研究課題/領域番号 |
07044150
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
米山 宏 大阪大学, 工学部, 教授 (80029082)
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研究分担者 |
MARTIN Charl コロラド州立大学, 化学科, 教授
鳥本 司 大阪大学, 工学部, 助手 (60271029)
西澤 松彦 大阪大学, 工学部, 助手 (20273592)
桑畑 進 大阪大学, 工学部, 助教授 (40186565)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
4,700千円 (直接経費: 4,700千円)
1996年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1995年度: 2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
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キーワード | 導電性高分子 / ポリピロール / ポリアニリン / リチウム二次電池 / バイオセンサ / 複合体 / バイオリアクター |
研究概要 |
日米両グループで当初の目的に見合った成果を得ることが出来た。E-mailやファックスによる頻繁な討論、およびコロラド州立大学における共同実験等を通じ、型取り法による超精密構造体の調製が、これまで行ってきた導電性高分子の形態制御のみならず金属酸化物などの無機材料にも適用可能であることが見出された。さらに、超精密構造に由来する新規機能を、高性能電池や新規バイオセンサという工学的・実用的レベルで実証することに成功した。これらの結果は幾つかの論文にまとめられ、国際学術雑誌への掲載が受理された。研究の一部である「ポリピロールで被覆したナノチューブ状二酸化マンガンの調製とリチウム二次電池への応用」を代表的結果として取り上げ、解説する。 本研究は以下に述べる2つの背景を意識して発案され遂行されたものである。まず一つは、電池材料の超微細構造化である。リチウム二次電池の性能向上を目指した重要な研究課題に、"いかに大きな電流が流し得るか"がある。電池の出力電圧は、電池材料の組み合わせによって熱力学的に決定される一種の物性値であるが、それに対し、その出力電圧を保ちつつ、如何に大きな電流が取り出せるかと言う問題は、材料内での物質移動など速度論的要素に大きく依存するものである。この意味での電池特性向上への法策のひとつに電池材料の比表面積増大が考えられている。そこで、コロラド大学のグループが開発した型取り法の導入に考えられている。そこで、コロラド大学のグループが開発した型取り法の導入による電池材料の超微細構造体化を試みた訳である。2つ目の検討課題は、こうして調製した超微細構造体への電気的導通を如何にして効率よく行うかという問題の解決である。我々日本側グループは昨年度の研究成果として、導電性高分子ポリピロールが、金属酸化物粒子をリチウム二次電池の電極に成型する際に極めて有効な導電性マトリックスとして機能することを見出し報告している。導電剤としてのポリピロールの利点は多数あるが、特に今回の研究で重要なのは、電極材料の表面で重合させることが出来るという点である。これは即ち、電極材料が複雑な超微細構造を有していてもその表面形状に柔軟に対応して高度な導電性ネットワークを形成できることを意味する。以上の2点に立脚して遂行された本研究の具体的内容を以下に述べる。 二酸化マンガンのナノチューブを合成するための鋳型
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には、孔経200ナノメートルの細孔が、1平方センチメートルあたり20x10^<10>個の割合で均一に貫通している60マイクロメートル厚の酸化アルミニウム膜を用いた。その孔内に、リチウムイオンとマンガンイオンを1対2の割合で含む水溶液を浸透させた。これを850度で熱処理すると、水が蒸発しさらに材料の酸化が起こって酸化リチウムマンガン化合物(LiMn_2O_4)のナノチューブが出来た。鋳型である酸化アルミニウムはアルカリ水溶液によって溶解除去できた。こうして調製されたLiMn_2O_4ナノチューブは、外径が200ナノメートル、内径が50ナノメートルであった。この微細構造化の結果として、比表面積が市販のLiMn_2O_4微粒子の3倍に増大した。さらに、ピロールの酸性水溶液をこのLiMn_2O_4ナノチューブ集合体に滴下すると、LiMn_2O_4を酸化剤とするピロールの酸化重合が進行し、LiMn_2O_4ナノチューブの内・外表面がポリピロールによって被覆された。以上の方法で調製したLiMn_2O_4ナノチューブ/ポリピロール複合体を、リチウム二次電池の正極として評価した結果、充放電特性およびサイクル特性について通常の電極よりも優れた特性(電池容量)を有することが明らかとなった。特に出力電流値を高く設定した場合にこの優位性が顕著であった。これらの特性がLiMn_2O_4の超微細構造およびポリピロールとの複合化によって発現したものであることを、系統的な比較実験から明らかにした。以上が「ポリピロールで被覆したナノチューブ状二酸化マンガンの調製とリチウム二次電池への応用」の概要である。 電池材料開発における材料の超微細構造化及び導電性高分子ポリピロールとの複合化の有効性が示されたので、このアプローチを他のリチウム2次電池材料や導電性高分子へと拡張した。ポリアニリンとV_2O_5、ポリチオフェンと黒鉛の組み合わせについて検討し、大幅な機能向上を実証した。 一方、超精密構造を有する導電性高分子の調製とバイオセンサへの応用に関しても大きな進展が得られた。鋳型であるポリカーボネートフィルター中でピロールの化学重合を進行させ、その後鋳型膜を溶解除去するとポリピロールナノチューブの集合体を調製できた。さらに、グルコースオキシダーゼ等の生体酵素をチューブ内に取り込ませることによって、酵素を内包するナノカプセル集合体へと展開できた。この酵素固定化法は、従来行われてきた化学結合を介したものに比べて、酵素本来の活性を高度に保持しつつ高密度で固定できる利点を有する。この高い酵素活性と、そして超微細構造を有するポリピロールナノカプセルの大きな比表面積を反映した結果として、臨床医学的に極めて重要な計測対称物であるグルコースを、高感度でセンシングすることが出来た。 以上の研究成果により、導電性高分子と各種無機材料や生体酵素との複合化による新規機能の発現、また、その機能を最高度に引き出す方法論として、型取り法に基づく超精密構造制御の有効性が示された。 隠す
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