研究課題/領域番号 |
07044185
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
大島 泰郎 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (60167301)
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研究分担者 |
ZAVODSZKY P. ハンガリー科学アカデミー, 酵素研究所, 教授
PETSKO G. Brandeis大学, 生化学科, 教授
山岸 明彦 東京薬科大学, 生命科学部, 助教授 (50158086)
田中 信夫 東京工業大学, 生命理工学部, 教授 (50032024)
ZAVODSZKY Pe ハンガリー科学アカデミー生化学研究所, 教授
PETSKO Grego Brandeis大学, 生化学科, 教授
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
3,800千円 (直接経費: 3,800千円)
1996年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1995年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
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キーワード | イソプロプルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ / 高度好熱菌 / タンパク質の安定化設計 / 結晶構造解析 / キメラ酵素 / 進化分子工学 / イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ / タンパク質安定性 / タンパク質結晶構造 / 好熱性細菌 / 部位特異的変異 / タンパク質構造機能相関 |
研究概要 |
高温下に生育している好熱菌は例外なく熱安定な酵素を生産している。これらの熱安定な酵素は、相当する常温菌の酵素と比べると、分子全体の大きさや構造も似ているし、触媒としての性質も似ているので、構造上の比較的僅かな変化がタンパク質を安定化しているといえる。この安定化の機構はタンパク質の立体構造がいかに維持されているかという目下のタンパク質科学における再重要課題に直結している。本研究計画は、イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼをモデル酵素として用い、好熱菌の酵素がなぜ熱安定であるのかを分子レベルで解明することを目的として日・米・ハンガリー間の国際共同研究を展開した。日本側参加者は遺伝子工学手法、タンパク質工学手法に長じ、変異体作成を分担し、また結晶構造の温度変化を測定する技術をもっている。アメリカ側参加者はX線構造解析に関しては世界的にリ-ドし、ハンガリーの研究室は世界的に珍しい重水素交換の測定技術を持つなど、それぞれの研究室は「特技」を有し、本研究計画はそれを互いに分かち合う形で構成されている。アメリカ、ハンガリーの研究者は日本側研究室に滞在し(うちハンガリーの研究者の滞在は他の研究資金により行われている)、共同実験を行った。日本側研究者はアメリカを訪問し、測定試料の調整を助言するとともに、研究成果について討論した。共同研究の成果の一部が、国際共同論文としてまとめられ間もなく印刷されることに象徴されるように本研究計画は成功裡に進行した。 1 日本側は好熱菌と常温菌の間のキメラ酵素をより熱安定化するための分子設計を行い、いくつかの変異酵素を作成し、共同研究者に配布した。キメラのX-線構造解析に基づいてループ部分に着目し、ループ部分の変異体が熱安定性を向上していることを確認した。また、進化分子工学手法を用いて、耐熱化した変異体を取得した。特に、172位のアラニンをバリンに置換する変異は、好熱菌の野生型酵素に導入すると、好熱菌の生産する酵素をさらに人為的に安定化できることを見出し、変異体の立体構造を決定し、その耐熱化の分子機構を推論した。このほか、110位を含むターン部分のアミノ酸残基の置換も行い、安定化に成功した。 2 低温下にX線構造解析を行い、B因子を測定すると、特定の転移温度が存在することが近年発見されている。転移温度を測定するため、低温度下の結晶構造解析を試みたが、これは相互に連絡・調整を取りつつ日・米の研究室がそれぞれ実施した。低温測定は温度を変えて測定する必要があり、研究は未完である。 3 大腸菌の遺伝子クローニングは日本で行い、発現系を構築した。作成したプラスミドは米・ハンガリーの研究室に配布され、それぞれの研究室で発現、精製が行われた。しかし、酵素精製の技術は日本側研究室が長じているので、アメリカ側の研究者は日本において共同実験を行い、大量精製を行った。日・米・ハンガリーそれぞれの研究室において、独自に大腸菌酵素の安定化変異体の設計と製作を行った。大腸菌酵素の結晶化と構造解析はアメリカにおいて行われた。アメリカ側はサルモネラ菌のイソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼの結晶構造解析も行った。 4 日本側は主に進化分子工学手法を用いて大腸菌酵素の安定化設計を行い、いくつかの安定化変異体を得た。理論設計による米・ハンガリーの結果を総合して安定化機構について討論した。安定性の評価は至差走査型熱量計を用いた変性に伴う熱力学量の測定と、円二色性(CD)を用いた反応速度論的解析を用いて行われた。これらの結果は、サブユニット接触面やループ部分など多くの座位が安定性に関与し、しかも多くの場合、それぞれの変異は加算性が成立した。 5 好熱菌酵素の常温への適応実験を日・米間で情報交換をとりつつ行った。双方が独自の遺伝子操作系を作ったが、日本側は染色体への組み換え系を作成し(米側はプラスミドを改良した)、常温適応した酵素の取得に成功した。すなわち、35-40℃における活性が5-8倍に上昇した「適応酵素」を取得した。適応変異体の構造解析は進行中である。
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