研究課題/領域番号 |
07044180
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
嶋田 正和 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (40178950)
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研究分担者 |
GODFRAY H.C. インペリアル, カレッジ・生物学科, 教授
HASSELL M.P. インペリアル, カレッジ・生物学科, 主任教授
巖佐 庸 (巌佐 庸) 九州大学, 理学部, 教授 (70176535)
HASSELL M.P インペリアル, カレッジ 生物学科, 主任教授
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1996年度: 2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
1995年度: 3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
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キーワード | 寄主 / 寄生者 / 個体群動態 / 系の持続性 / 共進化 / 時間構造 / 空間構造 / 寄主-寄生者群集 / 宿主 / ダイナミクスの持続性 / 齢構成 / 病毒性 / 群集構造 / 相互作用ネットワーク |
研究概要 |
捕食者の種数が被食者よりも多い「頭でっかち」の系は、構成種が消滅しやすく不安定であるとの理論がある一方で、個体数が振動しながら長く共存した例もあり、定まった説がまだない。代表者の嶋田は、寄主アズキゾウムシと2種の寄生蜂(コガネコバチA.c.、コマユバチH.p.)からなる実験系で長期にわたる共存を確認し、LENNSとRSMの両解析法によりアズキゾウムシとA.c.の時系列でカオスの発生を検出した。さらに、カオスを発生させる個体群機構を解明するため、嶋田は、研究協力者の津田みどりや分担者のH.C.J.Godfrayとともに、時系列解析と齢構成モデルの双方向から解析を試みた。これらの蜂は、A.c.の寄生効率は寄主密度に強く依存するのに対し、H.p.は依存しない。また、両蜂とも4齢幼虫から蛹に寄生するが、H.p.の方がやや若い寄主を選好するのに対し、A.c.はやや老熟な方をより好む。このため、モデル化するには、蜂の機能的反応の差違・寄生対象となる寄主の齢構成などをどのように取り込むかが鍵となる。時系列解析は、いくつかの密度依存性を組み合わせた差分型モデルを用いて、複数の候補から対数尤度が最大となる最適モデルを選択した。齢構成モデルは、蜂の寄生選好性の違い(ニッチ分化)を表すより複雑な齢構成モデルである。両アプローチの結果、寄主-寄生蜂系の非平衡共存にもニッチ分化が重要であることが分かった。 また、嶋田は北アリゾナ大C.D.Johnson教授の協力を得て、新大陸におけるマメ科寄主一種子寄生性昆虫マメゾウムシの食う-食われる関係をもとに、群集の共進化的構造の生成過程を研究した。調査地は、ハワイ・アリゾナメキシコである。各地域で、マメ科植物が最も豊富に果実をつける時期に、マメ科の豆果やその他の科の種子を採集し、東大の輸入禁止害虫専用の恒温室に持ち込んで羽化を観察した。羽化したマメゾウムシの各種ごとに、寄生植物ごとの単位種子量当たりの羽化数を階級に分け、寄主植物利用から見た構成種のニッチ類似度にもとづく最大節約法によるデンドログラムを作成した。その結果、マメゾウムシと寄主植物の食う-食われるの相関図は、ハワイよりもアリゾナ・メキシコの方で1:多の関係がいっそう頻繁に見られ、食う-食われるの相関図はより複雑なものになった。ハワシでは、まだ寄主植物とマメゾウムシが1:1の関係になっているものがいくらかあるが、アリゾナ/メキシコでは1:多の関係になることから、マメゾウムシの間にニッチの重複が生じ、さらに寄主シフトが頻繁に起こっていることが解明された。 さらに、野生マメゾウムシの寄主種子利用に関する空間分布の行動的側面も解析した。サイカチマメゾウムシは、地上に落下したサイカチの完熟乾燥種子を利用して多化性活性環を実現しているが、種子に潜り込む際に、多くの種子で1粒に1匹が潜り込む行動が見られた。幼虫密度を人為的に高めて複数の幼虫が1粒の種子に潜り込むように設定しても、羽化してくる幼虫は1粒から1匹だけで、その羽化生重は減少せず、種子内部の資源を1匹が独占していることが分かった。このことから、種子寄生性昆虫の資源利用に関する適応戦略を論じた。 分担者の巖佐は、寄主植物と植物性昆虫の食う-食われる関係に見られる共進化を、ゲーム理論の観点から解析した。また協力者の津田みどりと共に、寄主-寄生蜂実験系における局所的収容力の進化と動態の安定性を、進化的に安定なゲーム理論の観点から数理モデルで解析した。その結果、局所的収容力が募占型になるほど動態の安定性が高まることが分かった。 M.P.HassellとH.C.J.Godffrayらは、さらに寄主-寄生者系の動態特性に関するモデル解析も行い、空間構造と時間構造の両効果を評価した。 以上の研究から、寄主-寄生者系のダイナミクスと共進化に及ぼす集団の空間構造の多様な効果が解明できた。今後の課題は、寄主-寄生者系の遺伝的な構造と変化を解明することであろう。
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