研究分担者 |
STEPANEK J. カレル大学, 理学部, 準教授
NESPUREK S. 高分子研究所, 主任研究員
FIDLER V. プラハ工科大学, 工学部, 準教授
HERMAN Z. J. ヘイロフスキー物理化学研究所, 主任研究員
ZAHRADNIK R. チェコ科学アカデミー, 総裁
薬師 久彌 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 教授 (20011695)
北川 禎三 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 教授 (40029955)
中村 宏樹 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 教授 (10010935)
伊藤 光男 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 所長 (20013469)
井口 洋夫 (井口 洋雄) 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 名誉教授 (00100826)
FIDLEV V. プラハ工科大工学部, 準教授
ANZENBACHER ピー 実験生物化学研究所, 所長
ZAHRANIK R. チェコ科学アカデミー, 総裁
丸山 有成 法政大学, 工学部, 教授 (40013479)
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研究概要 |
本研究の目的は、分子科学研究所創設直後より積み上げてきた実績を基盤として、分子科学の分野における日本-チェコ共同研究を3本の柱(1)分子理論、分子分光、物性化学、生物分子科学の分野での共同研究(2)情報交換セミナーの実施、および(3)研究センター構想討議もしくは更なる共同研究への枠組みづくりを行うことである。 平成7年度には、日本側参加者全員が9月10-12日プラハを訪問し、(1)情報交換セミナーを実施し、(2)J.Heyrovsky物理化学研究所、高分子化学研究所、カレル大学、プラハ工科大学などの見学を行った。(3)科学アカデミー、文部省および国会を訪問しそれぞれ要人と日本-チェコ共同研究の促進について意見交換を行い、共同研究の必要性を確認した。また、これと平行して、日本学術振興会は12月にチェコ側の2人の本研究の分担者を含む代表団を招聘して、さらに討議を行った。共同研究に関してはこれらの討議を通じて合意した4つの研究分野、1)反応動力学の理論および実験的研究、2)生体分子の分光学的研究、3)分子動力学の時間分解分光、4)機能性分子材料の開発的研究を行うとともに情報交換セミナーを実施する。平成8年には4名の研究者を招聘してまたはチェコからの派遣を受けて、分子研において情報交換セミナーを実施した。本共同研究の席において、今後新たな枠組みで共同研究を行うため、研究代表者を決定して申請などを行うこととした。伊藤、井口は全体をとうして指導・総括・助言を行った。具体的研究成果を以下に述べる。 1)反応動力学の理論および実験的研究では、小谷野教授(姫工大・理)が平成8年約3週間、科学アカデミーのJ.ヘイロフスキー物理化学研究所に滞在し、Z.Herman教授とイオン-分子反応に関する共同研究を行った。テーマは、アセトニトリルイオンと中性のアセトニトリルの反応:CH3CN+ +CH3CN‐‐‐>CH4CN+ +CH2CNにおけるプロトン移行と水素原子引き抜きであった。これは、従来小谷野らがビーム-チャンバー法で追求してきた問題に、それと相補的なビーム交差法装置によって別の角度から光を当て、相補的手法で未解決の問題を解明しようとしたものである。電荷移行の実験結果は、100eVの電子衝撃で生成された親イオンには2種類の安定または準安定な電子状態が存在することを示したほか、反応の微視的機構の解明に多大な成果が得られた。 中村教授の研究室にHoracek博士を招聘して理論的研究を実施した。電子とHIまたはDIの衝突における、振動励起と解離付加過程の理論的研究に解明し、興味ある共鳴効果とその同位体効果を見いだした。 2)生体分子の分光学的研究では、Stepanek教授が分子研に約一週間滞在し、北川教授と検討の結果、核酸とポルフィリン分子の錯体の共鳴ラマン分光を行って、これらの分子の振動スペクトルを明らかにすると共に、励起錯体の動的挙動について研究することとした。とくに、ポルフィリン分子が励起の後にチミンのサイトに移動するメカニズムについて明らかにすることにした。本研究を一つの核にして、次期の共同研究プロジェクトを作成することとした。 3)Fidler研のP.Kapusta助手はチェコで合成した機能性分子について分子研吉原研究室でサブピコ秒蛍光分光研究を行った。すなわち、エネルギードナー、スペーサー、アクセプターが結ばれた分子(D-Sp-A)、(D=aminopyrene,Sp=triazine,A=aminobenanthrone)のドナー部分とアクセプター部分の蛍光ダイナミックスをそれぞれ観測することに成功し、この2蛍光物質の分子内エネルギー移動の機構をD-Sp分子やSp-A分子との比較なども行い明らかにした。さらに、この2蛍光物質の動的ストークスシフトとエネルギー移動との関連も調べた。その結果、1分子内に存在する2つの発光分子間のエネルギー移動の速度が励起波長によって顕著に異なることを初めて見いだした。 4)機能性分子材料の開発的研究では、井口・丸山教授とNespurek教授は有機材料の光伝導性について共同研究を行った。交互に重なった電子受容性分子テトラチアフルバレンやp-クロラニルのシステムにおいて、キャリアー生成量子効率測定、易動度の測定などを行い伝導機構を明らかにした。薬師教授はフラーレンと電子供与性物質(OMTTF)の電荷移動錯体試料を提供しこの光電導性についてNespurek研において測定を開始した。
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