研究課題/領域番号 |
07041148
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
田名部 雄一 麻布大学, 獣医学部, 教授 (30021679)
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研究分担者 |
DASHNYAM B. モンゴル科学アカデミー, 生物工学研究所, 副所長
TUMENNASAN H モンゴル科学アカデミー, 一般および実験研究所・遺伝部, 部長
針原 伸二 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (40198932)
越本 知大 新技術事業団, 科学技術研究所, 特別研究員
角田 健司 昭和大学, 医学部, 助教授 (40095906)
前田 芳實 鹿児島大学, 農学部, 教授 (50041661)
野澤 謙 中京大学, 教養部, 教授 (40023387)
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
5,600千円 (直接経費: 5,600千円)
1995年度: 5,600千円 (直接経費: 5,600千円)
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キーワード | モンゴル国 / イヌ / 血液タンパク質多型 / ウマ / ウシ / ヒツジ / ニワトリ / ブリヤ-ト人 / protein polymorphisms |
研究概要 |
我々は、モンゴル科学アカデミーの一般および実験生物学研究所(Ts.ザンチェフ所長、H.ツメナサン遺伝研究部長、他)および同、生物工学研究所(B.ダシュニヤム副所長、T.オユンスレン分子遺伝研究室長他)と協力して、モンゴル在来のイヌ、ニワトリ、モンゴル東北部に居住するウマ、ウシ、ヒツジ、フタコブラクダ並びにヒト(特にブリヤ-ト人)の遺伝学的調査を行なった。調査の手法は、外部形質(毛色、羽毛色ほか)を支配する遺伝子の調査と、採取した血液を用いる血液タンパク質の多型を支配する遺伝子の調査である。 モンゴル現地における調査・研究の実施日程および状況は次の通りである。実施日程は当初8月3日のモンゴル、ウランバートル行きの航空便の予約をしていたが、運行上の都合で、出発が1日遅れた。従ってモンゴルの滞在日数が、当初予定の24泊25日から、23日24日と1日短縮された。8月5日にはモンゴル科学アカデミーにおいて、調査研究実施計画の細目の打ち合せを行った。また、モンゴル国内の調査旅行に必要な研究資材の箱詰めを行なった。また、モンゴル滞在期間中に、日本側の本研究の代表者および分担者は、モンゴル科学アカデミーのスタッフならびに大学院生を対象する英語によるセミナーを3回行なった。8月7日の第1回セミナーでは、田名部、野沢、越本が担当し、それぞれアジアのイヌ、ウマ、ラクダの遺伝子分析についておこなった。8月10日の第2回セミナーは針原が担当し、8月24日の第3回セミナーは角田、前田、田名部が担当した。現地調査は、田名部、越本、トゥメナッサンは、8月8日に自動車で北モンゴルのスフバ-トルに向けて出発し、8月9〜10の両日、農家においてモンゴル在来鶏100羽について外部形質調査と採血を行ない8月11日にウランバートルに帰着した。野沢、前田、角田、ザンチフは、8月11日より8月17日までモンゴル中部のハラホリンにおいて、それぞれ100頭づつのウマ、ヒツジ、およびヒツジについて外部形態調査と採血を行なった。針原とダシュニヤムは、8月14日から8月20日までモンゴル東北部のダシュバルバル近郊でブリヤ-ト族の人類学的調査と200名からの血液採取を行なった。田名部、西薗、トゥメナッサンは、8月14日から8月18日まで、モンゴル中部のジョルガルトハーン近郊で在来犬200頭の外部形態調査と採血を行なった。8月21日にはウランバートル国有サーカス団において、8頭のモンゴルオオカミの外部形態調査と採血を行なった。越本とムンクトヤ-は、8月18日より8月22日まで、モンゴル西南部のゴビアルタイ近郊でフタコブラクダの外部形態調査と100頭からの採血を行なった。上記の調査の研究成果については、平成8年3月27〜18日に名古屋大学で行なわれる第91回日本畜産学会大会において、田名部、横山、野沢、角田の4名により発表予定である。以下に現在まで得られた成果について述べる。 1.モンゴル在来犬は、日本犬を含む東北アジア犬に高い頻度で見出されるヘモグロビンA遺伝子(Hb^A)が0.995の高い頻度を示した。またガングリオシドモノオキシゲナーゼg遺伝子(Gno^E)も0.109とかなり高い頻度で認められた。Hb^AとGno^Eの2つの遺伝子は、ヨーロッパオオカミやインドオオカミには認められないが、モンゴルオオカミには見出された。従って、日本犬を含む東北アジアのイヌの祖先の成立には、東北アジアのオオカミが関与している可能性が強い。2.モンゴルの5ヵ所で、5系統の各100頭の在来馬の血液を調べたところ、系統間の遺伝子頻度の差は少なく、分化していないことがわかった。またモンゴル在来馬は、日本、韓国、東南アジアの在来馬に見出されるあらゆるタンパク質多型遺伝子が見出されるので、これらのウマの共通祖先である可能性が高い。3.モンゴル在来鶏の羽毛色の多型を支配する遺伝子は多様で、東南アジア在来鶏のものとかなり異なっていた。また日本鶏に見出される遺伝子はすべて見出されている。血液タンパク質の多型を調べたところ、アジア鶏種で高く西洋鶏では低いAkp-2^8遺伝子の頻度が高く、アジア起源のニワトリであると考えられる。4.モンゴル在来ヒツジの血液タンパク質の多型を調べると、変異が大きく、遺伝的距離は中国の雲南羊と近く、ネパールのバルワール羊やバヤンラング羊(どちらもチベット系)とは遠く、インド系のバングラディシュ羊、カギ羊とは比較的近い関係が認められた。
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