研究課題/領域番号 |
07044066
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上田 和夫 東京大学, 物性研究所, 教授 (70114395)
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研究分担者 |
CAR Robert スイス仏語地域数値物性科学研究所, 教授
紺谷 浩 東京大学, 物性研究所, 助手 (90272533)
古川 信夫 東京大学, 物性研究所, 助手 (00238669)
西野 友年 神戸大学, 理学部, 講師 (00241563)
荻津 格 東京大学, 物性研究所, 助手 (20262165)
常次 宏一 筑波大学, 物性光学系, 助教授 (80197748)
常行 真司 東京大学, 物理工学所, 助教授 (90197749)
今田 正俊 東京大学, 物性研究所, 助教授 (70143542)
CAR Rovert スイス仏語地域数値物性科学研究所, 教授
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1996年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1995年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
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キーワード | 凝縮系物理 / 強相関電子系 / 金属絶縁体転移 / スピンギャップ / 量子モンテカルロ計算 / 密度行列繰り込み群 / 第一原理計算 / 多体問題 / モット絶縁体 / 重い電子系 / 周期的アンダーソン模型 / Car-Parrinello法 |
研究概要 |
自然界の現象は、素粒子レベル、原子レベル、セミマクロなレベル、マクロなレベルと階層的構造を示すことが多い。この階層的構造は、エネルギースケールの問題ということも出来るし、また長さのスケールの問題ということも出来る。凝縮系物理における多体問題理解の方法というものもそれに関連している。種々のレベルの問題があり、それぞれのレベルでことなる方法が用いられるのが常であるが、時として違うレベルで発展した方法が有益な示唆を与えることがある。凝縮系物理の重要問題にこうした意義を持って取り組もうというのが我々の目指した所であった。 当研究課題の期間にスタートしたプラケットRVBのスピンギャップ相に関する国際共同研究は順調な展開を見せ、2次元ハイゼンベルグスピン系の量子相転移の臨界現象の研究へと発展した。その結果、ハイゼンベルグ系から非線形シグマモデルへの写像理論の予言する3次元O(3)古典スピン系の臨界指数と一致することが、ループアルゴリズムを用いた量子モンテカルロシミュレーションによって確立された。スピンギャップに関する研究は、3次元的に結合した梯子鎖の秩序無秩序転移、梯子鎖のホール係数などの輸送現象の議論へと発展した。これらの研究を通じて、スピンギャップ研究の意義が量子臨界点近傍の得意な物理現象の解明にあることが次第に明瞭に認識されるようになったが、この意味では反強磁性長距離秩序のある系でも臨界点近傍では面白い現象が期待される。実際CaV_3O_7では、ストライプ秩序と呼ばれるネ-ル秩序とはことなる磁性状態が観測されているが、この状態は古典的には安定でない状態であるにも関わらず量子揺らぎによって始めて安定化される特異な状態であることが明らかになった。 強相関電子系の金属絶縁体転移を量子モンテカルロ法、スケーリング理論などを用いて研究し、フィリング制御型の2次元系のモット転移でハイパースケーリング仮説が成立し、動的臨界指数が4であることを示した。この結果、モット転移近傍の金属相でコヒーレンスが異常に抑制される点を解析した。また、一粒子過程の抑制による二粒子過程の顕在化が反強磁性モット絶縁体からd波超伝導体への量子相転移を引き起こすことを示した。金属絶縁体転移を示すマンガン酸化物のスピン励起構造を二重交換模型を用いて研究した。スピン波近似と動的平均場を用いて集団励起と準粒子励起を計算し、実験結果との比較で良い一致を見た。 一次元は多体問題を近似に依存しない形で研究出来るテストグランドである。最近S.Whiteによって密度行列繰り込み群という精密な変分計算理論が開発されたが、これは次元では特に有効である。この研究課題期間中に我々は重い電子系の基礎モデルである近藤格子模型に対する密度行列繰り込み群計算手法を確立した。それを用いて、近藤絶縁体のスピンギャップ、チャージギャップの関数形を確立した。さらに、常磁性金属相におけるスピンとチャージのフリーデル振動を観測することによってフェルミ面が大きいことが示された。またその振動の減衰の様子から、近藤格子の常磁性金属相が相関臨界指数の非常に小さな特異な朝永-ラッティンジャー液体であることが明らかになった。 凝縮系多体問題に対する第一原理計算に関しては、圧力一定の第一原理分子動力学法プログラムを開発・整備し、大規模計算を目的として並列計算機用に最適化を行った。また構造転移や表面での原子拡散の活性障壁を求める効率的な計算アルゴリズムを開発した。このプログラムを使って、グラファイト、シリサイド、BC2N、グラファイト層間化合物の圧力誘起構造変化のシミュレーションを行った。これにより、高温でのグラファイト-立方晶ダイヤモンド転移と、低温で見られるグラファイト-六方晶ダイヤモンド転移の違いを明らかにした。またヘテロダイヤモンドBC2Nの安定構図尾と電子物性を予測し、高圧を用いた合成方法を提案した。さらにグラファイト層間化合物からアルカリイオンを内包した全く新しいダイヤモンド様物質が高圧合成できる可能性を指摘した。
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