研究課題/領域番号 |
07044092
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
南方 久和 東京都立大学, 理学部, 助教授 (00112475)
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研究分担者 |
CHODOS Alan Yale University, Center for Theoretical P, Director
MUELLER Bern Duke University, Department of Physics, Professor
北澤 敬章 東京都立大学, 理学部, 助手
安田 修 東京都立大学, 理学部, 助手 (50183116)
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1995年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | DCC / 重イオン衝突 / 線形シグマ模型 / 量子異常 / 熱力学的ベ-テ仮説 / 有限密度相転移 / ラージN展開 |
研究概要 |
1.ハドロンおよび重イオン衝突の中間状態が急冷したときに生成されると予測されているQCD真空の弱い励起様態、いわゆる「誤ったカイラル軸方向をもった凝縮状態」(Disoriented Chiral Condensates、略してDCC)についての研究を行なった。(デューク大学B.Mueller教授との共同研究。論文はPhysics Letters B誌に掲載予定)今年度は特に高エネルギー重イオン衝突におけるDCC形成に対する重イオンのもつ強い電磁場の影響を明らかにする研究を行なった。この問題は以下に述べるように、理論的に興味深い側面を持つとともに米国ブルックヘブン国立研究所で計画中の高エネルギー重イオン衝突実験(RHIC,1998年稼働予定)に対して直接のインパクトを与える研究課題である。このテーマは電磁場がアイソスピン対称性を壊す性質をもっていることから、DCC状態形成に強い影響を与えることが自然に期待されるという我々自身による問題提起(平成6年度に米国側代表者B.Mueller教授がNSFの支持を受けて都立大を訪問された時に代表者との討論の中で生まれた)から出発している。この予想を確かめるためにまず、QCDの低エネルギー有効理論として線形シグマ模型を採用し、静的で一様な電磁場中での1ループの量子補正をシュヴィンソガ-の方法で計算してみた。ところが予想に反し、電磁場の効果は基底状態のカイラル軸方向を変えないという結論が得られた。これは線形シグマ模型の持つO(4)対称性が破れるものの、そのうちのO(2)対称性が破れずに残り、このために基底状態のカイラル軸方向が不変に保たれるためである。この対称性は静的で一様という制限を外しても存在し、そのため上記の結論は非常に一般の電磁場に対して成立することが解かった。この一見残念な結果をよくよく検討してみた結果、線形シグマ模型にQCDのカイラル量子異常の効果を表わすWess-Zumino項を取り入れておくことが極めて本質的で、線形シグマ模型の1ループレベルでは電磁場の効果はカイラル量子異常を通じてのみ系に影響を与えるという驚くべき結果が得られた。この効果は相対論的高エネルギー重イオン衝突では、DCDを形成しようとしているシグマ模型の場の配位に対するローレンツ収縮した強い電磁場によるに対する「衝撃的キック」として働くことが明らかになった。この「キック」は重イオンの散乱平面の上下で方向が反対で、二つのDCC領域の形成をトリガーするという自然な予想に導かれた。この効果がDCC領域の形成に定量的にどのような影響を及ぼすかを理解するためには、Asakawa-Huang-Wongの線形シグマ模型のシミュレーションに「カイラル量子異常キック」の効果を取り込むことが、最も早道であるように見え、この可能性についてAsakawa達と連絡を開始している。 2.1次元フェルミオン系の統計力学を構築するために、熱力学的ベ-テ仮説の方法によって厳密な大分配関数を求めることを目標とする研究を行なっ た。特に導伝性をもつ1次元系の物性に関連した1次元のGross-Neveu模型の有限密度下での基底状態の相転移の有無やその構造に関する研究を行なった。具体的には、熱力学的ベ-テ仮説の方法によってGross-Neven模型の特別の荷電ソリトンのセンターでの厳密な大分配関数を構築し、有限密度での性質を調べることを目標とする研究を行なった。(イェール大学A.Chodos教授との共同研究。現在論文執筆中。)その第一歩としてゼロ温度、有限密度で熱力学的ベ-テ仮説方程式を書き下し、の対称性の破れの分析を、ラージN展開と組み合わせた方法によって2次のオーダーまで調べる研究を行なった。この結果以前に求めた1次のオーダーでの結果(同上、論文発表済み)を定性的に変えないという答えを得た。 強外場中のQED、とくにその非摂動論的側面に関連して、米国アルゴンヌ国立研究所の実験APEXの現象論的分析を行なった。実験グループは電子-陽電子のエネルギー分布に存在するピーク構造が無いことを結論したが、当該実験グループのJack Greenberg教授と共に検討した結果、この実験が使用した標的核物質が厚いものであったこと等から、最終的な決着とは言えないことを結論した。
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