研究課題/領域番号 |
07041161
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
堀田 博 神戸大学, 医学部, 教授 (40116249)
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研究分担者 |
BARZAGA Nina フィリピン大学, 公衆衛生学部, 助教授
APICHARTPIYA シー チェンマイ大学, 医学部, 講師
SOETJIPTO アイルランガ大学, 医学部, 講師
片山 友子 神戸大学, 医学部, 助手 (10224461)
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1995年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | C型肝炎ウィルス / 分子疫学 / サブタイプ / 変異株 / 東南アジア |
研究概要 |
1.タイにおけるC型肝炎ウイルス (HCV) の遺伝子解析 1) タイ北部地域 (チェンマイ) 慢性肝炎、肝硬変および原発性肝癌患者の血清のうち抗HCV抗体陽性のものについて、RT-PCR法によりHCV遺伝子NS5B領域の増幅を試みた。これらの増幅遺伝子断片の塩基配列を決定し、既報のHCVサブタイプの塩基配列と比較することにより、それぞれの分離株のサブタイプ分類を行った。 慢性肝炎患者ではHCV-3aとHCV-1aが最も多く (それぞれ20%)、次いでHCV-1b (16%) が第3位であった。既報のサブタイプに分類できない変異株が1株みられた。肝硬変患者ではHCV-3a (44%) が最も多く、ついで、、HCV-1a (19%)、HCV-1b (19%)、HCV-3b (6%) の順であった。原発性肝癌患者ではHCV-1a (40%) とHCV-3a (20%) が検出されたが、解析した検体数が少なく、他の患者グループとの比較はできなかった。 既報のサブタイプに分類できない変異株については、タイの健常供血者や薬物中毒患者から得られた類似の株およびベトナム、中国南部で見い出された変異株も含めて詳細な分子系統樹解析を行ったところ、それらは、HCVタイプ6の新しいサブタイプ (10種類以上) に分類されることがわかった。 2) タイ南部地域 (ハジャイ) 健常供血者および慢性肝疾患の血清のうち抗HCV抗体陽性のもの78検体について、上記と同様の方法でHCVのサブタイプ解析を行った。現在約1/3の検体についてサブタイプを決定し、他のものについては解析を継続中である。 2.インドネシアにおけるHCVの遺伝子解析 東部ジャワ地方 (スラバヤ) の健常供血者、血液透析患者および原発性肝癌患者の血清のうち抗HCV抗体陽性のものについて、上記タイの場合と同様の方法で、HCVの遺伝子解析を行った。健常供血者ではHCV-2aが最も多く (52%)、次いでHCV-1b (15%)、HCV-1a (7%)、HCV-1d (7%)、HCV-3g (4%) の順であった。HCV-3gは、HCV-1dについでこの地域で見い出された新しいサブタイプのHCVである。血液透析患者ではHCV-1aとHCV-1bが最も多く (それぞれ31%)、他にHCV-2a (9%) とHCV-1b (3%) が少数みられた。原発性肝癌患者ではHCV-1b (57%) が最も多く、次いでHCV-1d (19%)、HCV-2a (5%) の順であった。 フィリピンにおけるHCVの遺伝子解析 1) HCV遺伝子の解析 マニラ地域の健常供血者および受刑者より得られた抗HCV抗体陽性血清について、HCV遺伝子解析を行った。健常者供血者ではHCV-1b (50%) が最も多く、ついでHCV-1a (31%)、HCV-2a (6%) の順であった。一方、受刑者においてはHCV-1a (68%) が最も多く、HCV-1b (11%)、HCV-2a (5%)、HCV-2b (5%) の順であり、HCV-1bの保有率が健常者に比べ有意に低かった。タイに多いHCV-3aやインドネシアに特有のHCV-1dはフィリピンでは検出されなかった。 4.考察 東南アジアにおけるHCVサブタイプ分布状況は、地域により特有のものであることが明確になった。 1) タイ、ベトナム、中国南部等アジア大陸東南端にはHCVタイプ6に属する多くのサブタイプが存在することがわかった。また、この地域にはHCVタイプ3 (特にHCV-3a) に属するHCVも同時に多くみられた。 2) インドネシアの慢性肝疾患患者においてはHCV-1bとインドネシア特有のHCV-1dが多く存在することがわかった。一方、健常供血者および血液透析患者においては、そのサブタイプ分布状況が変動しつつある時期であると考えられた。この点について詳細な解析を継続することはHCVの伝播様式を明らかにするうえで重要であると思われる。 3)フィリピンにおいてはHCV-1aとHCV-1bが大多数を占め、タイやインドネシアの分布状況とは明確に異なっていた。
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