研究分担者 |
河合 祥雄 順天堂大学, 医学部, 講師 (40138194)
SAMAISUKH So マヒドン大学, 理学部, 助教授
JUTAMAAD Sat マヒドン大学, 理学部, 助教授
PAWINEE Piya マヒドン大学, 理学部, 講師
CHUMPOL Phol マヒドン大学, 理学部, 助教授
SUMALEE Nimm マヒドン大学, 医学部, 教授
千葉 百子 順天堂大学, 医学部, 助教授 (80095819)
小松 康宏 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (60195849)
稲葉 裕 順天堂大学, 医学部, 教授 (30010094)
五十嵐 隆 東京大学, 医学部, 講師 (70151256)
SAMAISUKUH Sophasan Department of Physiology, Faculty of Science, Mahidol University
JUTAMAAD Satayavivad Department of Pharmacology, Faculty of Science, Mahidol University
PAWINEE Piyachaturawat Department of Physiology, Faculty of Science, Mahidol University
SUMALEE Nimmannit Department of Medicine, Faculty of Medicine, Mahidol University
SAMAISUKH S マヒドン大学, 理学部, 助教授
JUTAMAAD Sa マヒドン大学, 理学部, 助教授
PAWINEE Piy マヒドン大学, 理学部, 講師
CHUMPOL Pho マヒドン大学, 理学部, 助教授
SUMALEE Nim マヒドン大学, 医学部, 教授
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研究概要 |
タイ東北地方出身の青壮年男性に多発する突然死に関連すると思われる風土病(遠位尿細管性アントーシス、低カリウム性周期性四肢麻痺、尿路結石症など)の原因解明を目指して、先天性及び後天性要因の関与を想定したフィールドワークと実験室での動物モデル作成を試みた。 1、フィールドワーク 1)風土病の実態 タイ東北部のYasothorn地区及びKhon Kaen周辺の農民を対象として過去に突然死の発症を認めた家族の訪問と聞き取り調査を行うと共に、Khon Kaen大学の臨床医からは各村長に突然死の発症に関するアンケート調査も企画された。一部住民からは血液や尿、生活水並びに農地の土壌試料等を採取した。他方、東北地区住民と対照としてバンコク住民の血液と尿を採取してバナジウム(V)を初めとする諸種元素の分析に供した。 突然死は殆どが青壮年男性であったが、女性の症例も報告された。死後の解剖が普及していないので、病理診断による確認が得られていない。従って、最も基本的な問題点は突然死の診断基準を明確にすること、病理解剖所見を必要とすること、など将来への教訓が得られた。風土病の男女比についても疾患による不一致が明らかで、個別の疾患毎の追求も考慮の余地が残された。 1)先天性(遺伝子)要因について 病態を示す用語の定義が臨床像と可成の不統一のために、同一家系内多発を予測することは頗る困難であった。但し突然死の発症病像には各症例共通の様子を伺うことができたので、一部採取できた血液よりDNAを抽出した。突然死が心臓内の刺激伝導障害を伴うことを想定して、家族性QT延長症候群の遺伝子解析のプロジェクトと共同の作業を追求中である。なお、性差を考慮したX染色体異常を考えたモノアミンオキシダーゼのアイソザイムの解析についてもタイ側の研究者と共同の作業を実施中である。 2)後天性要因について 採取した試料に含まれる43種類の元素量を原子吸光とMIP-MSで定量した。水中のVを含む多くの元素含量は東北地区(NE)とバンコク(BK)の間に差はなく、土壌中Ca,Mg,K,PbはBKが高く、NaがNEで高値を示した。住民の血漿中と尿中のVはNEの方がBKに比し有意に低く、Kは赤血球中でNEがBKより高く、血漿中と尿中はNEがBKより有意の低値を示した。従ってNEの男性住民は細胞外の低K状態下で細胞内にKを積極的に取り組む機構が高く、風土病はこの機構の減弱により惹起されるものと推察される。この考え方を裏付ける臨床成績がタイの研究者から報告されており、突然死の引き金が問題とされた。Vは一見否定的要因となるが、死亡した症例でのVの分析結果が無いので肯定的にも又否定的にも結論は出し難い。Vも含めた体内でのNa^+,K^+-ATPase等のポンプ活性を抑制する物質の摂取ないし体内産生が、元来低いK血症下のNEの住民の細胞外Kを致死的濃度までに低下させることによる突然死発症の可能性は十分に考えられる。これらの抑制物質の特定が本風土病の原因解明にとって最も重要なものの一つと考えられる。 2、動物モデルでの検討 1)突然死の動物モデル 風土病では血漿中のKが低下するので、長期に亘りラットに低カリウム食を与え、低K血漿モデル動物を作成した。心機能、腎機能の変化に伴ない、体内電解質バランスが崩れ、風土病に類似の臨床像を呈するものの、低K単独での突然死は認められず、低Mg食を同時に投与し、ストレス(高音)を加えると、ラットは死亡した。 2)突然死の動物モデルの性差 マウスを用いて同様の低Kと低Mg食を一週間投与する実験を行った結果、雄性のマウスの死亡は多く認められたが、雌性は死亡例がなかった。性ホルモンの関与が強く示唆された。 3)低K血漿モデルにおける腎内変化 慢性的に低K血漿を惹起させたラットの腎より単一ネフロンを採取し、H^+,K^+-ATPaseの活性を測定した結果、皮質及び髄質外層集合管の酵素の誘導が顕著であった。特に雄性の方がその誘導率が高値であった。 4)バナジウムの影響に関する検討 腎より単一ネフロンを採取し、Na^+,K^+-ATPase,H^+,K^+-ATPase,H^+-ATPaseの活性を測定した結果、バナジウムは何れの酵素活性をも低下させた。従って、Vの過剰摂取が生ずれば、細胞内の電解質バランスが大きく崩れ、風土病の発症が予想される。
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