研究課題/領域番号 |
07044074
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐藤 修二 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50025483)
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研究分担者 |
JONES T.J. ミネソタ大学, 教授
WOODWARD C.E ワイオミング大学, 助教授
田村 元秀 国立天文台, 光学赤外線天文学研究系, 助手 (00260018)
片ざ 宏一 (片坐 宏一) 東京大学, 天文教育研究センター, 助手 (70242097)
長田 哲也 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (80208016)
WOODWARD Charles E University of Wyoming, Associate Professor
JONES Terry J University of Minnesota, Professor
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
7,200千円 (直接経費: 7,200千円)
1996年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
1995年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
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キーワード | 星間減光 / 星間偏光 / 星形成領域 |
研究概要 |
主として、波長1.3-4.2ミクロンにわたって分光および分光偏光観測を行なった。対象天体は銀河面で赤化をうけた巨星・超巨星と星形成領域の若い天体・暗黒星雲の背景の天体である。 銀河面の天体は波長1ミクロンまでのサーベイで見つけられていたもので、これまで詳細な性質は全くわかっていなかった。これらの天体のスペクトル型を同定し、その元来の色と観測データを比べることにより、星間減光の量を見積もった。その結果、かなりのものが元来赤いM型星がわずかの赤化を受けたにすぎないことを見いだした。これは、星間物質の研究を進める上で不可欠な背景光源を探索するのに波長1ミクロン程度までの観測では不十分なことを、初めてはっきりと示したものであると言えよう。この赤化量と星間偏光の量を比較すると最近言われているような「赤化や減光はひきおこすが偏光に寄与しない星間微粒子」の存在に疑問を呈することができる。すなわち、暗黒星雲の中では形状が長細くないとか磁場に反応しにくい等の原因で近赤外で偏光をおこさない星間微粒子があるのではないかとの説が最近のデータをもとにして出されていたが、本研究ではその存在の根拠となったデータを否定することができた。 観測した中には、数は少ないものの早期型星や、晩期型星ながら比較的大きな減光を受けたものも含まれている。これらの観測から波長3.4ミクロンに吸収バンドを見出した。この吸収バンドは炭素-水素の結合をもつ星間塵によるものと考えられる。吸収バンドの強度と星間減光との関係から、炭素-水素結合をもつ星間塵は銀河面にあまねく分布していることを確立した。 これらの天体の中から選び出したものを偏光観測し、大きな偏光を持ちしかも3ミクロン帯に氷の吸収にともなう偏光の超過を示す天体を発見した。2ミクロン帯のスペクトルなどから、暗黒星雲の背後にある天体と考えられる。このような天体に対する偏光の超過は散乱の影響を受けずに氷の偏光超過を調べることができるため貴重であるが、今までにただ一つの観測例があるだけだった。 一方、暗黒星雲にうもれた天体の氷の吸収にともなう偏光もこれまでの観測限界をこえて数多く観測した。この中には単純な星間偏光のメカニズムでは説明できそうにない波長依存性を示す天体もあり、これまで観測されていた少数の明るい天体が必ずしも星形成領域を代表するものではないことがわかってきた。星間減光にともなう偏光を示すものと散乱の影響が大きく効いているものとに大別した。前者の解析から、長細い星間塵の方向を磁場でそろえる効率・氷の組成などを求めた。観測された偏光を説明するには高い効率を必要とせず、現在考えられている磁場のメカニズムで十分説明できる。一方、氷の組成としては純粋な水よりもメタノールやアンモニアを混ぜたものを実験室で測定したデータの方が観測値からのずれが小さいが、それらを使ってもまだ観測値をうまく再現できず、暗黒星雲の中の氷の組成を説明する物質が文献になることが明らかになった。 さらに、星形成領域の観測から、3ミクロン帯に氷の吸収をもつ天体や3.3ミクロンに輝線バンドをもつ天体を数多く発見した。中には氷の吸収と3.3ミクロン輝線バンドの両方をもつ天体もあった。氷の吸収は、これらの天体から我々までの視線方向に、紫外線が入り込まないために氷が存在できる場所があることを示している。一方、3.3ミクロンの輝線バンドはある種の芳香族炭化水素が紫外線によって励起されて発することまではわかっている。したがってこの2つの特徴を示す天体は相反する条件をもつ領域を観測ビームの中にもつことになる。今後空間的に高分解能の観測によって星形成時の幾何学にせまりたいと考えている。
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