研究課題/領域番号 |
07044075
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
福井 康雄 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30135298)
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研究分担者 |
RUBIO M. チリ大学, 理学部, 教授
SEARLE L. カーネギー研究所天文台, 主任研究員
OEMLER Jr. A カーネギー研究所天文台, 台長
KUN M. コンコリ天文台, 研究員
BALAZS L. コンコリ天文台, 主任研究員
水野 亮 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助手 (80212231)
小川 英夫 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20022717)
OEMLER Jr.A. カーネギー研究所天文台, 台長
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
7,400千円 (直接経費: 7,400千円)
1996年度: 4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
1995年度: 3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
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キーワード | 電波天文学 / 分子雲コア / 星形成 / 星間分子雲 |
研究概要 |
星形成過程に関する研究は、世界的には、個々の星形成領域の詳細な観測に重点をおいてすすめられている。これらの研究は、ともすれば、放射強度の高い「目立った」天体に集中して行なわれる場合が多いのは、無理もない趨勢である。しかし、そうして得られる知見については、どの程度普遍的に宇宙全体についてあてはまるか、という吟味が欠かせない。今、必要とされるのは、むしろできるかぎり多数の星形成領域のサンプルを偏りなく集め、それらについて均質な観測データを得ることによって十分高い普遍性を持つ傾向、あるいは規則性を見い出す努力であろう。本研究は、このような問題意識に立ち、ミリメートル波の星間分子スペクトルによる広域掃天観測を遂行し、多数の星形成領域をもれなく検出し、星形成の統計的研究を行なったものである。観測は、大きく北天と南天を対象とする2つの部分の分かれる。観測に使用した装置は世界最高感度の超伝導受信器をそなえた4メートル電波望遠鏡2台である。これらの装置によって検出された分子雲の半数以上は、新たに見い出されたものであり、総数は1000個をこえる。これらの分子雲における星形成のサインとしては、赤外線天文衛星(アイラス)によって検出された赤外線点源(アイラス点源)を用い、位置的相関をもとに付随する原始星を確定した。また、観測領域は、銀河系の第2象限にあたるセフェウス座、カシオペア座、おうし座、ぎょしゃ座などを含む銀偉100°〜220°、銀経【+-】20°の領域である。 検出された分子雲について解析し、以下の知見がえられた。 (1)分子雲の質量スペクトル(dn/dm)とは、mについて平均して-1.7乗のべき関数でよく表わされる。ただし、銀河系中心の反対方向、つまり、太陽円の外部では、この指数-1.8から-1.9乗になる傾向があり、銀河系の外側では分子雲の質量が小さくなる傾向を示す。 (2)分子雲の質量と分子スペクトルの線幅との間に有意な相関は見られない。これは、従来の定説に反する結果であるが、サンプル数においては本研究が約10倍まさっており、かつ、均質なデータを用いている点でより信頼すべきものと考えられる。 (3)各分子雲に付随する原始星について、光度分布関数(dn/dL)を求めると、光度Lについて-1.3乗のべき関数でよく表わされることが分かった。これは、フィールドのアイラス点源のそれよりも有意に平坦である。また、主系列星(ZAMS)についての質量光度関係を仮定して原始星の質量分布関数を求めると、太陽近傍の恒星の初期質量関数(IMF)とほぼ同じべき指数であることが分かった。また、このことは分子雲の質量には依存しない。 (4)各分子雲において形成される星の最大光度が分子雲の質量の1.4乗に比例して増加することを見い出した。このことは、(3)にのべた原始星の質量分布関数と、各分子雲における原始星の個数の質量依存性から自然に導くことができる。 (5)分子雲のビリアル質量(線幅から力学的平衡を仮定して求めたもの)と、LTE質量(分子スペクトル強度から熱平衡を仮定して求めたもの)との間によい相関があり、M_<VIR>∝M_<VIR>^<0.6>と表現できることを見い出した。これは、大質量分子雲では2つの質量がよく一致するのに対して、小質量分子雲では、ビリアル質量の方が10倍以上大きく、外圧を考えに入れないと力学的平衡にはないと考えられる。 (6)星形成活動は、ビリアル質量とLTE質量の比と相関がある。すなわち、M_<VIR>/M_<LTE>大の雲では、ほとんど星形成はおきていないのに対して、M_<VIR>/M_<LTE>小の雲では活発な星形成が見られる。このことは、広い線幅が乱流等を表わすとすると、乱流が時間とともに減衰するのにつれて分子雲における重力が卓越し、星形成が活発化する、というシナリオによって理解できる。 以上の結論は、これまでの研究では取り扱われていない領域に初めてふみこんだものであり、分子雲における星形成活動に対する大局的な理解を与えるものである。これまでの個々の領域の研究では見当のつかなかった分子雲の星形成における特性を明らかにできたものと考える。
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