研究課題/領域番号 |
07044130
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
浜中 人士 東京医科歯科大学, 医用器材研究所, 教授 (10013955)
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研究分担者 |
BEST Serena Queen Mary and Westfield College, Univers, 講師
SHELTON Juli Queen Mary and Westfield College, Univers, 講師
BONFIELD Wil Queen Mary and Westfield College, Univers, 教授
土居 寿 東京医科歯科大学, 医用器材研究所, 助手 (30251549)
米山 隆之 東京医科歯科大学, 医用器材研究所, 助教授 (00220773)
SHELTONJULIA ジュリア シー Queen Mary and Westfield College, Univers, 講師
小林 郁夫 東京医科歯科大学, 医用器材研究所, 助手 (40242268)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
23,800千円 (直接経費: 23,800千円)
1996年度: 12,900千円 (直接経費: 12,900千円)
1995年度: 10,900千円 (直接経費: 10,900千円)
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キーワード | チタン合金 / インプラント / 生体適合性 / 合金設計 / 力学的性質 |
研究概要 |
本計画初年度に当たる平成7年度は、合金の開発における基礎的な研究を主に行った。まず、第一段階として、チタン-ジルコニウム二元系合金の力学的性質を検討し、三元合金化の際の基本組成を、チタンとジルコニウムの比を1:1とすることに決定した。さらに、この組成にβ相安定化元素のひとつとして知られているニオブを添加したTi-Zr-Nb三元系合金を各種作成し、それらの力学的性質を評価した。実際には溶製とした合金インゴットに均質化熱処理を施したものを用意し、主として硬さ試験と引張試験に供した。さらに、一部の試料については光学顕微鏡による組織観察を行った。 これらの結果から、組成と組織の関係ならびに硬さに及ぼす影響について検討し、この新しい合金の力学的性質は従来のチタン優れていることを明らかにした。とくに、強度の向上は主として、ジルコニウムによる固溶体強化と第三元素として添加したニオブによる第二相析出強化によるものと考えられた。この第一段階での結論として、この新しく開発された合金は、従来から使用されているチタン合金より力学的性質に優れ、インプラント材としての条件のひとつを満たすことが明らかとなり、次年度の第二段階で、組織調整のための熱処理の効果も含め、さらに詳細な検討を加えていくこととした。 ここまでの成果はJournal of Biomedical Materials Researchや歯科砕材料・器械などの雑誌にすでに投稿、掲載されている。また、成果の一部は第3回歯科チタン国際シンポジウム(1995年8月、シドニー)や日本国内の学会(日本バイオマテリアル学会、日本歯科理工学会など)の講演大会で、日英両グループ連名の共同研究として報告した。 平成8年度には、昨年度までに力学的性質を評価したニオブ濃度の異なる各合金に関して、熱処理条件を変化させた試料を用意し、熱処理と組織、さらに力学的性質との関連を詳細に調査した。各合金とも合金溶製後、均質化熱処理を行い、急冷したものを500℃〜1000℃の温度範囲で最大24hまでの範囲で行った。すべての試料について、X線回折による構成相の同定や光学顕微鏡による組織観察を行い、一部の試料について透過型電子顕微鏡観察を行った。その結果、β相安定化元素であるニオブを適量添加した合金は、α+β二相組織となる温度で熱処理を行った場合、微細な二相組織が得られ、優れた力学的性質が得られることを見いだした。 さらに同時に行った、0.1%乳酸溶液中での浸漬試験ならびにアノード分極試験により、同合金が従来からインプラント材として使用されている各種生体用合金に比べ、優れた耐環境性を有していることが明らかにされた。 また、生体における負荷環境をシミュレートした試験法を開発するために、引張応力とねじり応力を同時に負荷する二軸試験、ならびに特殊な生体環境を再現する腐食疲労試験の方法をデザインし、総合的生体材料評価法を開発した。この総合的生体材料評価法は、基礎研究段階から実用段階に移りつつある材料のより具体的な評価法として有効であることから、今後さらにデータを蓄積することによって、新しい評価法として広く利用されていく可能性があることが示唆された。 平成8年度の成果の一部は、第5回世界バイオマテリアル会議(1996年5月、トロント)や日本国内の各学協会の講演大会などの場で、両研究グループによる国際共同研究の成果として報告されており、来年度に開催予定の国際会議で最終的な報告を行う計画もある。さらに、すでに投稿中のも含めて、最終的な成果を論文などの形で広く報告する予定である。 最後に、この国際共同研究によって得られた成果は上述のような研究実績だけでなく、日英両グループを中心として広く交流の道が開けたことも極めて意義深いものではあったことに言及しておく。この国際共同研究の組織を発展する形で、両グループの所属する研究所間で国際交流協定が締結されたことや、日英の代表的研究者が一堂に会する日英バイオマテリアルn+nミーティングが両グループの主導のもと、1996年11月に東京で開催されたことなどもその一例である。現在検討されている若手研究者の相互訪問なども含め、今後、より幅の広い交流と世界的な規模での貢献が期待される。
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