研究分担者 |
LEE P.A. 米国マサチューセッツ工科大学, 教授
SCALAPINO D. 米国カリフォルニア大学, 教授
COLEMAN P. 米国ラトガース大学, 助教授
DAGOTTO E. 米国フロリダ大学, 助教授
RICE T.M. スイス連邦工科大学, 教授
吉岡 大二郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30114713)
三宅 和正 大阪大学, 基礎工学部, 教授 (90109265)
福山 秀敏 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (10004441)
永長 直人 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (60164406)
倉本 義夫 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70111250)
川上 則雄 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10169683)
小形 正男 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (60185501)
上田 和夫 東京大学, 物性研究所, 教授 (70114395)
今田 正俊 東京大学, 物性研究所, 助教授 (70143542)
YOSHIOKA D Institute of Physics, College of Arts and Science, University of Tokyo
MIYAKE K Department of Material Physics, Osaka University
FUKUYAMA H Department of Physics, University of Tokyo
OGATA M Institute of Physics, College of Arts and Science, University of Tokyo
IMADA M Institute of solid state physics, University of Tokyo
UEDA K Institute of Solid State Physics, University of Tokyo
LEE P. A. 米国マサチューセッツ工科大学, 教授
SCALAPINO D 米国カリフォルニア大学, 教授
P Coleman 米国ラトガース大学, 助教授
RICE T. M. スイス連邦工科大学, 教授
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研究概要 |
約30年前,LiebとWu[1]は一次元ハバ-ド・モデルの厳密解を提案するとともに,その後につづく新しい量子現象の基礎を築いた.一次元電子系では電子の運動が一方向に限られているため,お互いに避けあうことができない.そのため,電子間相互作用により電子の性質は根本的に変更を受ける.この量子現象はスピン・電荷分離と呼ばれ,低エネルギー状態はスピンS=1/2を持つスピン素励起(スピノン)と電荷eを持つ電荷素励起(ホロン)に支配される. 1986年に高温超伝導が発見され,スピン・電荷分離が新たな注目を集めるようになった.それはP.W.Anderson[2]が高温超伝導のメカニズムにこの概念を持ち込んだことに端を発している.その後,高温超伝導体のアンダー・ドープ領域でスピン・ギヤップ相が発見され,スピン・電荷分離は高温超伝導体を含めた強相関電子系の重要な基本概念としての地位を確立しつつある.また,最近発見された梯子格子の超伝導体ではスピン・ギャップが重要な鍵を握っていると考えられる.一方,スピンンとホロンを直接に捕らえる実験的試みは多数なされてきたが,かならずしも理論との完全な一致は得られておらず,理論の枠の中に閉じ込められている感があった.ところが,最近、一次元銅酸化物モット絶縁体SrCuO_2に対して角度分解光電子分光実験が行われ,理論との定量的な比較からスピノンとホロンの存在が確認された. この成功にはいくつかの理由が考えられる.まず,良質の単結晶が得られたことが挙げられる.さらに,光電子分光実験における分解能と物質の示す特徴的なエネルギーの関係がある.モット絶縁体であるこの物質では,スピノンの分散は反強磁性交換相互作用(J)で支配されるが,この物質ではこの値が大きく(J〜0.2eV),光電子分光実験の分解能を大きく上回っている. 2次元系でのスピン・電荷分離の可能性は高温超伝導のメカニズムの本質に係わるものであり,現在最も活発な研究が進められている問題の一つである. ペロフスカイト構造を持つLa_<1-x>Sr_xMnO_3では,Mnイオンは基本的には立方対称の結晶中にあり,d電子のe_g軌道の2重縮退のために,軌道の自由度がスピンおよび電荷の自由度に加わる.モット絶縁体であるLaMnO_3では,軌道とスピンの自由度が結合してAタイプ構造と呼ばれる特徴的な異方的反強磁性状態が実現している.さらに,同じ構造を持つPr_<0.5>Sr_<0.5>MnO_3等では,スピン,電荷,軌道,の自由度がお互いに絡み合い磁場による電荷秩序/融解現象が見られる.最近では,VやTiの酸化物でも軌道とスピンの自由度が結合し、たいへん興味ある物性が見出されている. このように,固体中の電子の持つ内部自由度であるスピン・電荷・軌道に視点を移し,そこから電子物性を構築していくことにより,多くの新しい概念が生み出されている.このような視点からの物理では,高温超伝導だけでなく多くの遷移金属酸化物の示す物性がそのターゲットである. 本研究では,このような電子の内部自由度に視点を移し,強相関電子系の理論の構築を行った.このような視点からの研究は今までにない全く新しい試みであり,今後の新しい物性物理学に対する基礎がこの研究で築かれたと言える。 [1]E.H.Lieb and F.Y.Wu:Phys.Rev.Lett.20(1968)1447 P.W.Anderson:Science 235(1987)1196.
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