研究分担者 |
BEGUELIN Ph. ローザンヌ工科大学, 材料工学科, 研究員
CANTWELL W.J リバプール大学, 材料工学科, 講師
KAUSCH H.H. ローザンヌ工科大学, 材料工学科, 教授
BEN Jar P.ーY オーストラリア国立大学, 工学・情報学部, 講師
崔 洛三 漢陽大学, 工学部, 助教授
新村 哲也 電気化学工学(株), 研究部, 研究員
東藤 貢 九州大学, 応用力学研究所, 助手 (80274538)
新川 和夫 九州大学, 応用力学研究所, 助教授 (00151150)
NAK-SAM Choi Faculty of Engineering, Hanyang University, Associate Professor
BEGUELIN Ph ローザンヌ工科大学, 材料工学科, 研究員
KAUSHU H.H ローザンヌ工科大学, 材料工学科, 教授
KAUSCH H.H ローザンヌ工科大学, 材料工学科, 助教授
BEN JAR R.ーY オーストラリア国大学, 工学・情報学部, 講師
岡本 康 住友化学(株), 石油化学品研究所, グループマネージャー
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研究概要 |
8.1 ゴム粒子強化形ポリマーの破壊靱性に対する衝撃速度依存性 サブミクロン(約300nm)の3層構造をしたゴム粒子で強化されたアクリル樹脂(PMMA、分子量Mwは1.5×10^5)を対象として、10M/Sまでの速度で衝撃的負荷を受けるこの材料のゴム粒子と樹脂間の界面の挙動を主として透過型電子顕微鏡により調べた。その結果、新しい知見として次のことを得た。 (1) 材料が受ける圧力(歪み)によりゴム粒子とその界面の損傷挙動が異なる。すなわちこれを層別してI、II、IIIとする。 (2) Iは最も高い応力下で発生する形態で、ゴム粒子はキャビテーションを起こし、界面の赤道部よりクレーズ層が発生、成長し、しかもクレーズ層が枝分かれを起こしている。また、マトリックス中でシア-変形も観察された。クレーズ層の分岐現象はこの研究により初めて得られた結果である。IIはき裂先端でIの外側に位置し、クレーズ層が分岐していないが長さ、幅共に十分に成長している。IIIはIIの外側にあってゴム粒子のキャビテーションとクレーズの初期成長が見られる領域である。 (3) 以上のことから、ゴム粒子のキャビテーションとクレーズの発生、成長、分岐及びマトリックスのシア-変形がこの材料の主たるエネルギー吸収源であることが示された。 8.2 耐熱性・ポリマーブレンドの相溶性と破壊靱性の向上に関する基礎研究 Flory-Hugginsの自由エネルギー理論により三元系ポリマーブレンド(グラフトSAN,フリーSAN及びSMI)に、SMIの耐熱性を維持したままSANのもつ靱性を良好に発現させるためのゴム粒子界面の分子設計について検討した。すなわち、ゴム粒子界面にグラフトSANが結合し、そこにフリーSANが高頻度で結合し、最外側にSMI分子が配置されるのが理想的である、とのモデルをつくり、それが実現するための最適材料設計条件として、グラフトSAN33、フリーSAN30、SMI55(ここで数字は、前二者はANの重量%、後者はSMI中のPMI重量%を意味する。)を得た。 一方、実験においてはまず二元系のブレンドについて検討し、その結果、SAN中のAN量、SANの分子量が共に大きい程に破壊靱性値が向上することが確かめられた。 三元系のブレンドの破壊靱性の実験的検討については、試料合成上の技術的問題のために上述の理論計算結果の実証実験が遅れている。代わって、ABS中のゴム粒子サイズの破壊靱性に対する影響について実験がなされ、ABSの分子量が60000→129,000 ABS中のゴム粒子0.2→0.4μmと変化させることにより衝撃強度が11→17kg-cm/cmと向上することが見出された。明らかにゴム粒子サイズには0.2〜1.0μmの間に最適値が存在し、このことはゴム粒子界面からクレーズの発生と成長に影響を与えていることが推定される。 8.3 熱可塑性樹脂を母材とする繊維強化プラスチックスの耐衝撃性と界面における損傷のメカニズム グラスファイバー(GF)及びカーボンファイバー(CF)を強化材とし、母材としてナイロン6(PA6)変形ナイロン6(mPA6)を用いた4種類のFRPの耐衝撃性を3m/sまでの高速引張速度下で研究した。高速域ですぐれた耐衝撃性を示すのはこれらのうちGF/PA6、次にmGF/PA6で、いずれにしてもCFよりもGFが耐衝撃性強化材としてCFよりすぐれていることが明らかとなった。これの主因は、(1)GFはCFよりも最大伸び量が約2倍と大きいこと、(2)PAの変成は耐湿性などには有効であるが、高ひずみ速度下でファイバーとの界面における接着性を低下させることになること、であることが示された。 8.4 計装化衝撃試験法の信頼性評価 すでに一要素形高速変位計を試作したが、本年度は二要素形高速変位計を試作した。これの性能を標点間高速変形測定により定量的に調べるため、衝撃負荷装置が設計され、現在製作中である。なお、この変位計はロ-ザンヌ工科大学よりの技術移転により作製された。
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