研究分担者 |
EVERSTIGNEEV ティー Limnological Inst. of Siberian Division, Ph. D.
SIDEREVA V.J Zoologieal Inst. of Santo Peterusburg, Ph. D.
PETROV V. Limnological Inst. of Siberian Division, Ph. D.
CHERNYK L. Limnological Inst. of Siberian Division, Ph. D.
GRACHEV M. Limnological Inst. of Siberian Division, Ph. D.
KAMALTVNOV R Limnological Inst. of Siberian Division, Ph. D.
田辺 信介 愛媛大学, 農学部, 教授 (60116952)
天野 雅男 東京大学, 海洋研究所, 助手 (50270905)
益田 芳樹 川崎医科大, 医学部, 講師 (40069076)
菊地 義昭 茨城大学, 理学部, 助教授 (80007567)
西田 睦 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (90136896)
矢部 衛 北海道大学, 水産学部, 講師 (80174572)
後藤 晃 北海道大学, 水産学部, 助教授 (30111165)
益子 計夫 帝京大学, 文学部, 助教授 (00082321)
森野 浩 茨城大学, 理学部, 教授 (30091870)
東 正彦 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (40183917)
和田 英太郎 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (40013578)
沼知 健一 東海大学, 海洋学部, 教授 (30013569)
EVERSTIGNEEV Limnological Inst. of Siberian Division, Ph. D.
KAMALTYNOV R Limnological Inst. of Siberian Division, Ph. D.
EVESTIGNEEVA ティー Limnolgical Inst. of Siberian Division, Ph. D.
立川 涼 愛媛大学, 農学部, 教授 (50036290)
山村 則男 佐賀医科大学, 医学部, 助教授 (70124815)
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研究概要 |
本研究「バイカル湖におけるコミュニティーと環境変動、進化系統に関する研究」では、日本研究者16名(3名の研究協力者を含む)およびロシア研究者5名の参加により、次の7研究課題を実施した。これらの研究は、ロシア科学アカデミーの湖沼学研究所、動物学研究所、自然保護研究所、カスピ海研究所などの協力により実施された。研究内容の概要を以下に示す。 (1)バイカル湖のセレンガデルタを中心にした沿岸域の無脊椎動物(ソコミジンコ、海綿)の分類学ならびに生態学的研究を行った。特に、バイカル湖に生息しているこれらの種類のリストの作成、各種類の生態学的位置づけ、生物量の季節変動に関する試料の採集に力点を置いた。 (2)バイカル湖内で多様に分化したヨコエビ類の進化系統に関する形態および分子生物学的研究を行った。特に、Eulimnogammarus cyaneusについては、アイソザイムによって地域特殊性が顕著に見られ、本種の分化とバイカル湖の形成過程との関連性が議論された。ドイツのベルリン自然史博物館およびハンブルグ大学自然史博物館に保管されているヨコエビ類の規準標本とバイカル湖で採集した標本を比較し、分類学的再検討を行った。 (3)バイカル湖内で多様に分化したカジカ類の進化系統に関する比較解剖、生活史、および分子生物学的研究を行った。特に、カジカ上科の骨格や筋肉系の比較形態的研究により系統樹の再構築を試行した。ロシアのサントペテルブルグ動物学研究所およびフランスのパリ自然史博物館に保管されているカジカ類の規準標本とバイカル湖で採集した標本との比較し、分類学的再検討を行った。現在、mtDNA塩基配列に関する研究を実施中である。 (4)シギ類などのように南方地方とシベリアの間を回遊する渡り鳥を対象として、その体内に蓄積している有機塩素系化合物を分析し、環境汚染の状況を推定すると同時に、生物影響に関して基礎的な情報を収集した。 (5)炭素・窒素同位体比を用いたバイカル湖沿岸域の生態系における物質環境に関する研究を行った。特に、プランクトンからヨコエビ、カジカ、アザラシに至る物質の流れを調査した。バイカル湖における食物連鎖の関係を、胃内容物解析によって得られる「食う-食われる」の関係のみならず、安定同位体比を用いた新しい方法によって再検討した。この手法は、日本の研究チームがバイカル湖に新しく導入したもので、その成果が期待されている。 (6)バイカルアザラシ、ワモンアザラシ、カスピカイアザラシの進化系統に関する形態および分子生物学的研究を行った。頭骨の形態的調査から、バイカルアザラシは、カスピカイアザラシよりもワモンアザラシに近縁であることが明らかになった。この関係は、mtDNAの塩基配列の比較研究からも指示された。北極海沿岸に広く分布しているワモンアザラシの地理的変異幅を把握するために、米国のハーバード大学自然史博物館、アラスカ大学自然史博物館、フィンランド自然史博物館、スエ-デン自然史博物館、日本の科学博物館に保管されているワモンアザラシの頭骨標本と北極海のデイクソンで採集したワモンアザラシの頭骨を用いて、比較研究を行った。 (7)バイカル湖に生息しているバイカルアザラシ、カスピ海に生息しているカスピカイアザラシ、北極海に生息しているワモンアザラシに蓄積している有機塩素系化合物(PCB,DDT,BHCなど)や重金属類(水銀、カドミウム、鉛など)を分析すると同時に、大気、水、底質、餌生物などに存在するこれらの化学物質を分析した。バイカル湖は、透明度は世界有数の湖にも関わらず化学物質による汚染は予想以上に悪化しており、深刻な海洋汚染に直面しているバルテイック海にも匹敵することが明らかになった。 上記の研究成果は、原著論文41編、著書5編、報告書7編として公表されると同時に、学術講演(44回)として発表された。
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