研究課題/領域番号 |
07041140
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
渡辺 邦秋 神戸大学, 理学部, 教授 (80031376)
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研究分担者 |
西野 貴子 大阪府立大, 総合科学部, 助手 (20264822)
小菅 桂子 神戸大学, 理学部, 助手 (50215266)
伊藤 元巳 千葉大学, 理学部, 助教授 (00193524)
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
5,600千円 (直接経費: 5,600千円)
1995年度: 5,600千円 (直接経費: 5,600千円)
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キーワード | オーストラリア / キク科 / 半砂漠 / 適応 / 分子系統学 / 塩基配列 / 染色体数 / アロザイム数 / breeding system |
研究概要 |
1995年10月8日から11月12日まで35日間、南オーストラリア州と西オーストラリア州の乾燥地域で、また、1996年1月29日から2月18日までの20日間、ニューサウスウェールズ州とビクトリア州の高山地帯で、キク科のハハコグサ連およびシオン連植物550集団のサンプルを採集し、現地を調査した。乾燥標本は、National Herbarium of Victoria,採集した各州の標本館および東大の標本庫(研究が終わるまで神戸大の標本庫に保管)に各一部ずつ収めるため、全て3部を作成した。若いつぼみが採集できるものは減数分裂観察用に固定し、若い葉はDNA採取用に密封してシリカゲル乾燥させ、成熱種子ができているものでは採集し乾燥させた。現地の標本館に寄贈する乾燥標本を除き、これら全ての採集品を日本に持ち帰り、現在、以下の解析に取りかかっている。 シオン連の染色体数は、9属100種200集団で決定できた。Brachyscome属(n=15から2)とCalotis属(n=8から4)では、東オーストラリアから中央オーストラリアにかけて、著しい染色体数の変化がみられ、いずれの属でも高染色体数をもつものは、多年草で湿潤な生育地に、少数染色体数をもつものは1年草で乾燥地域に生じていた。残りの属は、Erodiophyllum属(多年草、n=8)を除き、全てx=9にもとづく2倍体か倍数体で、オーストラリア産シオン連もx=9の染色体基本数をもつことが強く示唆され、乾燥地域への適応や分布域の拡大に伴って、染色体数の減少がおきていることが示された。 ハハコグサ連の染色体数は、23属50種で分析が終わったが、オーストラリア大陸以外では、x=7で、全く異種性の報告がないにもかかわらず、Podolepis属でn=12から3まで、Pogonolepis属でn=6から4まで、Rhodanthe属でn=11から5まで、Tricanthodium属でn=4と3など、多数の属でシオン連のBrachyscome属やCalotis属でみられたのと同様の著しい異数性が西オーストラリアでみつかった。これらの染色体数や諸形質の変化の方向性を明らかにするため、葉緑体DNAの制限酵素断片長変異にもとづく分子系統樹の作製と葉緑体遺伝子mat Kの塩基配列の比較にもとづく分子系統樹の作成にとりかかっている。シオン連のBrachyscomeについては、葉緑体DNAの制限酵素断片長変異をSolenogyne dominiiを外群に31分類群で、葉緑体mat K遺伝子については、オーストラリア産シオン連7属から各1種とBrachyscome属50分類群で塩基配列を決定し、それぞれ分子系統樹を構築した。2つの分子系統樹はほぼ一致し、Brachyscome属は単系群であること。これまでBrachyscome属は、2つの亜属に分けられていたがその亜属のメンバーが入りまじることはなく、各亜属が2つずつ、合計4つのクラスターに大きくわかれることが明らかになった。この4つのクラスターは、やくの先端部の形態、めしべの柱頭部の形態、地理的分布、染色体数の変異パターンの違いによっても支持される。各亜属は主に果実形態に基づいて、11のsuperspeciesに分類されていたが、このグル-ピングは分子系統樹では支持されず、果実形態では単純から複雑な構造をもつものへの平行進化がおきていることが示唆された。果実の構造を複雑にしている翼やふくらんだスポンジ状の突出物、長い絹毛等は、種子散布を効果的に行う適応的な変化とみなされる。また染色体数の変化は、Brachyscome亜属の2つのクラスター内のいくつかの系統で減数的変化が平行して生じていることが示された。アイソザイムによる遺伝子数の調査は、染色体数が異なるn=9とn=4の群で比較を行っているが、現在までのところn=4をもつBrachyscome dentataでの解析が終わったところである。生殖様式については、ハハコグサ連、シオン連の10属20種でP/O ratioの調査を行った。Brachyscome属の亜属を分ける形質として、やくの付属体の有無があげられていたが、付属体が有りとされていたBrachyscome亜属のB.breviscaoisでは、付属体が矮小化していることがあきらかになった。この種では、P/O ratioが極端に小さく他殖から自殖への変化が付属体の矮小化をひきおこしていることが示唆された。
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