研究分担者 |
SAVIN I. JINR(DUBNA)研究所, 教授
NIINIKOSKI T ヨーロッパ原子核研究所, 研究員
IGO G.J. カリフォルニア大学, 物理学科, 教授
HUGHES V.W. エール大学, 物理学科, 教授
斉藤 栄 (斎藤 栄) 名古屋大学, 理学部, 教授 (40022694)
石元 茂 高エネルギー物理学研究所, 助手 (50141974)
松田 達郎 宮崎大学, 工学部, 助手 (20253817)
長谷川 武夫 宮崎大学, 工学部, 教授 (70025386)
森 邦和 名古屋大学, 医療技術短期大学部, 教授 (70022663)
景谷 恒雄 名古屋大学, 理工科学総合研究センター, 助手 (40273297)
岩田 高広 名古屋大学, 理学部, 助手 (70211761)
SAVIN Igol JINR(DUBNA)研究所, 教授
IGO George カリフォルニア大学, 物理学科, 教授
HUGHES Verno エール大学, 物理学科, 教授
北門 新作 名古屋大学, 理学部, 教授 (20027345)
SAVIN L DUBNA研究所, 研究員
NIINIKOSKI ティー ヨーロッパ原子核機構, 教授
IGO G. J. カリフォルニア大学, 物理学科, 教授
HUGHES V. W エール大学, 物理学科, 教授
林 直樹 日本学術振興会, 特別研究員
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研究概要 |
1.平成8年度スピン依存構造関数の測定 核子スピンへのクォークスピンの寄与に関する研究は、CERNにおける1992年から毎年6ヵ月づつ重陽子と陽子標的を使ってのSMC測定、およびアメリカのSLACにおけるE142,143実験等で概要が明かとなってきている。 この状況の中で、本年度の主要な課題はCERNにおけるSMC(Spin Muon Collaboration)による陽子のスピン依存構造関数をBjorkenのxでx【less than or equal】0.007の領域について精度を上げて測ることであった。これまで、偏極陽子標的については1993年にブタノール試料で測定を行い、x=0.003の領域まで測った。その結果、g^p_1(x,Q^2)がxの減少とともに増加するように見える傾向を示した。xが小さな領域でのg^p_1(x,Q^2)の振舞はxについてx=0までの外挿値に影響を与え、積分Γ^p_1(Q^2)に大きく影響を与える。この第一モーメントといわれるΓ^p_1(Q^2)はクォークスピンの和を求めるための基本量であり、この値次第でクォークのスピン寄与の算定が変る。xの小さな領域で精度を上げたg^p_1(x,Q^2)の測定は入射ミューオンエネルギーの高いSMCのみが実験可能であり、データが待ち望まれていた。 質の良い実験結果を得るため、本年は陽子標的に固化NH_3を使った。この物質は室温で気体であり、標的にするまでに、(1)液化窒素で固化すること、(2)細かく砕いて同じ大きさの粒をフルイで選び出すこと、(3)これに加速電子線を照射して不対電子を創ること、という作業があり、しかも全て液化窒素中で行われねばならない煩わしさがある。しかし、この物質はブタノールに比べて陽子含有率が高く、かつ、偏極度も高くなることが予測されたので採用したものである。 実際、陽子偏極度は実験測定中を通して平均90%を示してブタノールに比べて7-8%高く、収集事象数でもブタノールの場合に比して2-3割の増加を見るという成果を得た。 実験は4月20日に始まり、9月17日をもって終了した。本年度の実験終了でSMCが予定した全ての実験計画は終了し、これまで6年間に収集した重陽子および陽子標的による全データから、核子内のクォークのスピン寄与について最終的結論が得られ、この結果を用いてQCDに基づく理論手法の是
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非(Bjorken和則のテスト)についても最終結論を得る事ができる。 日本のグループは、偏極標的に関しては、アンモニア試料を使った偏極標的の立ち上げおよび実験中の運転には多くのスタッフおよび協力研究員が参加して成功裏に実験を進め、測定終了後のNH_3偏極度解析は大学院生(宮地)が中心となって行っている。また、散乱データのオフライン解析では、小川、宮地の二人の大学院生がSMCの解析グループの中心となって励んでいる。3月にはプレリミナリーな結果を国際会議で発表し、1997年秋までには論文発表の予定である。 2.前年度(1995)の解析結果 1995年度の測定した重陽子標的のスピン依存構造関数の結果を専門雑誌Phys.Letters Bに投稿し、掲載決定された。 この論文をまとめるにあたり、解析結果を出すのにSMCグループの中で小川(研究協力員)が中心となって作業を行った。小川は解析の全行程に係わったが、特に、粒子位置の決定、系統誤差の算定、放射補正の計算、非対称度とスピン依存構造関数の導出およびその値のQ^2に依存したQCD発展方程式の計算に責任を持ち、信頼性のある実験データの導出に大きな貢献をした。小川はこの研究を博士論文に仕上げ、名古屋大学理学部で受理された。 解析では、1993年度に測定した陽子標的の結果を本論文としてまとめる作業が続いていたが、小川の解析への参加等でまとまり、Phys.Rev.Dに投稿した。 3.新しい共同研究(COMPASS)計画のCERNによる承認 一連のSMC実験およびSLACの実験は、核子内クォークのスピン寄与についてほぼ一定の合意に到達した。すなわち、 (1)クォークスピンの和は核子スピンの30%ほどを担う。 (2)ストレンジ(s)-クォーク成分は、核子スピンと反対向きに10%強含まれる。 という結論である。すぐに浮かぶ疑問は「残りの70%は何が担うのか?」である。この疑問に答えるべく、私たち日本グループとマインツ大学を中心とするドイツグループおよびトリエステ大学を中心とするイタリーグループが力をあわせ、これにロシアのJINR、IHEP、ポーランドのワルシャワ大学、チェッコのプラハ大学、フィンランドのヘリシンキ大学等々が結集し、新しい国際共同研究グループCOMPASS(COmmon Muon and Proton Apparatus for Structure and Spectroscopy)を結成した。この研究の主目的は核子内の「グル-オン偏極度の測定」である。 COMPASSはCERN当局に、平成8年3月にプロポーザルを提出し、CERNの「プロポーザル検討委員会(SPSLC)」の返事を待っていたが、平成8年9月11日、めでたく採択された。そして、平成9年2月6日CERNの研究実施を決定する権限のある委員会「Resarch Board」によって、実験実行の許可がおりた。COMPASSは1999年の実験開始に向けて本格的な準備体制に入ることになる。 この最終決定に先立ち、私たち日本グループはすでに文部省より科学研究費補助金(特別推進)の配分を受けることが決まっていて、大型超伝導電磁石の製作の検討に入っていた。この実質的な準備作業は各国グループを勇気づけ、CERNでの実験許可に極めて大きな影響を与えたと確信している。 私たちが分担する超伝導電磁石の設計は終わり、部分毎に製作に入っている。 隠す
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