多年草の2つの群が分岐することが示された。一方のクレードはn=12のS.deltoidea,S.decummbensを含み、他方のクレードはn=11の種およびS.origanoides(n=11、12)を含む。無性生殖はどちらの群にも見られ、平行的に進化したと考えられる。 1年草の位置については正確な推定ができなかった。1年草では分子進化速度が早まり、その結果系統推定にバイアスが生じている可能性が示唆された。
|