研究課題/領域番号 |
07044012
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 中京女子大学 |
研究代表者 |
朱 捷 中京女子大学, 人文学部, 助教授 (40235700)
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研究分担者 |
沈 恩明 上海社会科学院, 哲学研究所, 助理研究員
孫 景尭 蘇州大学, 比較文学センター, 教授
SUN Chao Fen スタンフォード大学, アジア言語学科, 助教授
早川 聞多 国際日本文化研究センター, 助教授 (10208605)
SUN Jingyao Suzhou University
FALKENHAUSEN Lothar V University of California Los Angeles
SHEN Enming Shanghai Academy of Social Sciences
孫 景堯 蘇州大学, 比較文学センター, 教授
LOTHAR v Fal カリフォルニア大学, ロサンゼルス校(UCLA)芸術史学科, 助教授
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1996年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1995年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 儺(ついな) / 貴州 / 巫術 / 芸能パフォーマンス / 仮面 / 治癒 / 彝族 / シャーマン |
研究概要 |
儺(ついな)がいまでも生きている貴州の山村において、個々の人または集団が病気に見舞われ、物理的な身体が異常をきたしたときに、儺の巫術と芸能パフォーマンスが治癒にどんな役割をいかにはたすかを解明するために、学際的な総合調理を通して基礎的な生きたデータ(映像、文献、伝承記録、実物など)を、実地調査で収集するのが本研究の主な目的である。 平成7年度は、おもに貴州の盤県と安順地区にて調査を行った。 盤県では、山奥に住む多くの儺師(シャーマン)に面会調査をおこない、治癒現場における儺師たちのパフォーマンスを録画し、数多くの貴重な映像および音声データーを手に入れることができた。盤県での調査は、漢族、彝族、布依族、苗族などを対象に広くおこなわれたが、そのなかでとくに彝族が、医学と巫術パフォーマンスの面において、豊富な古文献を保存しているばかりでなく、実践でも深い造詣をもっていることがわかった。彝族のシャーマンと巫術、彝族の医術とパフォーマンスについては、まだ本格的な学術研究が少ないだけに貴重な収穫であった。 安順地区では、大西村という辺鄙な村において、この村の人々によって古くから儺の演劇に使われてきた、数百面の仮面をはじめて調査させてもらうことができた。 平成8年度はおもに威寧県と岑鞏地区にて実地調査を実施した。 まずは貴州西部の威寧県において、彝族の「撮特几」について調査を行った。「撮特几」は非常に原始的なひな形を残している仮面劇である。「撮特几」は彝族のことばでは、人間に変化する、または人間が変化するという意味、つまり祖先神(祖霊、鬼)が人間に姿を変えることと、人間が祖先神に変身することを指す。芝居はこの二つの変身を表現する。前者は病気駆逐や豊作祝いに祖先神が来訪する内容で、後者は人間が祖先神に扮して、人間のみずからの歴史を語る内容である。調査はとくに、病気駆逐と祖霊、鬼および仮面劇との関連に注目して行った。 それから貴州の東部の岑鞏地区において、この地域の儺を調査した。調査項目は主として、(1)「儺技」、(2)儺舞の足の踏み方と結印、(3)師弟の伝承方法、との三つだった。 「儺技」は、実際の病気治癒にもっとも直結するいわゆる超能力のパフォーマンスである。一列に並んだ刀の刃の「橋」のうえを素足で歩くのをはじめ、油が沸騰した鍋に足を入れる、真っ赤に焼いた鉄の犁を口に含むなど全部で三十六通りあるといわれるが、現場でその中のいくつかを実見し、それらと治癒活動とのかかわりを確認した。 儺師が舞をするときに一定した足の踏み方と手の結印をしている。一見してなんの変哲もないように見えるが、八卦や五行など道教と深くかかわりを持っていることを今回の調査で確認した。 儺の師弟伝承は、厳格の規定や儀式にしたがい、三年から五年かかるきびしいものである。今回の調査では実際にその規定や儀式について儺師にインタビューすることができたのである。 ほかに8年度の調査ではこの地域に伝わる神話伝説についても文献資料の収集を行うことができた。 2年間にわたる実地調査の過程で、地元の研究者たちと座談会や研究会などの形を通して交流を深めた。貴州の大学や研究所の研究者ばかりでなく、県や村の教育担当者や史料編纂担当者たちとも幅広く接触できたのも、収穫の一つに数えられる。そして、われわれのもっていった研究課題が地元の研究者のなかで大きな関心を呼び、海外との共同研究は以前もおこなったことがあったが、今回は一番成功している、と地元の研究者たちに評価されている。 平成9年8月に貴州にて儺研究のシンポジウムが予定されており、このプロジェクトとしても調査研究の成果をそれまでにまとめて、シンポジウムで発表しようと考えている。
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