研究課題/領域番号 |
07041163
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
續 輝久 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教授 (40155429)
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研究分担者 |
SINGH Shanti イースイースタン医科大学, 準教授
KETUDAT Puns スリナカリンウイロート大学, 理学部, 助教授
安 泳謙 延世大学校原州医科大学, 教授
李 得垣 中国医科大学, 教授
寺崎 邦生 聖マリア学院短期大学, 教授 (80078675)
柴原 壽行 鳥取大学, 医学部, 助教授 (70116937)
肥後 廣夫 九州大学, 医学部, 助手 (80117225)
川島 健治郎 九州大学, 医療技術短期大学部, 名誉教授 (30038690)
AHN Yung-kyum Wonju College of Medicine, Yonsei University
LI Deyuan China Medical University
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
6,400千円 (直接経費: 6,400千円)
1995年度: 6,400千円 (直接経費: 6,400千円)
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キーワード | Paragonimus / Bionomics / Genetic variation / Speciation / Karyotype analysis / Isozyme analysis / DNA Analysis / Asia |
研究概要 |
本研究はアジアに広く分布するウエステルマン肺吸虫群 Paragonimus westermani Complex(以下:ウ肺吸虫と略)の遺伝的変異、種分化の過程を明らかにする中で、1.本邦産ウ肺吸虫3倍体の起源を明らかにすること、2.ウ肺吸虫の原記載に一致する集団を特定することなどを主な目的とする。そのため平成7年度において以下の研究を行った。 1.に関連しては、1995年8月7日から21日までの間、中国東北部・遼寧省寛旬県において調査研究を行った。採集したザリガニCambaroides dauricus約3、000個体から、約3、000個体の肺吸虫幼虫を得た。これらを幼虫の大きさから大型、中型および小型の3型に種別して、イヌ、ネコおよびラットに感染させ、現在までに約300個体の成虫を回収した。これらは総てウ肺吸虫と同定された。これまでの染色体の観察から、2倍体、3倍体のほか、少数ながら4倍体の虫が見いだされた。同地域産の3倍体は、動物に対する感染性や、アイソザイムパターンなどから見て、本邦産3倍体に酷似していた。しかし、同地域産の2倍体では、本邦産の2倍体が単一なアイソザイムパターンを示すのに対して、極めて多様性を示すばかりでなく、本邦産3倍体にみられる特有遺伝子が高率に見いだされた。この事実は、この地域産のウ肺吸虫にある集団が、本邦産同肺吸虫3倍体の形成に深く関与していることを示すものと考えられた。、また、4倍体に関する研究では、2倍体と3倍体との間で形成されたものと推定されたが、それが自然界で発育史をくりかえしているのか否か、また、4倍体感染の人体症例があるのかなどについては不明である。 2.に関連しては、1995年10月15日から11月2日の間、インド東北部・マニプール州において調査研究を行った。採集したカニ Potamiscus manipurensis239個体から、97個体の肺吸虫幼虫を得た。これらは、westermani(ウ肺吸虫)型、bangokokensis型、heterotremus型および従来記載のない型など4型に分類された。これらは、それぞれ類別して、イヌ、ネコ、ラットおよびフェレット(heterotremus型)に感染させ、その一部から成虫を得つつあるが、現在までのところ、ウ肺吸虫と同定出来るものは見いだされていない。総ての成虫が得られた段階において、詳細な研究を行うが、同地域で流行する肺吸虫症は複数種の病原虫が関与しているものと推定された。 3.その他の地域としては、1996年2月6日から22日までの間、タイ南部ナコンシータマラート近辺の山中において調査研究を行った。採集したカニは、Demanietta manii,Salangathelphusa brevicarinataおよびPhricotelphusa aedesの3種であったが、第3種の約300個体から、約300個体の肺吸虫を得た。現在これらは、イヌ、ネコおよびラットに感染させ成虫成熟期まで観察中であるが、幼虫の形態からは、少数のウ肺吸虫型と多数のウ肺吸虫の変種と推定出来るのもが認められた。 これまでの我々の研究を総合すると、アジアに広く分布し肺吸虫症の重要な病原虫と考えられるウ肺吸虫は単一なものでなく、極めて多様性に富むことが明らかとなった。本邦産の虫は、東アジア産、ことに中国東北部産の虫と遺伝的に見て極めて近い関係にあるが、東南アジア産のものとは極めて遠い関係にあることが判明した. 今回、本研究が、単年度で採択されたため、本年度は、アジアの広域で、これまで調査が不十分であった地域、すなはち、中国、インドおよびタイ三国の、本研究で最も重要と考えられる地域を選び、集中的な調査研究と材料の収集に重点をおいた。これまで各地で、淡水産のカニ、またはザリガニから多数の肺吸虫幼虫を回収し、現在、実験動物に感染、観察中である。そのうち、得られた一部の成虫については、従来からの形態学的研究のほか、細胞遺伝学的集団遺伝学的研究を行い、上記のとおり極めて重要な知見を得たが、DNA分析など、さらに詳細な研究は、すべての成虫が得られた時点で開始するよう準備を進めているところである。
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