研究分担者 |
チェー ホーズン 米国NIH, 研究員
パク サムチュル ソウル大学, 教授
ストルツ ギゼラ 米国NIH, 上級研究員
カリン マイケル カリフォルニア大学, サンディエゴ校・医学部, 教授
チュルツ トーマス グスタブ, ルシー研究所, 教授
口野 嘉幸 国立ガンセンター研究所, 部長 (60124418)
山本 健一 金沢大学, がん研究所, 教授 (60115285)
豊國 伸哉 (豊国 伸哉) 京都大学, 医学研究科, 講師 (90252460)
佐邊 壽孝 京都大学, ウイルス研究所, 助教授 (40187282)
CHAE Ho Zoon National Institute of Health, Investigator
PARK Sang Chul University of Soul, Professor
STORZ Gisela National Institute of Health, Senior Investigator
KARIN Michael University of California, Sandiego, Professor
TURSZ Thomas Institut Gustave Roussy, France President
チュルソ トーマス グスタブ, ルシー研究所, 教授
コルスマイヤー スタンレ ワシントン大学, 病理学, 教授
チュルツ トマス グスタブルーシー研究所, 内科, 教授
キン ユン 米国NIH, 研究員
キャンビア ジョン ナショナルジューイッシュセンター, 免疫・呼吸器医学基礎科学部, 部長
花房 秀三郎 ロックフェラー大学, 分子腫瘍学, 教授
|
研究概要 |
文部省科学研究費・国際学術研究調査(平成3〜4年・ウイルス疾患でのADF/チオール依存性細胞活性化機構に関する学術調査研究;淀井淳司 代表者)は、レドックス研究の交流の基礎となった。本国際学術研究調査は、その研究調査を更に発展させてHo Zoon Chae(KOREA)、Michael Karin(USA)らを研究分担者として加え、レドックス制御とシグナル伝達機構に関する研究交流を行った。 生体におけるレドックス制御とは、酸化還元に基づく蛋白質システイン残基上のチオール基の可逆的構造変化により、種々の細胞機能を制御することと説明できる。淀井らが報告したHTLV-I感染細胞の産生するATL-derived factor(ADF)は、システイン(Cys)のSH基を介して強い還元活性を示すthioredoxin(TRX)のヒトホモローグである。このADF/TRXは、グルタチオン系と共に細胞内のレドックス制御に関わる抗酸化ストレス因子である。今年度の交流の成果として1)TRX遺伝子のTargetingを行った結果、TRX遺伝子をヘテロに欠損している個体は正常であったが、ホモに欠損している個体は着床後すぐに死亡した。TRX遺伝子はマウス胎仔の早期分化および形態形成に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。2)TRX遺伝子のプロモーター部位の解析を行い、新たに、酸化ストレスに応答する遺伝子配列を同定した。3)遺伝子転写のレドックス制御については、淀井、山本らによるNFκBおよびAP1などの転写因子活性化に、TRXやRef-1/APEX蛋白などのレドックス制御蛋白が、重要な制御的働きをすることが明らかになっている。さらにRef-1がTRXに結合し、AP-1転写活性への役割を新たに明らかとした。ステロイドホルモンなどの核内レセプター群の細胞質・核内移行と遺伝子活性化調節にも、TRXの関与するレドックス制御機構の役割が重要と考えられた(田中らとの共同研究)。転写制御因子PEBP-2の活性化にもレドックス制御が関与することが明らかになった(重定らとの共同研究、投稿準備中)。4)抗酸化機能をもつペルオキシダーゼ活性をもつ新しいタンパク質ファミリーが近年見い出されてきた。Chae,PaakによりTRX依存性peroxidase(peroxiredoxin)や、一部のGSH peroxidaseがTRXによって活性化されることも報告され、抗酸化ストレス機構の解明が進んでいる。今後さらにレドックス関連分子の分子機構および情報伝達における役割を解析する必要がある。 レドックス制御は、分子の酸化(酸化ストレス)を契機とするストレス応答反応とも捉えることができるため、レドックス制御と酸化ストレスは表裏一体の関係にある。酸化ストレスに対する防御分子が生体内レドックスセンサー機構としての役割も積極的に担うことが現在明らかにされつつある。酸化ストレスは細胞のレドックスセンサー機構によって認知され、その一部は生体にとって有用なシグナル応答へと変換される。既知のリン酸化によるシグナル伝達経路とクロストークを行っていることなどが相次いで報告された。わが国では淀井などが、リンパ球への酸化ストレスが細胞膜のチロシンキナーゼの活性化につながり、それぞれ正・負のシグナル伝達に関わることを明らかにしたが、海外ではMAP kinaseやtyrosine kinaseのレドックス制御機構は、Karin,らによって進展している。また、山本によりp53の酸化ストレスによる活性化機構の解析がなされた。今後レドックスセンサー機構をさらに解析することが必要である。レドックス制御異常は、エイズ・ATL・肝炎ウイルス感染症など、種々のウイルス感染での細胞死・異常増殖に関係している。豊國らは鉄による酸化ストレス下のレドックス制御不全状態で過酸化脂質蛋白複合体が生体内で生じていることを明らかにし、鉄による発癌に関する研究を展開した。レドックス制御異常による不可逆的酸化ストレスは病態形成に関与することが考えられ、今後様々な病態での解析が必要と思われる。
|