研究課題/領域番号 |
07044085
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
江尻 宏泰 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (80013374)
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研究分担者 |
HARAKEH M.N. オランダ, KVI国立原子核研究所, 教授
土岐 博 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (70163962)
藤原 守 大阪大学, 核物理研究センター, 助教授 (00030031)
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
1995年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
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キーワード | 太陽 / ニュートリノ / ガンマ線 / ガモフ・テラー共鳴 / 巨大共鳴 / 原子核 / サイクロトロン / 超新星 / Double beta decay |
研究概要 |
本国際学術研究の目的はオランダ国立原子核研究所(KVI)AGORサイクロトロンと核物理研究センター・リングサイクロトロンの双方の施設を用い、原子核の「スピン共鳴」の研究をすすめ、高エネルギー・ガンマ線検出器の基礎開発を進めることであった。 この目的を達成するためのさまざまな議論を行うために、以下の具体的な学術交流活動を行った。 1.平成7年6月に行われた、「原子核の巨大共鳴」国際会議に江尻、藤原が出席し大阪大学でおこなわれている研究成果を招待後援として発表するとともに、今後の国際協力として進めていく実験研究について具体的打ち合わせを行った。この発結果は論文として出版される。 2.平成7年10月にはオランダより2名(M.N.Harakeh,H.van dar Molen)が本学術研究プラグラムの援助により大阪に来日した。アメリカ・ミシガン大学J.Janecke教授らの実験協力チームを組み、日本、オランダ、アメリカ、ポーランド、インドの国際共同実験として^<90>Zr(^3He,t)^<90>Nb反応にともなう^<90>Nb原子核のガモフ・テラー共鳴からのガンマ線崩壊の実験に挑戦した。またこの実験後、太陽ニュートリノに関係した実験として同様な実験を^<71>Ga原子核についても行った。 3.^<90>Zr(^3He,t)^<90>Nb反応実験データの具体的解析を行うために大阪より、秋宗がKVIに出張した。大阪でのデータ解析をHarakeh教授らとの議論を重ねながらおこなった。実験に用いたNaIガンマ線検出器のガンマ線検出効率をシミュレーション計算機プログラムにより算出し、ガンマ線検出効率を求めた。 秋宗は実験データのコンプトン散乱によるバックグラウンドを除去するという新しい実験データ解析方法を開発した。現在実験データ解析が進行している。 オランダ側研究者との協力要請により、日本で開発されたケブラ-フォイルを陽子-陽子散乱からの高エネルギーガンマ線検出実験のためのワイヤーカウンター(荷電粒子検出器)にもちいる試みもおこなった。 このケブラ-フォイルは液体水素ターゲット用のビーム窓に使用可能かどうかの基礎実験も始められた。 4.理論的な国際協力事業としては土岐、Olaf Scholtenが相互の研究所を訪問し研究を行っている。特に、Olaf Scholten氏は日本物理学会で「陽子散乱におけるガンマ線制動放射」について特別講演をおこなうなど、この方面でのヨーロッパにおける理論の発展について詳細な情報を我々にもたらしてくれた。 5.AGORサイクロトロンでの実験計画として原子核のアイソベクター巨大共鳴を探索する実験を提案した。この実験提案は実験審議委員会の審議を経て、承認された。2月中旬に藤原がKVIに出向き、実験準備の詳細を準備し、議論すると共に今後の計画について打ち合わせをおこなった。 藤原は、KVIの研究者と協力し、陽子崩壊のためのシリコン検出器の準備、電子回路のチェックを入念に行い完成させた。核物理研究センターではすでに40個のシリコン検出器からなるシリコンボール検出器が完成している、その技術交換のために、オランダ側からの派遣研究者としてAd van den Berg氏が平成8年3月に大阪を来訪した。 AGORサイクロトロンは平成7年4月にはフランスよりオランダKVIに移設され、8月には稼働を始める予定であった。残念なことに、この予定は少なくとも半年は延長されている。但し、平成7年10月にはビーム加速に成功した。AGORサイクロトロンのすべての機能をチェックしながらサイクロトロンの建設が進行している。本年2月には実験に入れる予定であったが、計画は少しばかり遅れている。 磁気スペクトロメータ建設も最終段階に入っている。今後、詳細な実験計画検討を行い、原子核のアイソベクター巨大共鳴探索実験が平成8年4月-8月の期間に行われることとなった。 6.オランダ側研究者との共同研究結果として平成7年度にはいくつかの研究論文が完成した。今後も同様な研究協力のもとに原子核「スピン共鳴」の研究が発展していくことは確実である。現在、KVIでは「EUROSUPERNOVAE」研究計画が進展しつつある。これは、質量の重い超新星爆発をこれからの研究対象とし、宇宙のなぞを解こうという計画である。原子核によるニュートリノ吸収のための基礎データがこの計画では必要となっている。この研究分野では核物理研究センターの「Grand Raiden」磁気分析器に設置された「焦点面偏極分析器」は世界のトップに立つ実験装置であり、今後、この方面の研究の進展もはかれる。
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