研究課題/領域番号 |
07044183
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡辺 公綱 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (00134502)
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研究分担者 |
新田 至 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (30272404)
上田 卓也 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (80184927)
HARRY Noller カリフォルニア大学, RNA分子生物学センター, 教授
KNUD Nierhau マックスープランク分子遺伝学研究所, 教授
NIERHAUS H.Knud Max-Planck Institute
NOLLER F.Harry University of California
NOLLER F.Har カリフォルニア大学, RNA分子生物学センター, 教授
NIERHAUS H.K マックスープランク分子遺伝学研究所, 教授
HIERHAUS Knu マックスプランク分子遺伝学研究所, 教授
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 5,200千円)
1996年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
1995年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
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キーワード | リボソーム / rRNA / リボソームタンパク質 / 三級アミン / タンパク質合成系 / クロラムフェニコール / RIP / 生体外蛋白質合成系 / リボソームサブユニット / リボソーム蛋白質 / リボソームRNA / リボソーム再編成 / ピリジン |
研究概要 |
分子生物学は、核酸塩基間の水素結合による相補性の発見を基礎とした、DNAの二重螺旋構造モデルに提唱により誕生した。このモデルを基礎として、核酸に蓄えられた遺伝情報がタンパク質として発現される構造が解明されたが、1980年代のリボザイムの発見によって、核酸、特にRNAの触媒活性という新たな側面が注目されるようになってきた。このような状況下で、我々は、翻訳因子やエネルギー源を用いなくとも、ピリジン、さらにプリンおよびピリミジン塩基類が、リボソーム上でのタンパク質合成を活性化するという現象を発見したが、この発見は、原始タンパク質合成系のアミノ酸重合反応において、核酸の塩基部分に存在する芳香族性三級アミンが触媒として重要な役割を演じていた可能性を示唆している。 リボソームは数十種類のリボソームタンパク質と数種類のリボソームRNA(rRNA)から構成される大、小サブユニットの会合体である。本協同研究先であるドイツ・マックス・プランク研究所Nierhaus教授は、このリボソームを各構成要素に分子解剖し、必要最小要素のみを用いて再構成する技術に関する世界的権威であり、リボソームの構成要素の一つであるrRNAに作用する抗生物質や、tRNAのリボソームに対する結合様式に関する研究についても先端的な研究を展開している。本研究は我々の芳香族性三級アミンに関する実験技術と、Nierhaus教授のリボソーム分子解剖術を融合することにより、単純化されたリボソーム、特にリボソームRNAを用いて、タンパク質合成系におけるこれら塩基類の触媒メカニズムを詳細に検討し、タンパク質合成系の起源を解明することが目的であった。 平成7年度中に、タンパク質合成系の最適化、およびリボソームの解体条件を確立した。すなわち、最適三級アミン化合物を選定し、反応温度、三級アミン化合物濃度、カチオン濃度を最適化した。特に合成産物であるタンパク質の分子量や、鋳型の翻訳精度を確認した。その結果、合成産物がポリフェニルアラニンの場合で重合度は少なくとも5以上、ポリリジンで40であること、さらにウリジル酸とシチジル酸の交互共重合体を鋳型とした場合の生成産物はセリンとロイシンの交互共重合体で、生成産物の重合度および翻訳精度のいずれも、十分実用に耐え得るものであることを確認した。さらに、リボソーム解体の条件をNierhaus教授の指導の下に確立した。その結果、rRNAの大量調製が可能となった。 またrRNAのみでもタンパク質合成活性が存在することが明らかとなった。タンパク質合成の中心的触媒であるリボソームはリボソームタンパク質とrRNAから構成されていることは既に述べた所であるが、そのいずれにタンパク質合成の活性中心が存在するかは、長い間議論されてきた。ここで得られた知見により、タンパク質合成の活性中心はrRNAに存在していることが証明された。 平成8年度は、試験管内転写により調製されたrRNAを用いて以下の実験を行い、rRNAの活性中心部位を明らかにした。 (1)三級アミンの作用部位に変異を導入したrRNAを作製、またその一部をNierhaus教授より供与していただき、それらの活性を検討した。その結果、rRNAのドメインVに存在する中央ループ近傍がペプチド結合生成活性に直接関与していることが判明した。 (2)rRNAに作用する抗生物質(クロラムフェニコールなど)や毒素(RIP)を用いることにより、活性中心を検討した。その結果、rRNAのドメインVIに存在するαサルシンループが、ペプチジルtRNA移動反応に直接関与していることが判明した。 (3)非酵素的tRNA結合実験によりrRNA上のtRNA結合部位を明らかにすることを目的とし、非酵素的tRNA結合条件を確立した。 以上に述べたように、本協同研究は極めて順調に成果をあげることができた。今後は、断片化されたrRNAを用いることにより、活性発現に必要な最小断片を同定するなど、さらに研究を進めていく予定である。
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