研究課題/領域番号 |
07042002
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | がん調査 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平井 久丸 東京大学, 医学部(病), 講師 (90181130)
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研究分担者 |
平野 直人 東京大学, 医学部(病), 医員
WITTE Owen UCLA, 医学部, 教授
上野 博夫 東京大学, 医学部(病), 医員
黒川 峰夫 東京大学, 医学部(病), 医員
小川 誠司 東京大学, 医学部(病), 医員
田中 智之 東京大学, 医学部(病), 助手 (50227154)
花園 豊 東京大学, 医学部(病), 助手 (70251246)
三谷 絹子 東京大学, 医学部(病), 助手 (50251244)
QWEN Witte UCLA・professor
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
5,700千円 (直接経費: 5,700千円)
1995年度: 5,700千円 (直接経費: 5,700千円)
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キーワード | 慢性骨髄性白血病 / 急性転化 / Evi-1遺伝子 / 細胞周期 / p16INK4A遺伝子 / p53遺伝子 / RB蛋白質 / 癌抑制遺伝子 |
研究概要 |
1.研究の背景と目的 慢性骨髄性白血病(CML)の特徴は、病初期の慢性期の後、多くは3年以内に急性転化と呼ばれる病像が出現し、二相性の経過を示すことである。急性転化を起こすと予後は極めて不良であるため、患者の予後を直接に左右することになる。従ってこの急性転化のメカニズムを分子生物学的に解明することはCMLの病態を理解し、治療に反映させる上で重要な課題の一つである。近年、この急性転化の分子機構について日本と欧米での相違が議論されているため、本研究においてはその差異の有無を明らかにすることを目的とする。 2.対象および方法 CML慢性期あるいは急性転化期の患者よりInformed consentを得た後、血液を採取して血液細胞を分離する。血液細胞から、DNA、RNAを抽出し、血液細胞が量的に可能であれば、蛋白も抽出する。p53遺伝子の解析はSouthern法、SSCP/PCR法、Direct sequence法によって、遺伝子の欠失、微小変異の有無を解析する。p16(CDKN2)については、主たる変異が欠失であるためSouthern法によって解析を行う。RBについては蛋白質の発現の有無について、Western法により検討する。EVI-1にいては、可能な場合にはNorthern法で解析を行うが、RNAの量的あるいは質的な問題がある場合にはPCR法によって発現の有無を調べる。染色体転座によって、キメラ遺伝子を生じている場合には、分子生物学的手法によって、遺伝子クローニングも行い、急性転化原因遺伝子の詳細な解析を行う。特に、最近我々が見出したt(3;21)転座におけるAML1/EVI-1の形成はCMLの急性転化の分子機構として注目に値するものであり、その解析も合わせて行う。 3.研究成果 (1)p53遺伝子の解析 表に示すように、日米いずれにおいてもCML急性転化におけるp53遺伝子の変異頻度は高く、日本で27%、米国で20%であった(有意差なし)。わが国では lymphoid crisis 症例に2例変異が見出されたが、米国ではlymphoid crisis症例にはp53遺伝子の変異は見出されなかった。 (2)p16遺伝子の解析 変異様式はいずれもhomozygou deletionであった。p16遺伝子の欠失頻度は、日本で9%、米国で15%であり(有意差なし)、いずれも急性転化症例のみに見出された。 (3)RB蛋白質の解析 RB蛋白質の発現の消失は、日本で18%、米国で14%であった(有意差なし)。RB蛋白質の発現の消失も急性転化症例のみに見出された。 (4)EVI-1遺伝子の発現 ectopicなEVI-1遺伝子の発現は、急性転化症例のみに見出され、その頻度は日本で48%、米国で40%であった(有意差なし)。 (5)t(3;21)におけるキメラ遺伝子の形成 日本の症例では、いずれもAML1/EVI-1が検出されたが、米国ではAML1/EVI-1の他、AML1/EAP、AML1/MDS1/EAPも検出された。 4.考察 以上の結果より、CML急性転化の分子機構は多様であり、特に細胞周期関連遺伝子(p53,p16,RB)が急性転化に深く関わっていることが明らかになった。また、CML急性転化時にはinv(3)、t(3;3)、t(3;21)など、3q26部位の転座を伴う場合が多く、我々が明らかにしているように、これらの機序としてEVI-1遺伝子の造血細胞でのectopicな発現が重要である。また、今回の検討によって、3q26部位の転座を伴わなくても、EVI-1遺伝子の発現がCML急性転化時に高頻度に認められることも明らかになった。この分子生物学機序は現在のところ不明であるが、恐らくはtransに働く因子が関与しているものと推定される。日米間の差異については、細胞周期関連遺伝子およびEVI-1遺伝子の発現、いずれにおいても有意差は見出し得なかった。しかしながら、t(3;21)において形成されるキメラ遺伝子に違いがあり、この点につていはさらに検討が必要であると思われる。
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